2023年10月1日

【渋谷区立松濤美術館の「杉本博司　本歌取り東下り」】廃墟に見えるのは気のせいか

静岡新聞教育文化部が200字でお届けする「県内アートさんぽ」。今回は、MOA美術館（熱海市）、IZU PHOTO MUSEUM（長泉町、休館）の建築を手がけた現代美術家杉本博司さんの個展。「杉本博司　本歌取り東下り」と題して、東京都渋谷区の松濤美術館で11月5日まで開催。

和歌の伝統的手法「本歌取り」を作品に取り入れる杉本さん。MOA美術館の尾形光琳「紅白梅図屏風」をもとにした「月下紅白梅図」が思い浮かぶ。今回は葛飾北斎「富嶽三十六景」の「凱風快晴」が「本歌」の、六曲一双の新作を展示。和紙にプリントした写真は、特に遠景の輪郭があいまいで、筆で描いた絵と見まごうばかり。画面奥の木々のシルエットが「廃墟」に見えるのは私だけか。杉本さんに目くらましされているのかもしれないが。（は）