2026年3月9日

<高校野球>浜松大平台高、選手自身が競技人口減少について調査発表「なぜ高校野球は選ばれなかったのか」 7回制にも意見
タイトルは「なぜ高校野球は選ばれなかったのか」。現役選手自らが高校野球人口の減少について問題提起し、減少に歯止めをかけるためにはどうしたらいいのかを考察した。
有識者中心の議論
高校野球界では近年、球数制限、低反発バット、DH(指名打者)制の導入など、有識者の議論により次々に新しいルールが決められてきた。現在進行形の議題が「7回制」だ。今回の調査をまとめた選手の一人、小岩聖鈴(せれい)投手は「(いつの間にか)ルールが変わり、決まってしまうと強制的なものになってしまうので、切り替えるしかなくて。そこで考えなくなるんです」と、示唆に富んだ言葉を発する。
考えるきっかけに
アンケート調査の対象は選手の小学校、中学時代のチームメート。23人に依頼し、16人の回答があった。サンプル数は少ないものの、選手自身が考えるきっかけとするには十分な取り組みとなった。
アンケート項目は以下の二つ。
「高校野球を行わなかった理由を全てお答えください」(記述式)
「高校野球を行わない理由に影響を及ぼすものを選択してください」(選択式)
多かった回答は次の通り。
「学業との両立(50%)と練習時間の長さ(37.5%)」
「坊主への抵抗感(37.5%)」
「魅力を感じる他の競技(37.5%)、他の活動の存在(43.8%)」
調査を実施した同校2年の小岩投手と山本莉士(れお)主将は「野球自体が嫌いという人がいなくて良かった」とひとまず安堵した。
調査結果を発表した小岩投手(左)と山本主将
指導者の在り方
一方で小岩投手が回答から考察したのは、指導者の在り方。「指導者というワードが結構出てきました。昭和的な指導など、厳しいということが体罰や高圧的な発言につながり、恐怖心や嫌悪感が上にいってしまうと野球の楽しさを見失ってしまい、続けられなくなる。練習の中で、緊張感を持ってやる上で余計なプレッシャーはいらないと思う」
情報発信の必要性
山本主将は「不安」というキーワードに着目した。「高校野球のレベルが高い、自分には合わないんじゃないかという人もいた。自分たち(高校生)が中学生と意見交換したり、コミュニケーションを取る場をつくったほうがいいんじゃないか、という案もチームの中で出ました。それから〝坊主〟への抵抗感もありましたね」
野球部が掲げる理念
同校野球部が掲げる理念の一つに「高校野球文化の継承・発展への寄与」がある。今回のアンケート調査はその一環として実施した。
未成年者同士の調査ということもあり、直井勇人監督(39)が保護者や日本経済大倫理審査委員会の承認を得るなどバックアップした。
練習を見守る(右から)直井監督、山本部長、西野副部長
直井監督は掛川西高出身。新居高監督などを経て2018年4月から5年間、静岡高野球部で部長を務め、2019年と2021年夏の甲子園に出場したチームの指導に携わった。甲子園常連校を経て着任した浜松大平台高は昨年、春、秋は県予選初戦、夏の静岡大会も初戦敗退という、いわゆる一般的な公立高校だ。「技術的なところのギャップはありましたけど、野球をひたむきに頑張る、野球が好き、という部分に関しては静高の子たちと比べても全く同じですよ。全然引けを取らないくらい意識も高いです」
自分たちで考える
山本主将はチームの理念を理解し、日頃から心がけている。「直井先生はよく、練習を中断して『自分たちで考える時間をあげるから、自分たちで話し合うように』と言います。勝つことも大事ですけど、高校野球がある意味って社会に出た時に役に立つ、人間として成長すること。あいさつだったり、何かに気づいて率先してやる、だったりそういうことができる選手になってほしいとも言われます」
自主性育む指導陣
4月で就任4年目を迎える直井監督のもと、意欲的な指導陣が選手の自主性を育んでいる。外野手を担当するのが、浜松北高―東京学芸大を経て浜松大平台高が教員初任地の山本尚輝部長(25)、内野手は浜松大平台高OBで中京大を出て非常勤の西野之規副部長(24)、捕手を指導するのが浜名高で2003年春の甲子園に出場し、社会人・鷺宮製作所でプレーした渭原悠太コーチら充実の顔ぶれだ。
浜松西高で1981年夏の甲子園に出場した清水淳次前校長の理解、協力もあって、スタッフや設備を少しずつ形にしていったという。

昨秋の浜松市内大会では浜松工高や浜松修学舎高といった強豪を破り、決勝では県王者の聖隷クリストファーに2―5で敗れたものの準優勝に輝くなど自信を付けている。来る春季大会は県大会16強、夏のシード権獲得が目標だ。
7回制を考える
日頃の活動を通じて、自主性を育んできた選手たちは7回制についても言い分がある。「やる側にしてみれば、野球やりたくて入っているので、暑いのが嫌だから7回に、というのはないです」と山本主将。小岩投手も「練習はキツいけれど試合は楽しい。やっぱり9イニングがいい。ただ〝大きな存在〟ではない僕たちの意見は通りづらいかなと思っています」と正直な心情を口にする。
終盤の〝ドラマ〟に期待して9回制を主張する観客、ファンの主張は無責任との声もあるが、選手にはどう聞こえているのか。「やっている側にしてみても、それ(終盤のドラマ)も含めて野球。最後の2回はすごく大きい。7回だとそれが起きないかと言われたら分からないけれど」と山本主将。ネット配信で甲子園の試合をよく見るという小岩投手も「見る側の面白さ、感動って次の世代の(選手の)モチベーションになるんじゃないか」と考える。

選手の自由な意見を歓迎する直井監督は、フォローも欠かさない。
「選手がどう考えているかはものすごい大事だけれど、子どもに見えていないリスクもあるので、そこは大人が考えていかないといけない。『野球が変わってしまうから』が『選手の健康、安全』より上位に行ってしまうのは違う。野球応援や審判(の健康、安全)など、全て(のリスク)を踏まえて考えなければならない問題だと思います」
どのような結論が出るとしても、ルールの変更がどんな意味を持つのか、その過程で選手自らが考え、議論、理解することで、高校野球の未来はより良いものになるのではないだろうか。
(編集局ニュースセンター・結城啓子)
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