2024年10月11日
シズサカ編集部

<静岡高校サッカー>静岡学園の全国制覇を引き寄せたゴラッソから5年…FW加納大(中央大)の“時計の針”が再び動き出した


「僕はああいうゴールを得意としているので、自分の良い形が出たなと思います」

それはもともと持ち合わせている天賦の才と、常に重ね続けてきた努力が過不足なく合致した、その男の「代名詞」のような一撃だった。

関東大学リーグ1部第16節。残留争いに苦しんだ昨シーズンから一転、今季は着々と勝点を積み上げて3位に付けている中央大学は、複数人のJリーグ内定選手を抱える桐蔭横浜大学をホームに迎えていた。

「ピッチコンディションも良くなかったので、結構割り切ってやろうというふうに捉えていました」

中央大の2シャドーの一角に入った加納大は、試合前から降り続く雨の影響で水溜まりも目立ち始めたピッチの状況を見極めながら、アクセルを踏み込むタイミングをうかがっていた。

大学に入学してからは、決して思い描いていたような時間を過ごしてきたわけではない。なかなかコンスタントに出場機会を得られず、3年間でマークしたリーグ戦のゴールは、2部を戦っていた2年時の1点のみ。大学ラストイヤーとなる今年は、並々ならぬ決意を持って臨んでいた。

今シーズンも開幕からベンチスタートが続き、初めてスタメンに指名されたのは第8節だったが、その次の試合で得点を挙げると、以降は定位置をがっちり確保。「今まで苦しんできた分、ピッチでプレーできている喜びをより感じられていますし、もっとピッチで暴れなきゃいけないなと思っているので、さらに結果というところにフォーカスしています」。今はとにかく自身の数字にこだわっている。

加納の「代名詞」

前半16分。バイタルエリアで前を向いた加納は、躊躇なくミドルシュートにトライ。軌道は枠の左側へ外れたものの、ボールフィーリングは上々。チャンスと見るや思い切り良く、果敢にチャレンジする積極性は、高校時代から変わらない。

ここまでリーグ戦で記録したのは4ゴールだが、得点を決めた試合はすべてチームも勝っている。「やっぱり今年は点を獲れていることで自分自身が充実していますし、ゴールへの意識も去年よりさらに高まっているので、それが結果に繋がっているのかなと思います」。4年生としての自覚も、好調を後押ししている。

後半15分。GKの岩瀬陽が大きく蹴ったフィードに、栃木SC内定のFW星野創輝が競り勝つと、加納の目の前にボールが現れた。水浸しのピッチコンディションは頭の中に入っていた。それでも、行く。イメージはできあがっている。打てるところまで運んだら、もうあとは左足を振り抜くだけだった。

「良い形で創輝が逸らしてくれたので、拾ったら前を向いて仕掛けようと思っていました。実際に前を向いた時にはもうゴールのことしか考えていなかったですね」。ペナルティエリアの外から打ち込んだミドルシュートは、雨粒を切り裂いて左隅のゴールネットへ突き刺さった。

静岡学園高時代からの後輩持山(中央左)とゴールを喜ぶ加納


一目散にピッチサイドへ駆け出すと、あっという間にチームメートたちが作った歓喜の輪に飲み込まれた。静岡学園高時代の後輩であり、大学でも同じユニフォームをまとっている持山匡佑は、加納以上に喜んでいた。

「ゴール前でパンチ力を持ってシュートを打てるところは自分の特徴だと思っていますし、監督からも常にゴールを要求されているので、良いゴールでしたね」

結果的にこの1点は、白星を手繰り寄せる決勝ゴールに。加納の「代名詞」とも言うべき、正確に勝負どころを嗅ぎ分けて、的確に仕留めるフィニッシュワークが、チームに大きな勝点3をもたらした。

青森山田戦で見せたゴラッソ

加納が自らの名前を全国に轟かせたのは、静岡学園高2年時の高校選手権決勝。青森山田高校と対峙した埼玉スタジアム2002のピッチで、衝撃的なゴラッソを叩き込んだ。加納の同点ゴールで2点のビハインドを追い付いたチームは、試合終盤に逆転に成功。日本一の立役者となった2年生ストライカーは、一気に注目を浴びる存在へと駆け上がった。

全国高校サッカー選手権決勝で同点ゴールを決める加納=2020年1月、埼玉スタジアム


「良くも悪くもあそこで決めた一発で、その後が大きく変わっているのは事実。自分の実力や持っているものよりも名前が先走ってしまったところもありますし、あの一発が自分の存在をいろいろな人に知ってもらうきっかけにもなりました。メリットもデメリットもどちらもあると思うんですけど、あれによって今の自分があるのは間違いないと思います」

「以前は周りの視線だったり、いろいろなプレッシャーを余計に感じてしまう時もありました。そういう苦しみがあった中で、今はそれとうまく付き合えているというか、良いプレッシャーの中でプレーできているので、自分の中ではすごく良い経験として、自分のパワーにできていますね」

あのファイナルから5年近い時間が経った今だからこそ、その価値をしっかりと捉え、すっきりと消化できている。日本一に貢献する得点を決めたのも自分だし、それを重圧に感じてきたのも自分だけれど、いつだって大事なのは今の自分。もう加納の中に迷いはない。

卒業後の進路は決まっていない。でも、なりたい職業は決まっている。そのためには、とにかくゴールを奪い続けるだけだ。

「まだ進路は決まっていないですけど、目標であるプロに行くためにやれることをすべてやりたいですし、ここからはそのために試合で結果を残し続ける3か月だと思うので、自分がやれることを再確認して、全試合で結果を残し続けられるようにプレーしたいと思います」

少しだけ休んでいた時計の針は、ここに来て力強く動き出した。再び埼玉スタジアム2002のゴールネットを豪快に揺さぶる日を夢見て、加納大の挑戦は、まだまだこれからも続いていく。(サッカーライター・土屋雅史)

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