2026年3月20日

【松坂屋静岡店の「村本咲展『パーキングエリアの夜』より」】世界的に高い評価を受けたアニメ作品に再会。PAで時間を過ごす動物たちの「間」に注目
(文・写真/論説委員・橋爪充)

静岡市葵区在住のアニメーション作家村本咲さんの個展。2024年10月の第26回「DigiCon6 ASIA」(TBS主催)のグランプリに選ばれ、2025年2月には米国のスラムダンス映画祭短編アニメーション部門グランプリに選ばれるなど各国で評価された『パーキングエリアの夜』(2024年)をはじめ、3作品が見られる。版画作品やイラストの展示販売も行う。
筆者は2025年3月の「第2回清水駅前芸術祭」で約11分の同作を見ている。高速道路を走る夜行バスに乗り合わせた動物たちが、恐らく静岡県内であろうパーキングエリア(PA)で少しの時間を過ごす。それだけと言えばそれだけなのだが、小さな物語の起伏がいくつもあり、シンプルな線の作画も見事で、ほぼモノクロームの画面に強く引きつけられた記憶がある。
1年ぶりに鑑賞したが、今回は「他者の気配」の描き方が優れていることに気付いた。トイレの個室でカメラレンズのふたが隣の個室に行ってしまった。さあどうしよう。という場面がある。少しすると、個室の下の隙間から「スッ」とふたが差し出される。誰かいるようだ。姿は見えない。だが、親切ではあるようだ。例えば、こうした描写。
まだある。PAのコンビニエンスストアのレジに商品を置くが、誰も出てこない。チリンとベルを鳴らす。だが反応はない。どうしようか。手持ち無沙汰にしていたら、飲料がずらりと並んだ冷蔵ケースの方から「コトリ」と音がする。バックヤードに亀の店員がいる。例えば、こうした描写。
さらに。駐車した車に向かい合うようにしてベンチに座る動物を背後から捉える。別の動物がやってくる。最初にいた動物は、新参者に目をやることなく、腰を上げてちょっと左に座り直す。さらに別の動物がやってきて、2頭の間に座ろうとする。両側の2頭は目を前方に向けたまま、ちょっとだけ端の方に座る位置をずらす。適度な距離が保たれる。
今回展の他の上映2作、『夜ごはんの時刻』(2013年、『干支新年会』(2023年)もそうだが、村本さんの作品は登場する生き物たち同士の距離がいい。親密な者たちは手の届く範囲に。そうでない者たちは、心理的な安心感を得られる距離に。配置の絶妙さが光る。
村本さんの作品に漂う「ほっ」と安心できる感覚は、「かわいい系」のキャラクター造形だけでなく、彼らの「間」が醸し出しているのではないか。
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■「村本咲展『パーキングエリアの夜』より」
会場:松坂屋静岡店北館2階Blanc CUBE(静岡市葵区御幸町10-2)
開館:午前10時~午後6時半(最終の24は午後4時閉場)
会期:3月24日(火)まで
静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。









