2026年3月11日

サッカージャーナリスト河治良幸
90分未勝利のジュビロ磐田。2つの藤枝戦で見えた課題とここから

立ち上がりから球際での激しい攻防が続く中、磐田は前線からのプレスによって高い位置でボールを奪い、チャンスを生み出していく。志垣良監督も序盤はいい形でプレッシャーをかけることができ、高い位置で奪えたシーンもあったと振り返り、試合への入り自体は良かったと評価した。
その流れの中で先に試合を動かしたのは磐田だった。26分、ロングボールのこぼれ球を回収して攻撃をつなぐと、渡邉りょうのパスに反応したグスタボ・シルバが右サイドの背後へ抜け出す。GK北村海チディの足元を抜くシュートを決め、磐田が先制に成功した。志垣監督も、試合の入りから生まれた得点だったと振り返り、得点までの流れは良かったと語った。

しかしその後、藤枝が徐々に試合を立て直す。サイドチェンジを使いながらクロスを起点とした攻撃を展開し、38分に同点に追いついた。浅倉廉の左クロスを松木駿之介がファーサイドで折り返し、三木仁太がこぼれ球を押し込んだ形だった。志垣監督はこの失点について、サイドからの攻撃に対する対応がやや遅れたと分析する。藤枝がサイドチェンジを繰り返しながらクロス攻撃を仕掛けてくる中で守備の対応が遅れ、PKスポット付近のスペースが空いてしまったことが失点につながったと指摘した。
前半終了間際には藤枝の菊井悠介が退場し、後半は磐田が数的優位の状況で試合を進めることになった。藤枝は[5-4]の守備ブロックを形成してゴール前を固め、磐田がボールを保持して押し込む展開となる。
磐田はサイドからのクロスを中心に攻撃を仕掛け、いくつか決定機も作ったが、シュートがポストに当たる場面や枠を外れる場面もあり、勝ち越し点を奪うことはできなかった。志垣監督はこの時間帯の攻撃について、選択肢の使い分けや崩しの工夫がもう少し必要だったと振り返る。パスを選択するのか、外を回る選手を使うのか、あるいは個人で仕掛けるのかという判断に加え、斜めの動きを取り入れながら相手の守備ブロックに変化を与える必要があったと整理した。
特に指摘したのは、相手の守備を動かすためのオフ・ザ・ボールの動きだった。縦方向の動きだけでは相手の視野から外れることが難しく、横や斜めに動きながらブラインドサイドを取る工夫がもう一段必要だったと説明する。またクロス自体は有効な手段ではあるものの、安易に頼る場面もあったとし、ニアゾーンを狙う動きや相手の視野を揺さぶるような崩しのプロセスを作る必要があると課題を挙げた。
さらに、先制後のゲーム運びについても改善点があるとする。相手が立ち位置を変えてきたことで守備の判断が難しくなった部分はあったものの、よりアグレッシブにプレスへ行けた場面もあったと振り返る。相手を見てしまう傾向があるため、どのタイミングでスイッチを入れるのかを含めて、前向きにボールへ向かう姿勢を身につけていく必要があると述べた。

試合は1-1のまま終了し、決着はPK戦に委ねられる。5人目まで全員が成功する展開の中、6人目で佐藤凌我のキックが枠を外し、その後に永野修都が成功。磐田はPK戦で敗れる結果となった。
志垣監督は試合を総括し、流れの中から1点しか奪えなかったことが大きな要因だったと整理する。得点力向上のためには個人だけでなく、チームとしての連動が重要になると指摘した。特定のやり方に偏るのではなく、人数をかけて連動しながら崩していくことで相手守備の難易度は高まるとし、コンビネーションによる崩しは今後さらに取り組む必要があると語った。
また途中出場した藤原健介にも触れ、創造性を生かすためには現代サッカーの強度の中でボールに関わる回数を増やしていくことが重要だと説明する。スルーパスなどの創造的なプレーは彼の特長であり、技術のある選手がボールを呼び込みながら攻撃の発信役となることが求められるとし、パスや仕掛けの部分で主体的にチームを動かしていくことに期待を寄せた。
数的優位の時間帯も含めて試合の主導権を握りながら、90分で勝利をつかむことはできなかった。志垣監督はサポーターに対して申し訳ない試合だったと受け止めつつ、いち早く勝ち点3を届けられる試合を見せなければならないと語る。攻撃面での連動性と精度の向上が、今後に向けた重要なテーマとして残った。
翌日にはヤマハ大久保グラウンドで同カードのトレーニングマッチが行われたが、そこでも1本目と2本目の合計1-2で藤枝に敗れ、結果的に連敗となった。1本目は1人、2本目はスタートから3人の練習生が含まれる布陣で難しさもあったが、公式戦で出た攻撃面の課題に取り組む姿勢が見られたことはポジティブな要素と言える。
ペイショットのゴールは、2トップを組む佐藤凌我との動きがうまく噛み合う形で生まれた。公式戦の途中出場に続き、1本目のスタメンとなった佐藤は次のように振り返る。「ゴールシーンは背後に抜けて、そのままゴールという形でしたけど。ああいうシーンとは別に、もう少しボールを動かして崩すシーンも作っていかないと、この先は厳しいなと思います」
「攻撃がちょっと単調というか、単発になってしまうことが多いので。もう1回サイドを変えてやり直すシーンが、もう少しあってもいいのかなと思います。相手を動かして、相手が疲れてきたら中が空いてくるので。その使い分けができれば」

公式戦ではスタメン、トレーニングマッチでは2本目で起用されたMF川合徳孟も、「(土曜日の試合は)クロスからの単調な攻撃が多かったので、今日はもっとサイドで崩すことをチャレンジしようと思っていた。自分がうまく入って、右サイドで崩せているシーンは何回か作れた」と振り返った。
後半に10人の相手を攻めあぐねた公式戦と比べると、トレーニングマッチでは藤枝側の積極的な攻撃も多く見られ、2本目も含めて攻守の切り替わりが多く発生する分、同じシチュエーションではなかった。それでもペイショット、佐藤、川合、藤原健介、川﨑一輝といった公式戦出場メンバーに加え、18歳のMF石塚蓮歩や高卒ルーキーでU-18日本代表のDF増田大空など、若い選手たちが課題に向き合う姿勢を見せたことはポジティブな要素と言える。
ここ2試合、公式戦にベンチ入りしながら出場機会のない増田も、外から試合を見て感じた課題を口にする。
「試合をずっと外から見ていて、サイドからクロスまで行く場面もありますけど、動かして時間を作る場面も多いので。そこで一人で打開してクロスまで持っていくとか、自分のキックでチャンスメイクできれば、本当に唯一無二になれると思います」
チームとしての取り組みに、増田のような前向きなヤングパワーが加われば、流れが変わる可能性もある。そうした若手の台頭によるチーム内競争の活性化も重視する佐藤は、ここからの転機についてこう語る。
「自分たちの形で点を取れたら、それがモチベーションにもなると思います。どれだけ自分たちのやり方で点を取れるか。相手より多く取れれば、それが結果にもつながるので。そこをもっと突き詰めてやりたい」
ハーフシーズンとなる5試合を終えて勝ち点は5。EAST-Bの首位に立つヴァンフォーレ甲府とは勝ち点9差となっている。まずは90分での勝利を経験し、チームを良い流れに乗せていきたいところだ。
(文:サッカージャーナリスト河治良幸)
タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。世界中を飛び回り、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。
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