2025年9月16日

<秋季高校野球静岡県大会>聖隷クリストファー・エース高部陸 秋の初戦、12奪三振で完封勝利 捕手交代、試合中断にも崩れず 2時間55分、129球投げきった

日大三島
000 000 000=0
010 010 00x=2
聖隷クリストファー
2度の中断、炎天下の3時間ゲーム
スコアだけではこの試合の難しさ、高部投手の凄みが十分に伝わらないかも知れない。試合時間は2時間55分。暑さ、湿度ともに真夏並みで、熱中症による体調不良者が出た。日大三島にも五回表を終えた時点で選手の離脱があった。両選手の治療を受け、試合は2度の長い中断を挟む難しい展開となった。高部投手としては多めの4四死球を与えたが、最後まで崩れることはなかった。

序盤の力み、中盤に修正
新チームの中では最も経験のある高部投手。初の公式戦に「みんなが緊張しているのが分かったので、自分が抑えてチームの流れをつくるしかない」との思いでマウンドに立っていた。
その力みからか序盤は体が前に突っ込み、球が走らなかった。
「(立ち上がりは)出力を上げて三振を取っていけば、チームが乗れると思ってました。少しずつ力みが抜けて四回くらいから、自分の中でも意識しないで真っすぐのコースが思ったところにいくようになったし、テンポ良くいけるように修正できました」

突然の捕手交代
投球が波に乗り始めた五回表の守備後、相手選手の治療のため、長い中断に入った。さらに六回裏の攻撃時に思わぬアクシデントに見舞われた。
この秋から高部投手の〝相棒〟として先発マスクをかぶる筧優亨捕手が、六回裏の攻撃で犠打を放った後、両脚にけいれんを起こして離脱。七回の守備から実戦では組んだことのない浅川帆捕手が代わって入ることになった。
「自分が配球面でも考えてやっていけるように、今までもやってきたので、それを生かそうと思いました」と高部投手。前半はストレート中心。終盤には相手の打ち気をそぐようにカーブを織り交ぜたのは自らのアイデアだ。

「キャッチャーは時間がかかる」
2点差で逃げ切り、上村敏正監督は「高部さまさまです」と冷や汗を拭った。「最後はサインが合わなかったですね。(前チーム捕手の)武智(遥士)もそうだったけど、どうしてもキャッチャーは時間が掛かるんですよ。ピッチャーが投げたい球をキャッチャーがチョイスしてくれる、ノーならすぐに別の選択をしてくれる、そのリズムが大事なので、常にキャッチャーとピッチャーは会話してないといけない。その時間がまだ足りないんです」
練習試合の登板は3試合
夏の甲子園出場後、秋の県大会開幕前に高部投手が練習試合で登板したのは3試合。それぞれ2、3、5回程度でいずれも筧捕手が受けていた。「(夏まではブルペンで)球は受けていたけれど、試合経験はなかった。(新チームになってから)学校の休み時間に配球を考えて、練習の前後に高部と話して意見をもらって話し合っていました。武智さんにも練習中に聞いていました」と筧捕手。

いきなりの公式戦
突然出番が巡ってきた浅川捕手はブルペンで受けた経験のみ。「(試合中に)筧から『違和感がある』と言われていたので、万が一のことは考えていました。絶対に後ろにそらさない、止めてやるという気持ちで。高部なら何を投げてもいけると思ったので『自分が投げたい球を投げろ、嫌なら首振っていい』と伝えました。サインが合わないことが多かったので、練習の中で改善していきたいです」と、役目を果たして安堵の表情を浮かべた。

高部投手は「去年の秋も武智さんに首を振ることが多かった。夏にかけて合ってきたので、そこは話し合いを重ねて自分たちも合うようにしていきたい」とひたすら前向きだった。
想定外、ものともせず
全ての想定外の出来事をものともしなかった高部投手。
「(中断による)間があいて、もう一回締めるというのが気持ちの切り替え的にも難しかったです。(暑さの中でも)水分をしっかり取って対策していました。スタミナが付いてきたのと(脱力して)楽に投げることを覚えてきたので」と、最後まで涼しい顔でマウンドに立ち続けた。
(編集局ニュースセンター・結城啓子)
<取材後記>
秋の県大会を前に、ライバル校の監督の関心事は聖隷の高部投手よりも新捕手でした。多くの指揮官が「新しいキャッチャーはどうだろうね」と、夏までの武智捕手に代わる存在を気にかけていました。高部投手が好投手であり、攻略し難いことは言うまでもないからです。そんな中で起きた今回のアクシデントでした。新チーム初めての公式戦、相手は甲子園出場歴のある難敵、炎天下の3時間ゲーム、捕手交代など、全ての試練を高部投手はやすやすと乗り越えてしまいました。
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