2025年1月29日
河治良幸

サッカージャーナリスト河治良幸

ジュビロ磐田の新キャプテンは選手たちが決める。ジョン・ハッチンソン新監督が明言

(左から)松本昌也、上原力也、松原后、渡邉りょう


【サッカージャーナリスト・河治良幸】
J2優勝、J1昇格を掲げるジュビロ磐田は恒例の鹿児島キャンプを行っている。昨年横浜F・マリノスを率いていたジョン・ハッチンソン新監督が掲げる“スーパーアグレッシブ”なフットボールに関して指揮官も「成長に伴う痛みがありますし、まだまだリーグの中で戦う上で長い道のりがあると思う」と認める通り、まだチーム作りの初期段階にある。

藤枝MYFCとの“県勢対決”は30分4本マッチの1本目こそ、ビルドアップのミスからボールを失い、攻勢をかけられる時間帯が目立ったが、GK阿部航斗のビッグセーブなどに助けられる形で耐えしのぐと、2本目、3本目に巻き返した。エースとして期待の掛かる渡邉りょうのアシストにより、ギラヴァンツ北九州から復帰のMF藤原健介がゴールを決め、4本トータルで1−0の勝利を飾った。

ハッチンソン監督も「昨年のロングボールを蹴って、セカンドボールを回収するようなスタイルから、ビルドアップする、自分で判断できるチームに変えていこうとしています。成長に伴う痛みは分かっていますし、また問題が起きるということもチームとして理解しています」と言うように、ビルドアップの部分は向上していく必要があり、そこに個人のスペシャリティを加えるという段階にもまだいけていない。

その一方で守備面は前からボールを奪いにいくという姿勢を押し出しながら、鹿児島ユナイテッド戦に続き、無失点で終えたことの価値は高いだろう。しかも、昨年の磐田を支えたリカルド・グラッサとハッサン・ヒルのセットではなく、ロアッソ熊本から加入した“グリ”こと江﨑巧朗、同じくJ2降格のサガン鳥栖から補強した上夷克典が、それぞれ外国人センターバックと組んだ結果であり、森岡陸が長期の怪我から回復途上であることを差し引いても、センターバック陣は信頼がおけそうだ。

現段階ではそれぞれの選手を固定的なポジションで競わせている。左右のウイングと“10番ポジション”と呼ばれるトップ下に関しては、起用する選手によって特長が大きく異なり、各選手の持ち味が発揮されるほど、磐田の得点力アップが期待できる。

そのためにも攻撃のベースとなるビルドアップが改善されていく必要はあるが、ハイラインでボールを回す意識や、ミスしても逃げない姿勢はハッチンソン監督やキャンプ前に合流したショーン・オントンコーチの熱心な指導によって、まずはマインドのところから芽吹いてきていることが感じられる。

リーダーシップグループを作る考えも


新たなトライをするチームにとって、重要な役割を担うのが新キャプテンだ。これまでは山田大記という象徴的なキャプテンが、良い時も苦しい時もチームを支え、引っ張ってきた。その偉大なキャプテンが現役引退し、磐田には新たなリーダーが必要なことは、ハッチンソン監督も就任する前から分かっていたことだろう。

指揮官は新キャプテンの選出方法を明かした。

「私個人の考えでは、選手にキャプテンを選んでもらおうと思っています。キャプテンというのは、選手を代表する存在、クラブを代表する存在だと思います。選手には自分たちを率いてほしい、代表してほしい人を選んでほしい。ジュビロのような歴史あるクラブのキャプテンになることは本当に名誉なことだと思います」

そして、そのキャプテンのもとに“リーダーシップグループ”を作る予定だという。選手が決める以上、現時点で誰がその名誉ある大役を任されるかは不明だが、藤枝戦では1、2本目が松本昌也、3、4本目は松原后がキャプテンマークを巻いていた。

有力候補は…


練習や試合を観る限り、スタメン争いや各ポジションの序列もはっきりしていないが、この松本と松原に加えてMF上原力也が有力と言えるかもしれない。ただ、昨夏に加入した渡邉りょうも責任感が強く、十分に資質はある。

ハッチンソン監督は「清水戦の前には決めたい。選手に決めてもらいます」と語っており、鹿児島キャンプの総仕上げとなる2月1日の“静岡ダービー”で、開幕戦に向けた主力候補も含めて、かなりの骨格が見えてきそうだ。

まだまだチームは積み上げの段階で、練習試合の結果に一喜一憂するべきではないが、それでもダービーはダービー。失点をしないことは大事だが、攻守両面で自分たちの狙いを持ちながら、一つでも多く得点して開幕に勢いをつけたい。

タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。世界中を飛び回り、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。

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