2026年3月6日

【樂土の森現代美術展「BE NOW」】袋井市のアートスペース「樂土舎」で新旧の現代美術作品を堪能
(写真・文=論説委員・橋爪充)

1996年に袋井市の豊沢地区で始まった「樂土の森アートプロジェクト」が30周年。マツダ・イチロウ主宰が「樂土舎」と名付けたアート拠点に、音楽、美術、ダンスなど表現の壁を超えてアーティストが集う。
「BE NOW」と名付けた30周年記念展は、県内ゆかりの4アーティストによる作品が、 樂土舎の敷地内に点在する過去に制作された作品群と響き合い、混じり合っている。

普段はトークイベントやライブを行う「風乃家」は、美術家の柴田智明さん(浜松市)によって「餃子マイハウス」と名付けられ、餃子についての膨大な思念がぶちまけられた混沌(こんとん)のインスタレーションの場となっていた。畳、キャンバス、和紙、ビニール素材といった、ありとあらゆる物質が支持体となり、直感的なドローイングや着色が施されている。柴田さんの頭の中身が、バランス、美醜を考えていないかのように流出。野放図な「だだもれ」が、非日常世界を形作っている。

白に上下左右を囲まれる「ギャラリー白イ窖」には美術家の松村かおりさん(菊川市)の平面作品が整然と並ぶ。木版画と鉛筆によるドローイングが中心。モノタイプと注釈が付いた木版画は、きっぱりしたエッジが版画であることを主張するが、色彩の変化に継ぎ目がない。

別のスペースに大きな版木が飾られていたが、ダイナミックな彫りとまちまちな深さが印象的だった。ここにさまざまな色のインクを詰めて刷り上げるのだろう。細い線がいくつもの色の変化を見せる様子に、植物のつるや茎を想起した。

現代陶芸家の遠藤加奈さん(静岡市)は縦長で地面の中央に深いスリットが入った「窯跡地」に、いくつもの真っ白な陶器を置いた。現代人の生活に欠かせないマスクやコンビニ袋、ペットボトル、いわゆる「ガラケー」、ハイヒールの「かたち」が、透明ケースとともに土の斜面に置かれる。いま私たちが使っている道具もやがて土に返る。いや、返らないものもあるかもしれない。頭の中に100年、1000年単位の定規が浮かんでくる、浮かび上がらせる作品である。

夏目とも子さん(浜松市)は、「工房・樂土舎」に残された網状の農具や、布、石、トタン、欠けたコーヒーカップなどを組み合わせたインスタレーションを展開。もしかすると誰にも見向きもされず打ち捨てられていたのかもしれない材が、作品として目の前に立ち現れている様子は実に感動的。一つ一つのマテリアルは「風合い」が視覚化され、見る者の想像力を喚起する。ここでしか生まれ得ない作品を、過不足なく仕上げるアーティストの力を感じ取った。
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■樂土の森現代美術展「BE NOW」
会場:樂土舎(袋井市豊沢227-2-2)
会期:3月15日(日)までの金・土・日曜
時間:午前11時~午後4時半
入場料:一般500円、大学生以下200円、小学生以下無料
今後のイベント:
3月7日(土) 森の茶会「喫茶スキップ」Ⅱ 午前11半~、午後1時半~
3月8日(日) クロス・トーク(ゲスト/美術家・白井嘉尚) 午後1時半~ ※予約不要
3月15日(日) クロージング・ライブ「樂土の森音楽会2026」 午後1時~
出演/カイ・ペティート(ギター、ヴォイス、オルガン他) 参加費3500円(美術展入場料含む)
問い合わせ:樂土舎(電話090-2774-3782、E-mail:rakudonomori1212@gmail.com)
静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。
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