2025年8月1日
河治良幸

サッカージャーナリスト河治良幸

新戦力の活躍が鍵。ジュビロ磐田はブラウブリッツ秋田に勝利し、J1昇格圏内に浮上できるか


【サッカージャーナリスト・河治良幸】
J2は8月2日に9試合、3日にロアッソ熊本と首位の水戸ホーリーホックによる1試合が行われる。台風の接近が心配ではあるが、この週末はJ1もJ3も試合がなく、普段はなかなか観られないJリーグのファンもJ2に注目するはず。シーズンも残り15試合ということで、昇格争いも白熱してきている。

7位のジュビロ磐田はヤマハスタジアムにブラウブリッツ秋田を迎える。秋田は現在15位だが、前回のアウエーで敗れた相手であり、順位に関係なく難しい戦いになることは間違いない。

しかも、ホームで北海道コンサドーレ札幌に5-1と勝利した試合から3週間ぶり、約1週間のオフやファン感謝イベント(ジュビロデー)を挟み、イレギュラーな形での公式戦となるため、ゲーム感覚やゲーム体力の面でもアジャストが問われてくる。

ジョン・ハッチンソン監督は「(秋田は)自分たちの得意な部分をしっかりと理解してやってくる。フィジカル的なこともそうだし、セカンドボールの回収もそう。我々の狙いとしては彼らの得意なところをいかに削れるかだと思っています。それができれば、相手のやりたいことを90パーセント削れる」と語る。

磐田としてはホームの利も得て、空中戦やセカンドボールの奪い合いで劣勢にならないようにしながら、攻撃では自分たちの“アタッキングフットボール”を押し出して、相手にフィジカル的な強さを発揮させない戦いに持っていきたい。

DFファンデンベルフの縦パスに注目

左足のパスが異彩を放つファンデンベルフ


鍵を握るのが新戦力の選手たち。6月に獲得した左利きのDFヤン・ファンデンベルフとタイ代表FWポラメート・アーウィライ、さらに7月に加入したボランチの井上潮音とブラジル人ドリブラーのグスタボ・シルバは夏場から終盤戦にかけて、磐田のチーム内競争を活性化させるとともに、チームの新たな強みになりうる4人だ。

特に秋田戦はリカルド・グラッサが出場停止ということもあり、ファンデンベルフが怪我から復帰した江﨑巧朗とのコンビで、本来の左センターバックに回る可能性が高い。ファンデンベルフは「センターバックは今、すごく競争が激しい。エビ(上夷克典)もいるし、リク(森岡陸)もいるし、タクロウ(江﨑)も。自分も含めて誰が出るか分からない」と前置きしながら、左側で出ることができれば「自分の持ち味はもっと生きるんじゃないかと思います」と認める。

ファンデンベルフは空中戦の強さなど、守備面の働きも目立つが、何と言っても左足で中央に差し込む縦パスが異彩を放っており、札幌戦も中央攻撃が相手の脅威になるだけでなく、右のジョルディ・クルークス、左の倍井謙が仕掛けるサイドアタックの効果も高めていた。

ファンデンベルフは「両翼のケンもジョルディも、うちのチームの中ではベストの選手たち。だからこそ真ん中に刺して、相手を寄せてから外に使うことで、より時間とスペースを彼らに与えることができる。そうなったら彼らを止められる選手はいない」と語る。

MF井上、指揮官のスタイル体現


札幌戦の終盤に磐田デビューした井上は横浜FCでコーチだったハッチンソン監督に指導を受けており、恩師が磐田に植え付けているスタイルに魅力を感じていることを磐田に来た理由にも挙げているほど。

ハッチンソン監督は「(金子)大毅も(上原)力也もタダでポジションを明け渡すわけではない」と語るが、J1昇格に向けて、頼もしい存在が加わったことは間違いない。井上は昨シーズン、J2だった横浜FCで秋田と対戦しており、ホームとアウエーの2試合ともスタメンで“シーズンダブル”に貢献している。「僕たちと真逆とまでは行かないですけど、そういうチームには個人的に負けたくない」と意気込む。

MFグスタボ「自分のドリブルを見て」


ブラジルの名門コリンチャンスやヴィトーリアで活躍した実績を持つグスタボ・シルバは秋田戦で出場すれば、Jリーグのデビュー戦になるが、攻撃のクオリティをもたらしてくれるはず。「自分の武器はドリブルで、1対1の仕掛けが強みなので、そこを見てもらいたいです。ただ、それだけじゃなくて、スペースに走ることをすごい求められているのは感じている。そういうのを出して、どんな形でもハードワークして、チームの力になりたい」。すでに仲間から”グスタ”の愛称で呼ばれるアタッカーがどういう形で起用されるのかは秋田戦の注目ポイントだ。

タイ代表FWポラメートのポテンシャル

“フロン”ことポラメートもアウエーの熊本戦でベンチ入りしたが、まだ公式戦のピッチには立っていない。ハッチンソン監督のスタイルに適応している過程にあるが、ポテンシャルに疑いの余地はなく、秋田戦も勝負どころで投入される可能性は十分にある。

高さのあるマテウス・ペイショット、攻守に精力的な渡邉りょう、トップ下を兼任する佐藤凌我とも違った特長を持つストライカーだけに、うまくフィットできれば強力な武器になりうる。7月29日の練習にはタイ代表の石井正忠監督も視察に来ただけに、良い刺激になっているはずだ。

水戸との直接対決に向け弾みを

2位のジェフ千葉から8位のV・ファーレン長崎まで勝ち点3差という大混戦で、週末の結果によっては磐田が一気に2位まで上がる可能性もあるが、自分たちがしっかりと目の前の秋田を倒して、結果としてライバルがどうなっているか。J2優勝に向けては首位の水戸と勝ち点10差という厳しい状況ではあるが、秋田戦、次節のいわきFC戦と勝ち点3を積み重ねながら、8月16日の水戸との直接対決に良い流れを持っていきたい。

タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。世界中を飛び回り、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。

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