2024年7月13日
河治良幸

サッカージャーナリスト河治良幸

藤枝MYFC“J1昇格の指標” 杉田真彦主将に聞く天皇杯の鹿島戦で得た自信と課題

鹿島の鈴木優磨(中央)に体を寄せる杉田真彦(左)


藤枝MYFCは天皇杯3回戦で、J1の強豪である鹿島アントラーズと対戦した。降りしきる雨の中でも藤枝はグラウンダーでボールを動かしながら、鹿島陣内に攻め込む時間帯をつくった。前半24分に藤枝の波状攻撃から、前田翔茉のシュートが相手のハンドを誘うと、PKをFWアンデルソンが決めてリードを奪った。

しかし、後半スタートから鈴木優磨、名古新太郎、安西幸輝というリーグ戦の主力を投入してきた鹿島に押し込まれる時間帯が増えた。それでもゴール前で耐え、ボールを奪えば得意のパスワークで前に運ぼうとしたが、25分、ビルドアップのミスを鈴木優磨に奪われ、最後はFWチャヴリッチに見事な胸トラップから左足のシュートを叩き込まれた。

さらに延長戦もよぎり出した後半44分。ミドルレンジで構えていたMF舩橋佑に右足を振り抜かれ、バウンドしながらゴール左に来たボールを仲間隼斗がヒールキック。決勝点を奪われた。

試合終了間際に鹿島に決勝点を奪われ、ひざをつく藤枝の選手


ただ、藤枝にも勝機はあった。鹿島のランコ・ポポヴィッチが「藤枝も非常に良いサッカーをしていた。こういう試合でつないでくる彼らの良さを、逃げずに出すのは難しいことだが、彼らはしっかりと彼らのサッカーをしてきた」と認める奮闘ぶりだった。

それだけにキャプテンのMF杉田真彦は「もったいない。守りに入ったわけじゃないが、2点目が取れなかったところが一番の敗因」と振り返る。

「ゴール前に刺すボールが無かった。ポジションを取れている選手はいる中で、3人目が見えていれば多分、刺すボールも出すと思う。そこの共有が何回かできていないシーンがあった。そういうところの差だと思う」

杉田は中盤の底でボールを動かしながら、自身のプレーを整理できずにいた。「後ろに残って、(マークが)浮く選手をケアすれば失点は防げるが、そこを捨ててでも前でプレーしたかったというのが…。モヤモヤしながらやっていた」

鈴木優磨封じがタスクに

“ハイエナジーフットボール”を掲げる須藤大輔監督としても、鹿島のショートカウンターはかなり警戒していたと見られる。後半は鹿島が鈴木優磨をトップ下のポジションに送り込んできたこともあり、幅広く動いて起点となる相手エースを封じることが、杉田を含む中盤の大きなタスクになった。

「やっぱり、ああいう上手い選手でも、止まって後ろ向きで受けた時はつぶせるが、常に動いて良い位置に顔を出し続けるところはクオリティーの高さを感じた。正直、あそこばっかり気にして奪いに出ていけなかったところが一番悔しかった」

シンプルにサイドからボールを運んでくる鹿島に対し、なかなか高い位置でボールを奪えず、普段のJ2よりも全体的にポジションが低くなる中で、ボールを持った時にどう勇気と自信を持って前に運んでいくのか。そして、難しいピッチコンディションだったとはいえ、最後に決め切る精度と迫力は課題として出た。

「やっぱり自信を持ってつなぐところはJ1相手でもできた。そういう良いところは伸ばしていきたい。試合ごとにメンバーは変わるので、できなかったところはすぐに話して共有しないといけない」

藤枝はJ2の中でも競争が激しい。特に膝の大けがを乗り越えて帰ってきた杉田らがいる中盤はあまりメンバーを固定せずに戦っている。夏場に高いパフォーマンスを続けるための強みになるはずだ。

ただ「誰が出ても同じサッカーを」と言うのは簡単で、実際には状況に応じたイメージの共有という部分で難しさは出てくる。リアクションよりもアクションで相手を崩して、ゴールを奪うスタイルを掲げる藤枝なら、なおさら大事なテーマだ。

「結果にこだわること」

藤枝にとって天皇杯の挑戦は終わってしまったが、J2で昇格プレーオフの権利を得られる6位以内に食い込むための戦いは続く。

藤枝は現在10位で、6位のベガルタ仙台からは勝ち点8差。須藤監督も“J2トップ3”と認める清水エスパルス、横浜FC、V・ファーレン長崎に敗れて一時は大きく後退したが、水戸と群馬に勝利して、再びプレーオフが手に届くところまで上がってきた。そこで迎えた天皇杯で、J1の2位につける鹿島から得たものは少なくないだろう。

キャプテンの杉田はここから上位に食い込むためのポイントを語る。「やっぱり結果にこだわること。内容が良くなれば結果もついてくるのはもちろんだが、もっとチャンスを作らなきゃ、結果が出る回数が少ないから。だから、今日初めて、ちょっと強く言った。もっと出せというところとか、要求もしていきたい」

リーグ戦の次節は、天皇杯でJ1アビスパ福岡を破った愛媛FCをホームに迎える。自分たちが信じる“ハイエナジーフットボール”をやり抜きながら、どんな試合でも勝ち点3を積み上げていくために、厳しさを持って取り組んでいくことが求められる。

タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。世界中を飛び回り、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。

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