2026年2月20日
河治良幸

サッカージャーナリスト河治良幸

​ジュビロ磐田、松本戦で90分初勝利へ 志垣監督が語る攻略の鍵「矢印の逆を取れるか」

J2・J3百年構想リーグのEAST-Bで、ジュビロ磐田はここまで2試合で90分勝利がない。志垣良監督が「結果と成長」をテーマに掲げる現在の磐田にとって、ホームの松本山雅戦は勝利のプライオリティが高い一戦だ。その視点に立って、志垣監督は2試合で見られた課題と修正点を明確に示している。

ゲーム形式の練習では“仮想松本”を相手に、磐田側の組み合わせを変えながら攻撃のビルドアップなどを細かく確認していた。志垣監督は「松本山雅がハイプレスに来るので。そのプレスをどう剥がすか、何をやって、何をやっちゃいけないのかを確認しています」と語る。前線から勢いを持って圧力をかけてくる相手に対し、どういう立ち位置を取ることで、より効果的に剥がしていけるか。

「中央の立ち位置のところはうまく取れてないと、繋がらない。ボランチの立ち位置だったりが大事になってくる。ボランチがいかに良い位置でボールをタッチするのか。そこは1つキーになる」と志垣監督。プレスを受ける局面で中盤が消されると、最終ラインに負荷がかかり、攻撃のテンポも失われる。それが、最終ラインのヤン・ファンデンベルフや山﨑浩介から、なかなか効果的な縦パスを入れられていない要因でもある。

90分で決着が付かず、今大会の特別ルールであるPK戦で勝利した長野パルセイロ、2-1で敗れたアウェーのFC岐阜に比べても、松本はマンツーマン気味のハイプレスを特徴とするチームだ。それを踏まえた上で、志垣監督は「本当に勢いを持ってどんどん来るので、その矢印の逆を取れるかというところが大事になってきます。ディフェンスの背後だったり、プレスに来る中盤の背後だったり、相手の矢印の逆を取れるか」と主張する。

守備はほぼ一貫して4-4-2のコンパクトなブロックがベースになっているが、攻撃のシステムについては、鹿児島キャンプから積み上げてきた3-4-3をベースとしながらも、より柔軟な使い分けが大事になってくる。「3-4-3というのは1つのやり方であって。3-4-3て一番バランスよくポジション取れてるんですよ。ただ、バランスがいいということはバランスを崩しにくいことでもある。だから、全て3-4-3でやるのかって言ったらそうではない」と志垣監督。高い位置はマンツーマン、自陣では5バックで構えてくる松本に対して、スペース攻略も含めて、状況に応じた形の変化を想定している。

守備の形やその中での状況判断はチームで整備されつつある。しかし、それでもボールを奪い切れるシーンが多くない点に関して、志垣監督は「スピード感というところですね。これぐらいでいいのかなっていうのが出ちゃっている」と指摘する。全体の走行距離は118キロ。この時期としては決して低くない数字だ。しかし、それがボール奪取やチャンスの回数に還元されていないのはなぜか。

志垣監督は「運動の質。守備で言えば、単純なプレスのスピードですね。相手との間隔が2メートル空いてると、そこで蹴られちゃう。攻撃面でもポジション取りが1個1個遅くて、ジョグスピードが求められるところで歩いたり、立ってることが多い」と語る。さらには相手の守備に中盤の選手がパスコースを消されると、それを嫌がって下がってきてしまう傾向が強い。もちろんボランチが意図的に下がってパスコースを作るシーンはあっても良いが、もっと中盤で動きを出すことで、そこにパスコースを作って行ける。現在はそういったところが探り探りになってしまっているのだ。

縦パスの選択に関して、志垣監督は「ここでミスをしちゃいけないというのはある」と前置きしながら「ここではトライしなきゃいけない。出せるタイミングと出せないタイミングがある」と主張する。そのための受け手の立ち位置、動いて出すタイミング、周りの選手のサポートを含めて、もっともっと積み上げていかないといけないことは明らかだ。ただ、それは意識ひとつで、今日明日に劇的な改善ができるものではない。

「本当に結果は出して行かないといけないですし、結果とともに成長がある。そこは度外視できない」。志垣監督がそう認めるように、昇格・降格の無いハーフシーズンであっても、優勝タイトルを掴みに行くべき立場にあることに変わりはない。そのために松本という相手に対して、今できるベストを発揮して行けるかどうかは志垣監督の采配によるところも大きいが、やはり選手一人ひとりの意識にかかっている。

在籍5年目となる松原后に聞くと、現在はチームがスタメンを何人も入れ替えながら戦っている現状の難しさを認識しながら、それでも「僕は結果を求めないと成長はないと思っています」と回答した。「やっぱり、これだけ去年は悔しい思いをして、その前の年は降格して。サポーターからの信頼だったり、“ジュビロはどうなんだ”と見られている中で、先の成長を求めるよりも、今は目の前の1試合1試合を勝って、サポーターの信頼を取り戻したい」と松原。勝つために積み上げているベースがブレてしまったら本末転倒だが、勝つことを求めてやっていく先にしか成長がないことも確かだ。

「今のJ1の強いチームを見ても、誰かを成長させようとか、このチームを成長させようって言ってやっているのかと言ったらそうではない。このハーフシーズン見ても、どこのチームも全力で戦ってますし、目の前の1試合の勝利を目指した戦いをしていると思うので。本当に危機的状況だと思う。ジュビロの立ち位置を見ても、強くなっていくことを目指している中で、結果を得てこそ、その先に成長があると思う」

志垣監督が就任して1年目の磐田は現在、チーム作りのプロセスにあることは間違いない。それでも目の前の試合で言い訳にせず、松本を相手に90分での勝利を掴み取ることができるか。勝利できれば、そこには必ず何か成長が見られるはず。そして早くサポーターと勝利の喜びを分かち合うことが、成長を加速させるきっかけになるのではないか。
(文:サッカージャーナリスト河治良幸)

タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。世界中を飛び回り、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。

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