
なぜ、58年もの時間がかかったのか 司法に翻弄され続けた袴田巖さん 事件と裁判の経緯【袴田事件再審公判・結審】
逮捕された当時、袴田さんは30歳でした。事件から58年、袴田さんは88歳になりました。なぜこれだけの時間がかかったのか、事件と裁判の経緯を振り返ります。

1966年、旧清水市のみそ会社で一家4人が殺害されました。逮捕されたのが従業員として働いていた袴田巖さん、当時30歳です。無実を訴えましたが、過酷な取り調べが連日、長時間にわたって行われました。
<取り調べテープ>
「お前は4人も殺しただぞ」
「お前が殺した4人にな、謝れ、謝れ、お前」
「お前は、4人殺した犯人だぞ。しかも殺して火をつけた」
「お前が流した涙を墓前に持って行って、袴田がこういうふうに泣いてますよと言ってやるよ」
逮捕から20日後、袴田さんは犯行を自白。裁判では一転して、再び無実を訴えました。
<袴田さんの手紙>
「私は裁判所には無罪がわかっていただけると信じています」
「我敗くることなし」
それでも、警察の自白調書などが決め手となり、1980年、死刑が確定。袴田さんは再審=裁判のやり直しを求めましたが、裁判所は長らくその訴えを認めませんでした。

初めて、その声が届いたのは2014年でした。
<当時のリポート>
「再審開始です」

静岡地裁はDNA型鑑定などを根拠に再審開始と袴田さんの釈放を決定。袴田さんは実に1万7390日ぶりに拘置を解かれました。
<袴田巖さん>
「権力の頂点に立った。バイ菌はみんな死んじゃったという」
死刑の恐怖に怯えながら過ごした長い獄中生活は、袴田さんの精神をむしばんでいました。

一方、検察は静岡地裁の決定に不服を申し立てたため、議論は東京高裁に。そして2018年、高裁は検察側の訴えを認め再審開始決定を取り消しました。
これに今度は弁護側が不服を申し立て、最高裁は審理が尽くされていないとして、再び、議論の舞台を東京高裁に差し戻したのです。

そして、2023年3月、東京高裁は裁判のやり直しを認める決定をしました。これに検察は不服を申し立てなかったため、袴田さんの再審開始が確定。2023年10月から静岡地裁で始まったやり直しの裁判は15回に及ぶ審理を経て、2024年5月22日、結審を迎え、残すは判決のみとなりました。
<滝澤悠希キャスター>
元東京高裁裁判長で30件以上の無罪判決を出してきた木谷明弁護士に聞きます。長い年月が経っていますが、これだけの年月が経っても議論が収束しているというよりは、話が広がっているようにも思えます。議論はうまくいっているのでしょうか。
<木谷明弁護士>
なんて言いますか。弁護側は無罪で、再審を認めてもらいたいために新しい証拠をつくらなきゃならないんですね。それに対して検察官が徹底的に反論するから、こういうことになるわけです。これはある程度は仕方がないんですけど、何とかならなかったかなと思いますね。
<滝澤悠希キャスター>
どちらも主張するものがあるので、難しい部分もありますが、確かにこれだけの年月がかかっていいはずはないと思います。2023年に再審開始がようやく確定しまして、58年経った2024年5月22日、再審公判が結審となりました。
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