2026年5月26日
河治良幸

サッカージャーナリスト河治良幸

【清水・磐田・藤枝】静岡県勢3クラブがそれぞれの課題を胸にプレーオフラウンドへ挑む

清水が対戦するF・マリノスの強みと隙


静岡県勢3クラブにとって、2026年の百年構想リーグ地域リーグラウンドは、それぞれ異なる立場での現実と課題を浮き彫りにした。県勢唯一のJ1クラブである清水エスパルスはWEST7位。勝点24という数字は決して悪くないが、1つ1つの試合を振り返ると勝ち切れなかった試合の多さが印象に残る。

4勝8分6敗。8つの引き分けのうち、PK戦勝ちとPK戦負けが4ずつという戦績だが得点19、失点21、得失点差マイナス2という数字にも、攻守両面でゴールを決め切れない、守備を締め切れないチーム像が表れていた。最終節のガンバ大阪戦も、その課題は色濃く出た。序盤から押し込みながら、相手ブロックを崩し切れない。キャプテン宇野禅斗の負傷交代というアクシデントはあったにせよ、ゲームの流れを引き寄せることができなかった。

相手のガンバは清水が押し込む時間帯でも、カウンターや背後への配球で鋭さを出し、途中出場の選手が流れを変えた。58分に弓場将輝のゴールで先制しながら、わずか3分後に追いつかれ、最終的には逆転負け。吉田孝行監督は押し込んでいても、何も起きない状態を続ければ厳しいと受け止めており、ゴール前での変化や迫力不足を認めた。

ただし、手応えもある。吉田監督は、どこを修正すれば強くなれるかが見えていると主張しており、実際にボール保持の安定感や意図あるロングボールからのセカンドボール回収の質は一定レベルに達している。問題はその先だ。選手交代を含む試合終盤に強度や対人能力が落ちる点、個の局面で押し返される点は、J1基準での不安要素になり得る。

プレーオフラウンドで対戦する横浜F・マリノスはEAST7位ながら、ハマった時の爆発力はJ1屈指だ。前節の東京ヴェルディ戦では6-0と圧勝。近藤友喜、谷村海那、ユーリ・アラウージョのスピードは警戒する必要がある。

もちろん大島秀夫監督が率いる現在のF・マリノスにも付け入る隙がある。ロングボール主体の色合いが強く、パフォーマンスにバラツキがあることに加えて、守備面では局面対応に優れる反面、組織的に動かされた時にズレが生まれやすい。特に相手の連動した崩しや、サイドチェンジを交えた押し込みに脆さが出やすい。そうした相手側のカオスを呼び起こすだけの構築力は清水も備えている。

清水としては相手陣内への押し込みだけで終わらず、相手の守備をワイドに揺さぶりながら、人とボールを動かしてギャップを作りたい。清水の攻撃がうまく噛み合えば、十分に崩せる期待がある一方で、注意したいことがある。F・マリノスは前線の推進力を武器とするため、清水が不用意にボールを失えば、一気に試合をひっくり返される危険性があるのだ。清水にとっては、保持の質とリスク管理、その両立が問われる。

磐田と藤枝はプレーオフをどう戦うべきか


J2に沈むジュビロ磐田は百年構想リーグの成長を経て、26-27シーズンでのJ1昇格を悲願としている。ただ、攻撃的なスタイルを押し出してきたチームに、守備の安定度を植え付ける難題を課された志垣良前監督は、戦術的な再構築と試合に勝つという二つを両立させることに苦しみ、シーズン半ばで体調不良を理由に降板。リーグ戦7試合を残してコーチだった三浦文丈監督に託された。三浦監督は過去を悔やむより、未来につなげる姿勢を求めてきたが、アウェーいわき戦、ホーム藤枝戦で合計7失点を喫するなど、チームは苦しい状況にあった。

しかし、リーグ戦の最終節となった7連勝中の札幌とのアウェーゲームで、磐田は意地を見せる。立ち上がりは相手の圧力を受けたが、時間の経過とともに守備の切り替えが整理され、カウンターの狙いが明確に。先制点は渡邉りょうがボール回収からグスタボ・シルバへ素早くつなぎ、自ら背後へ入り込んで仕留めた。三浦監督が試合前から狙いとして共有していた形が、そのまま得点につながったのだ。数的優位を得てから追加点を奪い切れず、10人の相手に対して、最後までスリリングな状況が続いたことは反省材料だが、苦しい流れの中でも試合を締め切れたことは大きい。シーズン序盤の磐田なら、終盤に押し込まれて取りこぼしていても不思議ではなかった。

プレーオフラウンドで対戦する栃木シティは個性的なタレント力と組織的な迫力を持つチームだ。秋田戦では0-1で敗れたが、ダヴィド・モーベルグや田中パウロ淳一を軸にサイドから押し上げ、切り替えの速い攻撃を見せていた。ただ、秋田戦ではロングボールから押し返される時間帯も長く、背後対応や試合終盤の守備強度には課題も残った。磐田は秋田と基本的に異なるスタイルを志向するが、ボールを奪った流れで背後のスペースを狙う形は有効だろう。マテウス・ペイショットを攻撃の基準点に、渡邉りょうとグスタボ・シルバの関係性は大きな武器になる。

その磐田と同じJ2・J3百年構想リーグのEAST-Bで戦った藤枝MYFCは槙野智章監督の下、走る、戦うというベースを徹底しながら、ボール保持とインテンシティを両立させるスタイルを作り上げてきた。いわき戦は90分を終えて0-0、PK戦に敗れる結果だったが、内容面では一定の完成度を示した。相手のハイプレスに押し返される時間帯がありながらも、自分たちのテンポを崩さず、後半には押し込む展開を作った。槙野監督自身も前体制が抱えていた課題を整理しながら、独自のメソッドで積み上げてきた成果を実感しているようだ。

進化が求められるハーフシーズン、勝点を積み上げ、5位で終えたが、チームに満足感は漂っていない。そこに槙野監督はチームの成長を感じているという。プレーオフで対戦する相模原は、勢いに乗ると一気に畳み掛ける力を持つ一方、試合の流れを掴めない時間帯に脆さも出る。群馬戦では退場者を出した影響もあったが、後半だけで大量失点を喫した。ロングボール主体の戦い方だけに、藤枝がボール保持を生かし、前線からテンポ良く圧力を掛け続けられれば、主導権を握れる可能性は高い。

清水はJ1基準の完成度をどこまで引き上げられるか。磐田はチームのクオリティを突き詰めながら、札幌戦のような勝負強さをシーズン最後に示せるか。藤枝は積み上げてきたスタイルを最後まで貫けるか。それぞれ立場も課題も異なる静岡県勢の3クラブだが、プレーオフラウンドは、単なる延長戦ではなく、来季へ向けた現在地を示す舞台にもなる。
(文:サッカージャーナリスト河治良幸)

タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。世界中を飛び回り、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。

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