2026年3月26日

【しずおか地酒研究会の「30周年記念特別セミナー」】静岡の酒の魅力を伝え「酒縁」紡いだ30年。最後のセミナーで黎明期を振り返る
(写真・文=論説委員・橋爪充)
しずおか地酒研究会の30年を振り返る鈴木真弓さん
1996年に始まった「しずおか地酒研究会」が発足30年の節目として「特別セミナー」を開き、会の活動を終えた。「杯が満ちるまで しずおか地酒手習帳」(2015年)、「杯は眠らない」(2023年)などの著書もあるライターの鈴木真弓さんが1996年に「造り手、売り手、飲み手の和」を合言葉に結成。基本的には「大規模な飲み会」でありつつ、静岡の日本酒をさまざまな角度から学ぶ機会を次々提供する、たくさんの「酒縁」を生む場であった。
2008年に静岡にやってきた筆者にはとても信じられないが、1990年代前半といえば、県内で静岡の酒を出す居酒屋は少数派だったという。1986年の全国新酒鑑評会で静岡県の17蔵が入賞し、そのうち10蔵が金賞に輝き、業界を驚かせたにも関わらず、である。
鈴木さんは1985年の磯自慢酒造の取材を契機に静岡の日本酒の魅力に触れ、「現場ではすごくいい酒ができているのに、県民は自分も含めそのことをあまり知らない」という思いを抱いた。それがしずおか地酒研究会をスタートさせた理由だという。
30年の活動を紹介する貴重な写真を多数披露した
鈴木さんは30周年特別セミナーで会の歩みについて話した。その多様かつ貪欲な活動にいまさらながら驚いた。静岡の酒を飲み比べたり、酒蔵を訪ねたりするだけでなく、静岡酵母を開発した静岡県工業試験場(現在の静岡県工業技術研究所沼津工業技術支援センター)の見学ツアーや、「酒米を炊飯して食べる」という実践、蔵元と酒販店のトークバトル企画、酒米の圃場の視察なども行っている。日本酒を、静岡の酒を「知りたい」という鈴木さんのまっすぐな思いが、全ての企画の原動力になっている気がした。
この会の大きな功績と言えば女性の日本酒愛好家を育てたことだろう。1999年に民放アナウンサーを招いて女性の視点で酒の楽しみ方を語るトークイベントを実施。 2003年には稲取温泉でエッセイストの藤田千恵子さんを交えて「観光地で飲む酒の魅力」をテーマにイベントを行った。意識的に酒と女性の接点を多くつくり出していたようだ。
交流会に提供された県内蔵元の銘酒
交流会は約70人が参加。その半分弱が女性ではなかったか。静岡の酒を静岡で老若男女が楽しんでいる。そんな当たり前の風景があるのは、多くの蔵元や流通関係者の努力のたまものであろうが、しずおか地酒研究会の貢献も少なくないはずだ。静岡の酒を文化として捉え、普及・啓発活動を通じて芋づる式にファンを増やした。
筆者にはそれがよく分かる。この会から薫陶を受けた一人だからである。
磯自慢酒造名誉杜氏の多田信男さん(左)と日本酒研究家の松崎晴雄さんのトークセッションも行われた
静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。










