2026年2月28日

【藤枝ノ演劇祭5】韓国の「Babacircus Theatre Company」、島田の「アートひかり」の演目を鑑賞
(文・写真/論説委員・橋爪充)

藤枝の旧東海道周辺で行う「藤枝ノ演劇祭」が5回目を迎えた。今年は韓国からも劇団を招き、商店街や周辺を周遊できる時間を見込んだタイムテーブルを組んだ。穏やかな陽気に包まれた宿場町は、演劇を楽しむ人でにぎわった。
フェスティバルディレクターの山田裕幸さんが率いる劇団「ユニークポイント」の本拠地「ひつじノ劇場」では韓国の劇団「Babacircus Theatre Company(ババサーカス・シアター・カンパニー)」による『Dream of Dreams』。

俳優4人による仮面劇は老婆と愛犬のじゃれ合いが、絵本を入口にした世界旅行に発展する。フランス、スペイン、南極そして…。マヌーシュスイング、聖歌、アリア、フラメンコが次々流れる音楽、影絵を交えた凝った照明、明らかにそれと分かるように作った合成写真、そしてドタバタのコメディーとしっとりとしたヒューマンドラマが渾然一体となった、奇跡のような45分間。老婆と愛犬の情に満ちたやりとりに、目頭を熱くする人が多かった。
日本遺産「駿州の旅」に境内の「 久遠の松」が選ばれている大慶寺では、島田市伊久美地区を拠点とする演劇ユニット「アートひかり」の『讃歌~パーソナルドキュメンタリー演劇〈From2011.〉と、その先の記録』。

寺の本堂にしつらえた舞台で演じられるのは、2011年3月11日の東日本大震災を機に、福島県から新潟を経由して長野県松本市に移住した作者・小池美重さんの実体験を基にした、3年間のパーソナル/ドキュメンタリー演劇。そこに、現在の小池さんの状況を描いた新作を加え、2部構成で展開した。
福島第1原発事故を受けて現地の人々が放射線に過敏になっている様子を生々しく演じる。「放射能の残り方」についての議論、農作物の安全性、原発再稼働に反対する国会前のデモ。福島の方々の当時の心境を反芻するとともに、メディアを通じて確かに15年前届けられた風景の数々が、いまや後景化していることに震撼する。

瀕死の母を介護するために福島に戻った作者は、介護以外にすることがない日常から脱却しようともがく。「人間はそれでも生きていかなくてはならない」という強いメッセージが伝わってくる。ラストシーンの寺の住職の言葉が見ている側に染み渡る。「今後の人生を丁寧に生きることが、先に逝った人への供養になります」
「藤枝ノ演劇祭」には、多くの人が関わっている。回を追うごとに規模が膨らんでいるようだ。演劇は、決まった時間に決まった場所にいなくては目撃することができない「不自由なアートフォーム」。そこに関わろうという意志を持つ人が多くいる。この演劇祭の真の価値は、支え手の熱意にあるような気がする。
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■藤枝ノ演劇祭5
会場:旧東海道藤枝宿周辺
料金:無料~2500円
3月1日の主な演目:
ユニークポイント『いのちもてあそぶひと』 午後3時半~@ひとことカフェ
Babacircus Theatre Company(韓国)『Dream of Dreams』 午前11時半~@ひつじノ劇場
アートひかり『讃歌 ~パーソナルドキュメンタリー演劇『From2011.』と、その先の記録』 午後5時~@大慶寺
世 amI『Even Though』 正午~@旧東海道藤枝宿商店街周辺
清水宏のスタンダップコメディ 午後1時半~@栄会館
▼午前10時から藤枝市生涯学習センターで「こどもっち劇場『きみノひみつきち』と題して、以下のプログラムがある。
・むらまつけーじ『青だらけの世界を作ろう』(ワークショップ)
・ユニークポイント『おと、と、ひかりと。』
・6月のきりん『海の伝説』
・日本舞踊泉流 泉明奈、泉舞奈『青い月夜の昔話』
・布施安寿香『青に(染まずただよふ)』
★詳細は公式サイトを参照

静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。










