2024年6月29日
河治良幸

サッカージャーナリスト河治良幸

J1残留だけでは満足しない。ジュビロ磐田のリーグ後半戦にエネルギーをもたらす男たち


ジュビロ磐田は後半戦の折り返しとなるホームの東京ヴェルディ戦で3−0と快勝し、20試合を終えて勝ち点23とした。この試合で象徴的だったのが、これまでリーグ戦であまり出番のなかった選手や途中出場が多い選手たちの活躍だ。

今シーズンのリーグ戦で初スタメンとなった金子翔太とブルーノ・ジョゼが4−2−3−1の左右サイドハーフで躍動。金子は前半に最初のチャンスで惜しいシュートを放つと、ブルーノ・ジョゼは鋭い仕掛けでペナルティエリア内でのファウルを誘い、PKを獲得。結果的にジャーメイン良のキックは相手GKマテウスに止められてしまったが、前半から攻守両面でチームを活性化したのは彼らだった。

金子翔太(左)とブルーノ・ジョゼ


相手のオウンゴールで奪った後半立ち上がりの先制点はブルーノ・ジョゼの右クロスから。そのプロセスでも金子は大きな役割を果たしていた。

左センターバックの森岡陸から縦パスを受けると、3人の相手ディフェンスを引き付けてボランチのレオ・ゴメスにパス。鈴木海音と上原力也を経由して、右サイドのブルーノ・ジョゼにつながったのだ。

金子は「(ブルーノ・ジョゼと)二人で試合前に今日はやってやろうと話をしていた。ジャメが珍しく(PKを)外してましたけど、僕自身は悲観することなく、全然やれると思ってた」と語った。

磐田の2点目は左CKから。上原力也の正確なキックにFWマテウス・ペイショットが合わせる形で生まれた追加点だが、そのCKを獲得したのはブルーノ・ジョゼだった。

語り継がれるだろう古川のゴール


今シーズン16試合目の途中出場となった古川陽介は約1年ぶりとなる公式戦ゴールを決めた。上原が粘り強くつないだボールを自陣の左サイドで受けると、ヴェルディのディフェンスを翻弄しながら、約60メートルをドリブル。最後はこれまでなかなか決められなかった左斜めの角度から、ゴール右隅に突き刺した。

未来にも語り継がれそうなスーパーゴールを決めた古川は感慨深そうに語った。

「横さんも我慢して使ってくれて。天皇杯もそうでしたけど、結果を出せなくて苦しみましたし、メンバー外になったりして。ここで変わらないと今年終わるなと思ってたので。ブルーノも結果を出しましたし、翔太君も左で出て。自分がスタートで出られない悔しさもありましたし、それをうまくチームに還元できたと思います」

後半スタートの試合で、こうした選手たちが確かな存在感を示したことはチーム内競争を活性化させる意味でも大きい。

ウェベルトンがJデビュー


後半43分から22歳のブラジル人FWウェベルトンが投入されて、短い時間ながら特徴的なプレーを見せたことも大きな一歩だ。

今シーズン加入した4人のブラジル人選手で唯一、リーグ戦の出場が無かったのがウェベルトンだった。横内昭展監督の評価も上がっていた矢先の怪我で、しばらく離脱を強いられていた。

ウェベルトンはペイショットほど上背はないが、ジャンプ力があり、空中戦でも強さを発揮できる。しかも並外れたスピードがあり、4−2−3−1の前めのポジションなら、どこでもこなせる特長は磐田の前線に新たなパワーをもたらしうる。

金子、ブルーノ・ジョゼ、古川、ウェベルトン。攻撃的なポジションの活性化が目を引くが、ディフェンス陣では怪我のリカルド・グラッサに代わって入った森岡陸が、スピードとパワーを兼ね備える相手FWの木村勇大をほぼ完璧に押さえ込むなど、素晴らしい働きで無失点の勝利を呼び込んだ。

リーグ後半戦、前向きな変化の予感

ここから夏の移籍期間に入ってくる中で、アカデミーから昇格3年目のM藤原健介がJ3のギラヴァンツ北九州に育成型期限付き移籍。さらに今シーズン鳴り物入りで加入し、ゴール量産が期待されたMF石田雅俊がほとんど出場チャンスを掴めないまま、韓国1部の大田ハナシチズンに完全移籍で再加入することとなった。

横内監督は石田について「なかなか出るチャンスは少なかったですけど、そこに向けて本当にトライしてくれて。結果を出させてあげられなかったのは申し訳なかった」と語る。

ここから、さらなるアウトがあるのか、あるいはインがあるのかは分からないが、ここまで出番に恵まれなかったり、うまく実力を発揮できなかったりした選手たちが、チームに新たなエネルギーや前向きな変化を加えていく予感が、今の磐田には漂っている。

彼らの活躍が、前半戦で主力を担ってきた選手たちに良い意味での危機感を持たせることで、さらにチームは活性化していくはず。

開幕前から“勝ち点40”を最低ラインの目標に掲げいていた横内監督だが、「我々チャレンジャーではあるが、J1で一つでも上の順位に。下を見るのではなく、常にそういうところを見ながらプレーし続け、戦い続けたい」と、残留だけでは満足しない姿勢を強調する。

前半戦は19試合で勝ち点20。ちょうどシーズン勝ち点40のペースだった。後半戦でどこまで勝ち点を伸ばしていけるか。チームにエネルギーをもたらす選手たちの台頭に期待していきたい。

タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。世界中を飛び回り、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。

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