2025年10月23日
河治良幸

サッカージャーナリスト河治良幸

J2最終盤へ。苦境のジュビロ磐田を逆転昇格に導くヒーローは誰か

<サッカージャーナリスト・河治良幸>
J2リーグも最終盤となるが、ホームで徳島ヴォルティスに0-4と大敗したジュビロ磐田は自動昇格が絶望的になり、昇格プレーオフ入りにも黄色信号が点っている。

ジョン・ハッチンソン前監督から指揮権を引き継いだ安間貴義監督は”昇格”という目標から逃げずに、追い求めていくことを強調している。ただ、5位のRB大宮アルディージャ、6位のサガン鳥栖から勝ち点5差を付けられた磐田が、残された5試合でプレーオフ圏内に滑り込むにはヒーローの救世主的な活躍が必要になる。そうした存在になりうる5人のキーマンを筆者の視点で選んだ。

川合徳孟

18歳ながら、すでにチームの攻撃陣の中心になりつつある。U23アジア杯予選クウェート戦ではハットトリックを記録し、国際舞台でもその得点能力を証明。安間監督の初陣となったアウェー甲府戦では、セットプレーの流れから見事なスーパーゴールを決め、チームを勝利に導いた。

そうした試合を決める個人能力もさることながら、ライン間の動きや狭い局面でもボールをしっかりと収めて、効果的なパスで攻撃を前進させる、”潤滑油”の役割も重要になる。デビュー当初からピッチに入れば年齢は関係ないと主張しており、必要なら周りにも強く要求してきたというが、この危機的な状況で、さらにチームを引っ張るようなプレーを期待したい。

石塚蓮歩

まだ高校生ながら、前倒してプロ契約を果たした長身のアタッカー。ルヴァン杯のFC大阪戦でトップチームデビューを飾り、ハッチンソン前監督からも高い評価を受けていたが、恩師である安間監督のとともに、正式にトップチームに引き上げられた。ユース代表の思いもあるだけに、責任感も強い。

俊敏なドリブル、正確なパス、そして積極的にゴールを狙う姿勢での守備をかき乱す。昇格プレーオフを含む残り試合で、石塚の打開力とフィニッシュはチームに新たなパワーを与えうる。ユースの先輩である後藤啓介にならい、目標をはっきりと口にするのが、石塚のモットーだ。磐田で活躍して、日の丸を付けることを目標に掲げている。

 川﨑一輝

ボールを持っても持たなくても発揮できる、縦のスピードが持ち味。攻撃的なサイドバックとしても、サイドアタッカーとしても多方面に躍動できるので、対戦相手のスカウティングに抱えいにくい選手でもある。シンプルなアスリート能力も磐田の中では突出しており、守備で運動量が求めらてる安間監督のスタイルにあっても、攻撃にパワーを残せるのは大きな強みになる。

0-4で敗れた徳島戦でも後半から存在感を示し、一番可能性のある仕掛けを繰り出していた。セットプレーではキッカーとしても、ターゲットマンとしても役割を果たせるだけに、彼がピッチに入っている時はオプションが広がるのは確かなメリットだ。前線で高さを出せるマテウス・ペイショットやダイナミックなフィニッシュが得意なブラウンノア賢信とセットで起用するのが効果的だろう。

ブラウンノア賢信

夏にJ1のファジアーノ岡山から加入したが、前監督のもとでなかなか出番を得られなかった。しかし、磐田にも馴染んできた現在、安間監督から確かな評価と信頼を得て、出場チャンスを増やしている。徳島戦は0-4となった後半から最前線で相手センターバックに競り勝つなど、可能性のあるプレーを見せていた。

しかし、本人は結果が出なかったことを悔やんでいる。その思いは、ここからの試合にぶつけていくしかない。ただ、明るいキャラクターはこういう苦しい時期だからこそ、チームに影響を与えることは間違いない。周囲との連携についても、積極的にコミュニケーションを取ってイメージアップしているという。その前提で、タイミングや精度を合わせていけるか。彼の得点力に大きな期待がかかる

倍井謙

ここまで6ゴール3アシストを記録する倍井。ハッチンソン前監督は左サイドの絶対的なレギュラーとして信頼していたが、安間監督は倍井の特長が、相手のディフェンスによく知られていることを指摘。目先をかえる意図も含めて、甲府戦は後半から、徳島戦は通常と異なる右サイドで起用した。その徳島戦はゴールもアシストも記録できなかったが、倍井は慣れないポジションでの挑戦もポジティブに取り組みながら、左に戻った時の攻撃イメージもアップデートしているという。

また、試合に負けると人一倍、悔しさを表すタイプではあるが、0-4で徳島戦の後に語った言葉にはここからの戦いに向けて、並々ならぬ決意が感じ取れた。ここまで来ると、やはり倍井とともに、前半戦の攻撃を引っ張ってきたジョルディ・クルークスの移籍が痛かったことは間違いないが、その存在の大きさを誰よりも知る倍井が、残りの5試合、さらに昇格プレーオフで真のヒーローになれるか。それこそが、彼が目指す場所への大きな前進につながるはずだ。

タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。世界中を飛び回り、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。

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