
「多くのミュージシャンが『ドンカマ』に育てられた」音頭やドドンパ…国産初のマシン「ドンカマチック」が60年の時を経て再び刻むリズム

電子楽器メーカーの京王技術研究所(現コルグ)が1963年に開発した日本初のリズムマシン「ドンカマチックDA-20」が修復され、浜松市楽器博物館(浜松市)で10月3日、お披露目のデモンストレーションが行われました。「ドンカマ」の愛称で親しまれ、国立科学博物館が定める「重要科学技術史資料(未来技術遺産)」にも登録されているこの貴重な機器が半世紀以上の時を経て、見事に蘇りました。
今回修復された「ドンカマチック DA-20」を開発したのは、コルグ社の共同創設者であり、自身も日本でも指折りのアコーディオン奏者だった故・長内端氏ら。自身も長内氏の近くで電子楽器開発に携わった三枝文夫監査役(85)は「自らの演奏に使うため。(アコーディオンを演奏する際)上手なドラマーを雇うには、ギャラがかかる」と意外過ぎる誕生秘話を明かしました。
ドラムのとクラベスの「音」から生まれた名前
オルガンやアコーディオンのリズムパートを自動演奏するマシンとして開発された「ドンカマチック」には、11種類の打楽器音と25種類のプリセットリズム、パターンが内蔵。特筆すべきは、「音頭」や「ドドンパ」など、日本独自のリズムが搭載されていた点。ちなみに名前は、バスドラムの音の「ドン」と打楽器クラベスが出す「カ」という擬音に、オートマチックの「マチック」を足した造語だといいます。

あわせて30台ほど製造された「ドンカマチック DA-20」、その1号機が約20年前、コルグから浜松市楽器博物館に寄贈されたものの、長年動作しない状態でした。2024年5月、三枝さんが同館を訪れたことをきっかけに、修復プロジェクトがスタートしました。
スタジオで『ドンカマもらえますか』
作業はコルグの森原由多加さん(60)と内山紗由美さん(37)が中心となって進めましたが、当初は電源すら入らない状態。「そもそも資料が何も残っていなかった。壊してはまずいと、少し直しては、必ず通常動作するかの確認の繰り返し」(内山さん)、「一度、基板部分を分解すると元に戻せないような気がして触れられなかった」(森原さん)と、まさに悪戦苦闘の連続だったといいます。

修復作業は約7か月をかけて完了。真空管とトランジスタを使い、回転盤でリズムを制御する機械的な要素が強い「ドンカマチック」の修復は、技術者たちにとってまさに大きな挑戦となりました。
発表会に招かれた元カシオペアのキーボーディスト・向谷実さん(68)は、中学1年生の頃からエレクトーンと小型のリズムマシンをつなげて演奏していた経験を持つといいます。「今でもスタジオで『すいません、ドンカマもらえますか』って言っている。日本の多くのミュージシャンがこのドンカマに育てられたのかなと思っている」と語りました。
「日本のためのリズム楽器」
向谷さんは、鍵盤楽器奏者にとってリズムマシンの重要性を強調。「キーボードは『ダウンストローク』だけ。ギターやドラムと違って上下の動きがないので、リズム感が弱くなりがち。『ドンカマ』があることで、16分音符の裏とか、8分音符の裏とか的確にキープできる。演奏が走ってしまったり、もたってしまったりするのを補正してくれる」と説明。会場では、こちらも3年前に修復されたヤマハ初のエレクトーン「D-1」と「ドンカマ」を組み合わせて『イパネマの娘』を披露し、見事、往年の名機の音色が蘇りました。

今回の修復プロジェクトは、単に古い楽器を直すだけでなく、日本の音楽文化の歴史を保存する重要な意味を持っています。三枝さんは「ドドンパは日本のために作ったリズム、音頭も昔からあるもの。『ドンカマ』は日本のためのリズム楽器」と胸を張ります。
1959年誕生の「D-1」と1963年完成の「ドンカマ」。戦後間もない時期に生まれたの2つの電子楽器が、日本の音楽教育と音楽産業の発展に大きく貢献してきたことは間違いありません。「表現を豊かにするために生まれたのがD-1、音楽を支える礎になったのがドンカマ。この時代の魂が今の私たちに宿っている」と向谷さん。黎明期の日本の電子楽器が持つ独自性と創造性は、60年以上経った今でも生き続けています。
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