2024年1月15日
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『ゲゲゲの鬼太郎』進化の歴史を紐解く!契機は“第3シリーズ(1985年〜)”のヒットにあった⁉


SBSラジオ「TOROアニメーション総研」のイチオシコーナー、人気アニメ評論家の藤津さんが語る『藤津亮太のアニメラボ』。今回は映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』公開にちなみ、鬼太郎についての歴史についてお話を伺いました。※以下語り、藤津亮太さん

50年以上も続く鬼太郎の歴史

『鬼太郎』の歴史はとても古く、戦前に人気のあった紙芝居に端を発します。戦後、そのキャラクターを水木しげる先生が受け継ぐ形で紙芝居を描き、やがて貸本漫画で描くようになりました。その後1965年に週刊少年マガジンにピックアップされ、短編の読み切りが不定期で掲載されるようになります。

そもそも、なぜ鬼太郎は「ゲゲゲ」なのか。当初は『墓場鬼太郎』というタイトルだったのですが、本格的に連載開始後の1967年11月には「ゲゲゲ」とタイトルが改題され、翌1968年からアニメの第1シリーズも『ゲゲゲの鬼太郎』としてスタートしました。

実は1967年7月に『少年マガジン・マンガ大行進』というマガジンで、「連載中の人気漫画のイメージソングを作ろう」という企画アルバムが出ています。ここに第1期・2期でオープニングテーマ曲だった熊倉一雄さんの「ゲゲゲの鬼太郎」が初登場します。

アニメの主題歌として作られたのではなく、鬼太郎のイメージソングとして作られたもので、そこに「ゲゲゲ」というあのフレーズが出てくるわけです。

元々は水木しげる先生が小さいころ「しげる」とちゃんと言えなくて「げげる」と言っていたのが「ゲゲゲ」のルーツらしいです。漫画では、鬼太郎が事件を解決して去っていくときに、必ずカエルや虫が「ゲゲゲ」と鳴いて見送るんですよね。その辺りで曲名が『ゲゲゲの鬼太郎』というタイトルになったのだと思います。

世相を反映しているアニメの変遷

漫画のタイトル『墓場鬼太郎』では、アニメ化されるときに「墓場」というワードがおどろおどろしすぎると指摘された経緯があります。第1シリーズ第1話は、妖怪たちが集まって野球をする「おばけナイター」という回なのですが、おどろおどろしい怪奇ものではないよという感じで、スポンサー対策も含め、みんながとっつきやすいような形でスタートしています。

1972年から放送された第2シリーズは、第1シリーズの続編という体裁です。前シリーズは白黒でしたが、ここからカラーになります。ここでは、“郊外”や“交通戦争”など、その時代の社会のいろいろな不安要素が反映されていました。

1985年からの第3シリーズは、完全なリメイクという体裁で、前の2シリーズとは全く異なる新しい世界観でスタートしています。人間の友達のユメコちゃんが登場したり、武器になるオカリナを使うことなどが第3シリーズの特徴です。

それまで鬼太郎には手持ち武器はなかったのですが、玩具展開できるアイテムがあったほうがいいというスポンサー的判断もあって、オカリナが登場しました。オカリナの元ネタは同じ水木しげる原作の『悪魔くん』ですね。

第3シリーズは、明るく、アクションアニメの度合いが高いシリーズで、これがヒットしました。ここでヒットしなければ『鬼太郎』のシリーズはこんなに続かなかったと思います。世界観が変わったことに併せ、鬼太郎役は野沢雅子さんから戸田恵子さんに代わっています。

1996年の第4シリーズは、また新しい世界観になり、鬼太郎役は松岡洋子さんに代わりました。怪奇色が強めの作風に戻り、トーンも暗め。色味も抑えた渋い作りでした。

2007年の第5シリーズでは、鬼太郎役は高山みなみさんになり、また、すごく明るい印象になりました。ここでは妖怪と人間の共存みたいなものがテーマ。妖怪横丁で妖怪たちが暮らしていて、ろくろ首の女の子がファストフード店でアルバイトしていたり。また、猫娘がヒロイン格の扱いになりとても可愛くなりました。

2018年には第6シリーズが始まりますが、これはアニメ化50周年企画作品です。鬼太郎役は沢城みゆきさん。沢城さんは、野沢さんのようなアクションをするような鬼太郎はおそらく自分にはできないと思うけれど、第6シリーズの抑えた鬼太郎はできるかなというお話をインタビューでされていました。

第6シリーズは、またちょっと怪奇モノの色合いが強くて、特に世相を反映したエピソードが結構多めなのが特徴です。鬼太郎も時代によっていろいろ変わってきているのです。

SBSラジオTOROアニメーション総研(毎週月曜日19:00~20:30 生放送・毎週日曜日15:00~16:30 再放送)全国のアニメ好きが集まるラジオの社交場。ニッポンのアニメ文化・経済をキュレーションするラジオ番組。番組公式X(旧Twitter) もぜひチェックを!

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