2026年5月14日
河治良幸

サッカージャーナリスト河治良幸

ジュビロ磐田、三浦新体制の5連戦を分析。25人起用で図ったチーム再建と、最終盤へ残る課題

志垣良前監督の契約解除を受け、コーチから昇格する形でジュビロ磐田の指揮を執った三浦文丈監督。百年構想リーグでクラブが掲げるテーマは「結果と成長」だった。昇格を目指す26-27シーズンに流れを繋げるために、藤田俊哉SDは残る7試合で「5勝(90分勝利)」という明確なノルマを提示したが、そこにどういった成長が付いてくるかも大事になる。

三浦監督が就任して早々に挑んだ、GWを挟む5連戦の結果だけを見れば3勝2敗。90分勝利は岐阜戦と甲府戦の2試合で、松本戦はPK戦勝利。いわき戦はPK戦負け、そして福島戦では4失点を喫して、三浦体制で初めての90分負けとなった。勝ち点9は最低限の数字と言える一方で、内容面では昇格候補としての完成度はまだ遠いことも浮き彫りになった。

ただ、この5連戦で最も大きかったのは、徹底したターンオーバーによって25人を起用したことだろう。岐阜戦から中2日で臨んだ松本戦では先発11人を総入れ替え。甲府戦から福島戦でも9人を変更した。三浦監督は目先の結果だけではなく、来季以降を見据えながらチーム全体の底上げを図っていた。

就任初戦となった岐阜戦では、まず守備の整理から着手した。「守備のところはしっかりと[5−4−1]で粘り強くやって、侵入させない」と語ったように、急造チームの中で優先したのは、失点しない土台作りだった。攻撃面では「取ったら鋭いカウンター」を徹底。実際、狙い通りの形から先制点が生まれ、1−0で勝利した。三浦監督自身も「前半のうちにああいう形で点を取れたことがいろいろな意味で自分たちにすごく有利に働いた」と振り返ったが、この試合では“整理された守備”と“鋭いカウンター”という新体制のベースが見えた。

一方で、続く松本戦では課題も露呈した。アルウィンの圧力の中で押し込まれ、「セットプレーやロングスローで流れを持っていかれた」と振り返ったように、相手の強度に苦しんだ。特に問題となったのがビルドアップだ。三浦監督は「出口のところは2パターンくらい提示しています」と明かしたが、プレス回避の精度はまだ低く、「もっともっとスピーディーに、もっともっと精度を上げてやっていかなければいけない」と認めた。PK戦で勝利したことで最低限の結果は得たが、内容面では押し返す力が不足していた。

いわき戦では、その“改善途中”の姿がより色濃く出た。前半はサイドチェンジを使いながら前進し、「剥がすという意味では良かった」と一定の手応えを得た。しかし後半は相手の圧力を受け続け、ロングスローとクロス対応に苦しんだ。三浦監督は「押し込まれた時にどうやって押し返していくかはこれからやっていかなければいけない」と語ったが、この言葉には現在地がよく表れている。相手の勢いを受け止めることはできても、主導権を奪い返す段階には至っていない。守備の整理は進みつつある一方、ゲームをコントロールする力にはまだ課題が残った。

その中で、最も“勝負師”としての采配がハマったのが甲府戦だった。ペイショット、グスタボ・シルバを途中投入し、流れを一変。「ペイショットを起点にするというところがハッキリとした分、みんなのベクトルが揃った」と振り返ったように、シンプルな狙いをチーム全体で共有できたことで逆転勝利につなげた。

三浦監督は、相手が疲れた時間帯を見越して高さと推進力をぶつけるプランを準備しており、「結果的に本当に狙いどおりの選手が活躍してくれた」と語った。この試合は、相手分析とゲームプランが噛み合った好例だったと言える。しかし5連戦の最後、福島戦では再び課題が噴出した。前半は高い位置で奪う場面も作れたが、「そこのクオリティーが足りずに失点」と、攻守両面の精度不足を痛感する内容になった。

特に象徴的だったのは、三浦監督が繰り返し口にした「緩さ」という言葉だ。「フワッと入って、やられてしまう経験がみんなの中にある」と警戒を促しながらも、後半立ち上がりに失点。そこから試合は一気に崩れた。さらに監督は、「オーガナイズが奪うのではなく、最後に奪うのは人」と語っている。配置や設計だけでは勝てない。最後は球際で勝ち切れるかどうか。その強度をチーム全体に浸透させる必要性を強く感じているのだろう。

この5連戦を通して見えたのは、三浦監督が“整理”と“設計”によってチームを立て直そうとしている姿だった。守備の基準、ビルドアップの出口、相手に応じたゲームプラン。短期間の中で、その輪郭は少しずつ見え始めている。一方で、課題も明確だ。プレス回避の精度、押し込まれた際の押し返し方、ボールを奪い切る強度、そして試合の流れが悪くなった時に崩れないメンタリティー。福島戦の4失点は、その未成熟さを突きつける結果だった。

それでも、25人を起用しながら一定の勝ち点を積み、選手層を広げた意義は小さくない。この5連戦は明確に成功とも失敗とも言えないが、リーグ戦の残り2試合と順位決定戦のプレーオフでどういったものを形に残すのか。この百年構想リーグを良い感触で締めくくる意味でも、週末のホーム藤枝戦と最終節のアウェー札幌戦を「結果と成長」を実りあるものにしたい。
(文:サッカージャーナリスト河治良幸)

タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。世界中を飛び回り、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。

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