
「この瞬間しかない」海に落ちた16歳サーカス団員の命救ったのは…港で働く3人のとっさの判断=静岡市清水区

外国語での叫び声、海に溺れている少年、走ってくる警察官、海に落ちた16歳の少年の命を救ったのは、清水港で働くクルーズ職員ら3人の冷静な判断と普段からの研修でした。3人には6月26日、警察から感謝状が贈られました。
清水警察署から感謝状が贈られたのは富士山清水港クルーズ職員の友清航さん(30)、甲斐彩翔さん(22)、公益社団法人清水清港会の近藤竜太郎さん(59)です。
3人は5月19日午後1時頃、静岡市清水区港町で海に転落した16歳の外国籍の少年が溺れているのを発見し、海に飛び込むなどして救助しました。
<甲斐彩翔さん>
「溺れている人の仲間数人が叫んでいる声が聞こえた」
第一発見者の甲斐さんは屋外での作業中、外国語での叫び声を耳にしました。
振り返ると、海に溺れている少年、近くの交番から走ってくる警察官。ただごとではないと感じたといいます。
<甲斐彩翔さん>
「周りに人がいなくて、自分が飛び込んで、自分も溺れて2次災害につながりかねない」
冷静な判断で、その場では飛び込まず、人が集まるために声掛けを行いました。
その声を聞きつけ、駆け付けたのが、友清さんと近藤さん。
<近藤竜太郎さん>
「泡を吹きながら水面に浮き上がってくるのが見えた」
少年を助けるため、近藤さんは仕事で使う4mほどのタモを海中に差し伸べました。
一瞬、少年がタモをつかんだ感覚があったといいますが、力が抜けてきたかと思った瞬間、隣から飛び込んだのが友清さんでした。
<友清航さん>
「うつぶせで浮いている状態で、意識なくが危ない。行くしかないと感じた。あと10秒20秒の世界で、今この瞬間しかないと思った」
一心不乱に飛び込み、少年を仰向けにすると、水を吐き出し呼吸を始めたといいます。
<友清航さん>
「お腹の上に少年を寝そべらせ、自分もおへそをなるべく水面に浮かせる感覚で救助した。会社で普段から、人命救助の研修をしていたのが生きた」
しかし、身長が175cmほどあり、体格の良いサーカス団の少年。
このままでは、自分も溺れてしまうかもしれないと助けを呼び、飛び込んできたのが甲斐さんと近藤さんでした。
3人で支えながら移動し、近くにいた小船の船員に協力を仰ぎ、船に引き上げたといいます。
服を脱がせて、毛布を掛けて、横にさせて、救急車を待ちました。
<友清航さん>
「自分も生きててよかった」
回復した少年との写真を見せながら、友清さんは言いました。
自分の命の危険も伴う人命救助、甲斐さんも危険性を語ります。
<甲斐彩翔さん>
「溺れた人は助かっても、助けようとした人が助からないケースが水難事故では多い。助ける側もむやみに飛び込むのではなく、自分の安全も確保しながら助けるのは大事」
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