2026年2月10日
しずおか文化談話室

​【絵本作家かのうかりんさんインタビュー】 静岡書店大賞受賞作家の新作絵本は犬張子が主人公。民芸品が幼稚園児になって大活躍

2024年の「第12回静岡書店大賞」の児童書新作部門3位に選ばれた「トドにおとどけ」(パイ インターナショナル)の作画を担当したかのうかりんさん(千葉県)の新作絵本「からくさようちえん いぬはりこくんのたからさがし」(NHK出版)が発刊された。おなじみの民芸品や工芸品が幼稚園児になって、学びを深めていく。奇想天外な設定の絵本はどうやって生まれたのか。
(聞き手/論説委員・橋爪充 書籍の写真/写真部・久保田竜平)

かのうかりんさん(NHK出版提供)

民芸品は親世代には懐かしく、子どもには新しく感じられる

-犬張子、赤べこ、招き猫、獅子舞を「からくさようちえん」の園児として描いています。民芸品をキャラクターとして使おうと考えたのはなぜですか。

かのう:「コミュニケーションをテーマに絵本を作ってください」と(出版社から)お話をいただき、「コミュニケーションを学ぶ場であれば舞台は幼稚園かな」というのがまずありました。民芸品を描いたのは、直前に赤べこを見せてもらったのがきっかけ。いろいろ調べたら、日本人の不思議な感性、かわいらしさがそこにあるように思えたんです。

-なるほど。

かのう:私たちの世代は「おばあちゃんの家にある」と感じるし、そのおばあちゃんは民芸品で遊んだ記憶がある。一方、今の子どもたちは見たことがないと思います。親世代には懐かしく、子どもには新しく感じられて楽しめるんじゃないかと思いました。

-沖縄のシーサー、名古屋のしゃちほこ、信楽焼のタヌキなどおなじみの民芸品がたくさん出てきます。どうして犬張子を主人公にしたのですか。

かのう:全国各地、まんべんなく民芸品を集め、キャラクター案が先に出来上がっていました。それぞれの性格も考えてあったんです。編集担当さんと話して「主役がいたほうがいい」とのことだったので、一番幼稚園児らしい、素直で明るくて元気な犬張子を選びました。

-民芸品や郷土玩具をキャラクターにする際、注意したことはありますか。

かのう:そのまま描くのではなく、私なりのキャラクター、性格でも印象付けたいと考えました。シカだったら物知りに、タヌキだったらちょっととぼけている感じ。動物としての動き、民芸品としての由来も意識しました。

-幼稚園の庭で、犬張子ら園児が宝物を探す物語です。一見ガラクタのように感じられるものも、大事にしている園児にとっては宝物だということを強く感じさせられます。

かのう:私には幼稚園年長の娘がいるんですが、よく石やどんぐりをポケットに入れて持って帰ってきます。そんなところからアイデアが生まれました。子どもたちはそれぞれ大事なものが異なる。それを認めてあげるのが重要だと思っています。宝物はみんな違っていて、その違いを認め合うことで仲良くなれる。お互いへの理解のスタート地点です。

アクリル絵の具でキャンバスに絵を描く

-絵についてうかがいます。アクリル絵の具でキャンバスに描いているようですね。帆布の質感や筆の動きがはっきり伝わってきます。狙いがあるのですか。

かのう:作家として20年ほどやっていますが、ずっとこのスタイルです。私は超・アナログ人間なのでこれしかできない。 最近はデジタルで絵本を描く方も多いですが、私はできないんです。こだわってこのスタイルでやっているわけではなくて。ただ、色の重なり具合を調整しやすいなどの利点も感じています。

-すでに「シリーズ化してほしい」という声もあるようですが、もし実現した場合はどんな展開が考えられますか。

かのう:いろいろストーリーを考えています。今回は犬張子が主役でしたが、別のキャラクターが主役になっていたりします。運動会をはじめ幼稚園のさまざまな催しが出てくると思います。

-かのうさんが絵を担当している「かなしきデブ猫ちゃん」シリーズは全国的に知られていますね。かつて静岡県河津町に住んでいた小説家の早見和真さんが物語を書いています。2018年から愛媛新聞と神戸新聞で連載され、単行本やアニメにも発展していますが、制作時の思い出はありますか。

かのう:出身地の愛媛でスタートできたのがうれしくて。愛媛、広島、兵庫のめちゃくちゃディープなところ、自分が知らなかったところにロケに行けたのが良かったですね。最初に行った愛媛県愛南町の石畳が特に強く印象に残っています。

静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。

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