2025年7月24日
トロライターズ

​<社会人野球・都市対抗大会> ヤマハ、初戦はホンダ熊本 10年連続出場の矢幡、2年連続ベストナイン網谷が予選を総括 苦しんだ経験、本大会で生かす

社会人野球の都市対抗大会出場チームが出そろい7月19日、組み合わせ抽選会が行われた。東海地区第5代表として7年連続46度目の出場を決めたヤマハ(浜松市)は大会第5日の9月1日、第3試合でホンダ熊本(大津町)と対戦する。

ここ数年、危なげなく第3代表以上を確保してきたヤマハにとって、今年の予選は久しぶりに苦しんだ。第1代表トーナメント準決勝でトヨタ自動車(豊田市)に九回2死からの逆転負けを喫すると、第2、第4代表決定戦で西濃運輸(大垣市)、三菱自動車岡崎(岡崎市)に連敗し追い詰められた。

昨年、10年連続本大会出場の表彰を受けた矢幡勇人外野手(35)と、2年連続ベストナインを受賞した網谷圭将外野手(27)が経験を本大会に生かすべく、予選を総括した。

矢幡「ベテランらしくない」

今季からコーチ兼任の矢幡選手は予選で〝起爆剤〟の役目を果たした。
第2代表1回戦の王子戦で1点を追う七回に代打で逆転の2ランを放ち、東邦ガスとの第5代表決定戦では1番DHで先発出場し3安打3打点を挙げた。

「ベテランて好球必打のイメージがあるけれど、自分はベテランらしくないというか、どんどん振るタイプ。全部振ろうと思って打席に立ちました」

昨季限りでベテラン勢が一斉に退き、ヤマハで予選敗退を知る選手は少なくなった。
3度の予選敗退を経験した矢幡選手は「連敗の感覚」「空気」を覚えている。

連敗の空気、打開したのは

「連敗し、チャンスで打てない状況が続くと、スタメンは結果を出さなきゃと追い込まれ、普段なら思い切り行けるのに、ボールを見ちゃうんです。ここで振っていいのかなと。
ああいう空気感で中途半端なスイングをすると、もともと『どうにかしなきゃいけない』という空気がさらに『どうにかしなきゃ』となっちゃう。
あの空気を打開するには、結果を出すというよりスイングをしっかりすること。一番年上の選手が思いきり振っているんだから、振ればいいんだよというのを示したかった」

コーチ兼任ならではの考察も

王子戦での起死回生の2ランは、そうした思い切りの良さに加えて、コーチ兼任のベテランらしい考察もあった。「相手投手の特徴を見て、右バッターが引っ張ってのヒットが多かったんです。だから引っ張りにいって、外の甘めの球に当てた。外を引っ張りにいけた結果です」。逆方向への一発が生まれた理由を明かした。

肩の力が抜けて…

コーチとしては主に走塁を担当し、練習メニューを任されている。自身の練習量は昨年までとあまり変わらないが、試合の出場機会が少なくなった。
「これまでは試合に出続けて、調子を維持しなきゃいけないから、調子が悪くなると振り込んで、体に負担がかかって、けがにつながっていた。今年はやりたいこと(準備)をやれて、結果に結びついた。代打出場が増え、1打席勝負なので、多少ボール球でも強く打てるように、練習から意識していました」
肩の力が抜けたベテランは、本大会でも心強い存在となりそうだ。

網谷「しんどかった」

「しんどかったですね。今まで、あそこまで苦しんだことはなかったです」
主砲の網谷選手は予選7試合で打率2割6分7厘という数字以上に苦しんだ。

不調には必ず理由がある

「人には調子が悪い、状態が悪いと言われるけれど、自分としてはそういう風に漠然とした解釈にしたくないんです。何事にも必ず理由がある。技術、メンタル、フィジカル(心技体)どこかが整っていないから結果が出ない。不思議と結果が出ないということはないんです」。予選期間中、そこを突き詰め続けた。

まず思い当たったのは技術的な要因だった。「今年に入ってから、構えの位置が低過ぎていたんです。脱力しようとして。(打ちにいく)トップをつくる時、動かす距離が開いてしまってブレが生じていた。そのブレが積もり積もって癖になってしまい、気づいた時には一日二日で直せるような状態じゃなくて、分かっていても修正しきれなかった」

連日打ち込み、睡眠3時間

修正するために、予選を戦いながら、連日400~500球を打ち込んだ。布団に入ってもなかなか寝付けなかったという。
「ポジティブな思考なんですが、あしたはああしてみよう、こうしてみようと考えてしまって。睡眠3時間ぐらいでしたね。家にバットを持ち帰ってました」

ようやく「これか」という感覚を取り戻したのが三菱自動車岡崎との第4代表決定戦、最後の打席だった。左中間のフェンスまであとひと伸び足りなかったが大きな当たりだった。そして最後の東邦ガスとの第5代表決定戦、3打席目で会心の一発が出た。「うれしかったですね。諦めなくて良かった」

JABA大会「調整ではなく挑戦」

予選を通じて、「きれいなヒットを求め過ぎていたかもしれない」という反省がある。「本来はもっと泥くさくいって、ボテボテのサードゴロがセーフになるくらいのがめつさがあってもいい。もっとアグレッシブにやっていこうかなと思います」

感覚をつかんだと同時に予選が終わってしまったため、本大会までの実戦で継続を心がける。
8月6日から開催のJABA北海道大会は、ヤマハは既に日本選手権出場権を獲得しているため勝負にこだわる必要はないのだが、網谷選手は「調整ではなく、あくまでも挑戦」と1試合1打席に集中して臨む。
(編集局ニュースセンター・結城啓子)

【取材こぼれ話】
7月末から行われる社会人日本代表選考合宿にはヤマハから網谷選手と佐藤廉投手、西村進之介外野手が参加します。網谷選手は会場が岡崎レッドダイヤモンドスタジアムと知り、「今年はもう(日本選手権の予選に出場しないので)行かなくていいと思ってたのに」と一言。勝っても負けても、予選が行われる球場では「独特の感情になる」そうです。

静岡新聞SBS有志による、”完全個人発信型コンテンツ”。既存の新聞・テレビ・ラジオでは報道しないネタから、偏愛する◯◯の話まで、ノンジャンルで取り上げます。読んでおくと、いつか何かの役に立つ……かも、しれません。お暇つぶしにどうぞ!

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