2025年9月8日
河治良幸

サッカージャーナリスト河治良幸

混戦のJ2はラスト10へ。ジュビロ磐田の昇格シナリオを読み解く


【サッカージャーナリスト・河治良幸】
2025年シーズンのJ2はここまで28節まで消化して、首位の水戸ホーリーホックが勝ち点53。ジュビロ磐田は勝ち点45で7位となっている。残り10試合で勝ち点8差という数字は決して逆転不可能ではないが、ネックなのは2位のジェフ千葉と3位のV・ファーレン長崎が勝ち点51を稼いでいることだ。

仮に首位の水戸が、現在の勝ち点ペースでシーズンを終えた場合、勝ち点は72となる。昨年J2優勝で昇格を果たした清水エスパルスが勝ち点82、2位の横浜FCが76だったことを考えれば、ハードルはかなり下がっている。それでも磐田が72まで届くには9勝1敗という成績が必要で、現実的にはかなり厳しい。

千葉と長崎のペースを基準にしても69で、それでも8勝か7勝3分という結果が必要になる。もちろん、現在のトップ3が全てペースダウンするケースもありうるが、自分たちでどうにかできることではないので、目の前の試合で勝ち点を積み上げながら、上位にプレッシャーをかけていくしかないだろう。ただし、4位の徳島ヴォルティスは勝ち点48、5位のRB大宮アルディージャと6位のベガルタ仙台が勝ち点47であり、1試合の結果でも変わりうる。大宮と徳島に関しては、ホームでの直接対決も残しているのは希望だ。

最終的に勝ち点が並んだ場合は得失点差も大事になるが、ここから1つ1つの勝ち点を積み上げながら、昇格圏との差を詰めていくしかない。前節はアウェイで大分トリニータと0-0の引き分けに終わり、勝ち点1しかプラスできなかった。しかし、ホームで2-0と勝利したカターレ富山戦に続くクリーンシート(無失点試合)であり、J1のファジアーノ岡山から期限付き移籍で加入したブラウンノア賢信が磐田デビューするなど、ポジティブな要素もある。

ここから5試合はホーム3試合と近隣のアウエー2試合という日程になっており、磐田としては勝ち点を伸ばすチャンスだ。まずは代表ウィーク明けの9月13日に、現在8位のFC今治をヤマハスタジアムに迎える。前回のアウエーでは角昂志郎の鮮やかなミドルシュートなど、前半で2-0とリードしながら、後半は撃ち合いになり、3-3の引き分けとなった。ここまで12得点のマルクス・ヴィニシウスと前回の対戦で2得点したU-20日本代表FW横山夢樹の2トップはJ2屈指の破壊力がある。そこを抑えながら、立川小太郎を守護神とする今治ゴールをこじ開けていきたい。

そこから14位の藤枝MYFCとの「蒼藤決戦」がある。磐田との勝ち点差は13あるが、鹿児島キャンプのプレシーズンマッチや8月の練習試合などでも対戦しており、同じく攻撃的なスタイルということで、ジョン・ハッチンソン監督もハードな戦いになることは百も承知だろう。夏の移籍で矢村健が藤枝に帰ってきたことは、磐田にとっても厄介だ。ただ、遠方のアウェイより移動の負担や環境の不利は少ない。前回は後半アディショナルタイムのマテウス・ペイショットによるPKで1-0と勝利した相手に、しっかりと勝利を飾って勢いを増したい。

大宮との“6ポインター”

そして9月末には大宮との“6ポインター”が待っている。磐田のOBでもある長澤徹監督が率いる大宮は攻守のバランスが取れたチームで、タレント力もJ2トップレベルだ。しかし、これまで喫した7敗のうち、アウエーで5敗しており、上位陣の中ではややアウエーでの勝率が悪い。

前回の対戦は2-2の引き分けだったが、ヤマハではしっかり勝利して、勝ち点3をもぎ取りたい。元磐田のFW杉本健勇と前回ゴールを記録したファビアン・ゴンザレスも危険だが、左サイドから鋭いドリブルを仕掛ける泉柊椰をいかに封じるかが鍵を握る。一方で若きディフェンスリーダーの市原吏音が、キャプテンを務めるU-20W杯に招集される可能性が高く、その影響がどう出るかも気になるところだ。

大宮戦の後は11位のヴァンフォーレ甲府とアウェイで戦い、ホームに4位の徳島ヴォルティスを迎える。ここまで徳島はリーグ最少の15失点という堅守を強みにしているが、8得点3アシストと後壁を引っ張ってきたFWルーカス・バルセロスが右ハムストリングの負傷で約2ヶ月の離脱が明らかになっており、10月18日の磐田戦までに復帰は難しいと見られる。

ここまでの5試合で、どこまで勝ち点を積み上げられるかで、残り5試合の展望も変わってくるが、まずはホームで今治から勝ち点3を獲得して、上位進出の足がかりを掴みたい。新加入のブラウンノアが磐田の攻撃にどう組み込まれていくかは終盤戦の大きな鍵を握るが、タイ代表に招集された“フロン”ことポラメート・アーウィライも練習試合で好調ぶりをアピールしており、本格的な戦力化も秒読み。J1の横浜F・マリノスに移籍したジョルディ・クルークスに代わり、右サイドから流動的な攻撃を繰り出す角、左サイドの倍井謙などのさらなる奮起も鍵を握りそうだ。

<河治良幸>
タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。 サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。著書は「ジャイアントキリングはキセキじゃない」(東邦出版)「勝負のスイッチ」(白夜書房)「解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る」(内外出版社)など。

タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。世界中を飛び回り、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。

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