2025年4月2日
トロライターズ

<春季高校野球静岡県大会予選>御殿場西が20人の総力戦で県切符。大事な一戦に全員を送り出した監督の狙いとは…

2桁番号の選手たちの生還を喜ぶ御殿場西ベンチ


春季高校野球静岡県大会予選が佳境を迎え、続々と県大会出場校が決まっている。3月30日、裾野球場では御殿場西が吉原との打撃戦を13−6、8回コールドで制し出場権を獲得した。

最終的に点差が開き、コールド勝利となったものの流れを手放した場面もあった。三回までに7−0とリードを広げた御殿場西は四回以降、大胆に選手を入れ替えると流れが一変。五回裏に守備が乱れ、救援投手が崩れて一気に5失点。

六回以降はエースが登板して逃げ切る展開となった。それでも御殿場西の竹内健人監督(32)は試合後に「想定通り」と、県切符をかけた大事な試合でベンチ入り20人を使い切った意図を明かした。

<春季静岡県大会予選・代表決定戦>
御殿場西 412 031 11 =13
吉原   000 150 00 =6

快勝ムードが一転、劣勢に

先発した池田悠人投手


「試合前からベンチ入りしている20人全員を使うと(選手に)話していました。序盤に大差を付けて、控え選手を使う。それで逆転されるようならスタメンしか育っていないということになる」

竹内監督は決して相手を軽んじているわけではない。「選手はすごい必死でしたよ。一桁番号の選手だけでいけば、楽かも知れない。でもそれじゃ控え組が練習している意味がないし、次の代につながらない。後から出てきた選手は5点取られた分、死ぬ気で1点を取りにいっていたと思う」

公式戦で得る学び

必死で1点を取りにいく御殿場西の選手


選手も監督の狙いを理解している。名波瑛太主将は「いつも控え選手を試合に出させるために(スタメンが)1点ずつ積み重ねて大量リードにすることを意識している」と言う。

四回以降、遊撃の名波主将と土屋綸中堅手を残して選手は総入れ替えとなったため、守備の連係ミスも出て9点リードから一時4点差に詰め寄られた。竹内監督は「普段、(公式戦の)緊張感の中でレギュラー組ができて当然とされていることを自分たち(控え選手)ができないということを痛感したと思う。経験がなければレギュラーとの差、足りない部分を感じることができない」と、公式戦を通じて得る学びを重視する。

流れを引き戻したのはエース

流れを変える投球を見せたエース杉本迅投手


五回の5失点で相手に傾いた流れを、引き戻したのはエース杉本迅投手だ。竹内監督から「流れを変えるピッチングをしてこい」と六回に送り出された杉本投手は「自分も行きたい気持ちがあったし準備もしていた。真っすぐで押すピッチングをしようと思いました」と3回を無安打無失点で締め、背番号1の実力を証明した。竹内監督も「あの雰囲気の中で投げづらかったと思う。エースになったなと思いました」と納得の出来だった。

夏の静岡大会まであと3カ月。春の公式戦で得た貴重な学びを生かし、二桁番号の選手たちがスタメン取りへ猛チャージをかける。

(編集局ニュースセンター・結城啓子)

【取材こぼれ話】
2007年に常葉菊川(現常葉大菊川)を選抜初優勝に導き、昨年1月に急逝した御殿場西・森下知幸前監督の常葉菊川時代の教え子である竹内監督は、恩師の下で7年間コーチを務め、森下イズムを引き継ぎました。この日の代表決定戦では選手の総入れ替えで多くのミスが出ましたが「我慢して使い続けること。裏切られても期待し続ける。それが森下先生に教わってきたこと」と話します。

森下前監督が菊川時代に旋風を起こした「犠打なし、フルスイング野球」も継承。犠打をしない分、走塁を徹底的に鍛えていて、この日も計11盗塁を決めました。森下前監督の“最後の教え子”でもある新3年の名波主将は「バントをすれば点を取れる場面もあるし、バントせずに負けた試合もある」と言いますが、「 フルスイング野球をやるために走塁を意識している。シングルヒットでも二つ狙って、外野手がエラーしたタイミングを逃さない」と納得して実行しています。

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