
作業時間はわずか2時間半…鉄道の安全支える「守り鉄」に密着 深夜のJR東海道線で電線交換【静岡】

鉄道の安全を影で支える「守り鉄」という仕事をご存知でしょうか。「守り鉄」とは、JR東海の電気設備を主に作業する技術者のことです。今回、深夜の東海道線で、車両に電気を送る電線の交換作業に密着しました。
午後9時すぎ、守り鉄による作業前の打ち合わせです。
「無事故でいこう、よし。右よし、左よし、前よし」
夜のJR東海道線に現れたのは、「軌陸車」と呼ばれる車両です。線路と道路の両方を走行できる特殊な車両で、普段なかなか目にすることのない貴重な光景です。
<JR東海富士電気区 鈴木達徳さん>
「こちらが本日使用する、軌陸両用車になる」
Q. どんな仕組みか?
「一般の車と同じようにゴムのタイヤが付いているので、道路走行が可能。さらに、この後ろに鉄輪が付いているが、鉄輪を使用することによって線路上での軌道走行が可能となっている」
車体を回転させて線路に乗せます。この軌陸車を使って、今回は「トロリ線」と呼ばれる電線の張り替え作業を行います。電車は、空中に張られた「トロリ線」から電気を受け取って走っています。
<鈴木さん>
「こちらが本日張り替えするトロリ線になる。銅とすずの合金でできているもの」
長年の運行による摩耗や劣化が進み、約15年ぶりに新しいものに交換します。
<社会部 大西晴季記者>
「午前0時前です。まもなく最終列車がやってきます。それに合わせ、工事の準備が進められています」
この日、工事するのは、由比駅と興津駅の間の上り線、500メートルほどの区間です。日付が変わり、いよいよ、作業開始です。まずは、上り線の電気を止めます。
ここからは、一気に作業が進みます。古いトロリ線を取り外し、新しい線を丁寧に架けていきます。普段は、高圧の電気が流れている電線を扱う、とても繊細な作業です。
<大西記者>
「午前1時すぎです。いま、下りの貨物列車が通過する中、作業員たちは、通過する列車の横で作業を続けます」
作業時間は、上りの最終電車が通過してから次の貨物列車が来るまでのわずか2時間半。この間に、すべてを終えなければなりません。
取り外したトロリ線を見ると確かに、すり減っているのが分かります。交換を怠り、万が一、トロリ線が切れれば、電車の長時間の運休につながる恐れがあり、定期的な交換が必要不可欠です。
工事を担うのは、長年にわたり鉄道インフラを支えてきた専門の施工会社。熟練の技術とチームワークで、安全を守っています。
作業開始から約1時間半。軌陸車が線路を離れ、現場での作業は終了です。作業員たちは、一番列車が無事に通過するのを見届け、ほっとした表情を見せました。
<新生テクノス 小林康人さん>
「作業がいつもより順調に進んで予定通り進んだことによって作業員のけがもなく、初列車が無事通過してくれてほっとしている」
<宗和電設工業 飯田大歩さん>
「自分の子どもたちもJRを普段使っているので、設備の故障とか自分たちの作業に起因するような障害などを起こさないように、安全第一でやれるように心がけて、これからもやっていこうと思っている」
私たちが何気なく利用する鉄道の裏側には、「守り鉄」たちの誇りと責任感、そして、確かな技術が息づいています。
「あしたを“ちょっと”幸せに ヒントはきょうのニュースから」をコンセプトに、静岡県内でその日起きた出来事を詳しく、わかりやすく、そして、丁寧にお伝えするニュース番組です。月〜金18:15OA
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