2026年3月25日

【三島市がホール座席をリユースで更新】三島市が市民文化会館の老朽化した座席の更新で、閉館した他県の公共ホールの座席を再利用することになった。ごみ減量の視点を含め、賢く経費を節減する好事例だ。

(山田)ホール座席をリユースってどういうことですか。
(川内)三島市が市民文化会館小ホールの古くなった座席の更新で、閉館した和歌山県橋本市の市民会館の座席を再利用するという話です。無償で譲り受け、入れ替えることで大幅に経費を抑えることができました。
(山田)なるほど。
(川内)私が20年ほど前に三島支局にいたということもあって、先月静岡新聞に載ったこの記事が目に止まり、市の担当者に話を聞き、3月19日付の1面コラム「大自在」でも取り上げました。
私自身、このごろ増えたリユースショップに時々、足を運んでいます。お目当ては服や靴、バッグ、そして趣味の釣り具など。
(山田)確かにお店が増えましたね。
(川内)自分の主観でしょうが、掘り出し物と感じた品との出合いがだいご味です。
(山田)宝探し的な楽しさがある。
(川内)門努さんはリユースショップに行きますか。
(山田)僕はもっぱらフリマアプリの「メルカリ」を使っています。最近はゴルフ用品が多いかな。
(川内)入れ込んでいるようですね。私もゴルフに熱中していた時、リユースのお店によく行っていました。
(山田)新品は高いし、毎日使う物ではないという気もするので。
(川内)お店に行くと「見つけた時が買い時」というような音楽やアナウンスが流れていて、「迷って買わなかったけど、やっぱり買おう」と次の日に行ったら無かったというような経験を繰り返すと、ついその場で買ってしまう。
(山田)それ分かります。
仲人は座席を手がけたメーカー
(山田)三島市の話を詳しく教えてください。(川内)三島市民文化会館は1991年の開館で、使用頻度が高い小ホールの355席はクッション性の低下が目立ち、市には「腰に優しくない」との声も寄せられていました。
(山田)だいぶ「へたっていた」ということですね。
(川内)橋本市民会館は1968年の開館、2025年3月の閉館。途中に座席の交換が行われていて、状態は三島市も確認し、良好とのことです。運搬や設置の費用は約1500万円。新品を購入した場合、費用見込みは1億円を超えます。工事は8月に行われます。
(山田)三島市はずっと使い続けていたけど、橋本市は更新していたということなんだ。
(川内)今回は、三島市民文化会館の大ホールと橋本市民会館の座席を手がけたメーカーが同じだったことがリユースにつながりました。
「コトブキシーティング」という劇場やホールなどの座席を製造、販売する創業100年を超える業界の最大手で、東京のサントリーホールや帝国劇場、東京ドームなどの座席も手がけています。
(山田)そういう会社があるんですね。
(川内)私も今回初めて知りました。この会社は、老朽化が進んだ小ホールの座席の応急処置も引き受けていて、事情を知っていたわけです。開館時に小ホールのいすを手がけた会社については、修理対応できる期間が過ぎてしまっていたとのことです。
(山田)誰が仲人か良く分かりました。
両市にとって「ウィンウィン」

(川内)まさに仲人。幸運だったと言えます。交換により、前席との間隔が広がり、万一の時の避難路の確保の点で、開館後に定められた消防関係の条例に適合できない状況も解消されます。
橋本市側も座席の処分費用を削減できます。両市にとってまさに「ウィンウィン」の話です。
(山田)本当にそうですね。
(川内)公共施設の老朽化に伴う備品の更新などの費用は自治体にとって大きな負担です。全国的にも珍しいという今回の取り組みは、ごみ減量などの視点を含め、賢い経費節減の好事例と言えるのではないでしょうか。
(山田)新品を購入したら1億円超ですからね。
(川内)三島市は「メルカリ」を活用した粗大ごみの販売で、同様の取り組みをする全国72自治体の中で販売額や販売数などが2024年、2025年と2年連続で1位でした。
販売したのは市清掃センターに持ち込まれた、まだ利用できるいすや本棚、子ども向け玩具など。今回のホール座席の再利用は、ごみ減量やリユースに積極的な三島市らしい取り組みと言えます。
(山田)他の自治体も「こういうやり方がある」と知ったのではないでしょうか。
政府もリユース推進に力
(川内)政府はごみの排出抑制と製造や廃棄の際に出る二酸化炭素(CO2)の削減を目的に「リユース品」の市場規模を2030年に2024年比で32%拡大させる方針です。約3兆5千億円を4兆6千億円規模にする目標。市場規模は近年、おおむね年1%のペースで伸びていて、目標達成には今後は年4~5%の大幅増が必要になります。
(山田)相当ペースを上げる必要がありますね。
(川内)2027年度までに事業者が守るべき事項をまとめた指針を策定する方針です。具体的な施策としては、中古品販売店やフリマアプリの出店企業を評価する仕組みを設け、優良企業の活動を後押しすることなどを想定しています。
(山田)リスナーから声が届いています。「備品交換と言えば、エコパも20年くらいたっている」「甲子園のベンチもリユースされて一般の人も買えるので、使いたいです」など。甲子園のベンチは更新時に買えるんだ。
自治体同士の“縁結び”を

(川内)政府は自治体にもリユース品の活用を促しています。三島市と橋本市のような自治体同士のやりとりも、自治体のリユース品活用推進の一法ではないでしょうか。そもそもが自治体で使われていた物であり、マッチングは良さそうです。
(山田)確かに。
(川内)今回は会館の座席を手がけたメーカーが同じだったという背景がありますが、「こういう物を欲しい」「これを提供できる」という自治体の情報を集約する“縁結び”のシステムがあればと感じました。
(山田)できそうな気がします。
(川内)高度経済成長期の1960~1970年代に建てられた公共施設が相次いで耐用年数を迎えていて、地方の人口減少などもあり箱物の廃止や複数施設を統合しての機能集約などの動きが全国で進んでいます。
今回のホール座席のようにリユースできる「掘り出し物」が出る可能性は高まっているのではないでしょうか。橋本市についても2006年に隣町と合併していて、隣町に元々あった比較的新しいホールに機能移転する形で、元の橋本市にあった市民会館を閉館しました。
その結果、再利用できる座席が生まれたわけです。
(山田)歯車がうまくかみ合ったんだな。
リユース品の価値とは
(川内)古い漁網からバッグを作るなど、新しい価値を付けて再生する「アップサイクル」の取り組みも進んでいます。私が趣味のフライフィッシングで使うベストは、ペットボトルから再生した物。投棄されたルアーを海底から回収し、補修して販売するビジネスも生まれています。(山田)ランドセルのアップサイクルを聞いたことがあります。
(川内)中東情勢の緊迫化で石油の調達が不安定になり、プラスチックやポリ製品が今までのように作れなく可能性もあります。リユースへの関心や必要性はより高まるのではないでしょうか。
(山田)僕はリユースした物の方が価値があるような気がします。今回の三島市のホール座席も和歌山県の橋本市から無償で譲渡されたという「物語」があります。その物語が価値なんじゃないでしょうか。
(川内)ストーリーが大きな価値であるのは間違いありません。自治体同士の備品のやりとりとして、三島市の担当者はホール備え付けのピアノなどが考えられると話していました。小ホールから外した座席のさらなる利用の可能性も探っているとのことです。
(山田)自治体同士による備品のリユース、広がりに期待します。可能性は十分あると実感しました。今日の勉強はこれでおしまい!
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