2025年8月26日
河治良幸

サッカージャーナリスト河治良幸

"静岡県勢"の選出は?9月アメリカ遠征の”森保ジャパン”メンバー招集を読む


【サッカージャーナリスト・河治良幸】
9月にアメリカ遠征を行い、メキシコ、アメリカと対戦する日本代表。森保一監督を支える名波浩コーチが「この2カ国との対戦というのは、ものすごい財産になる。現状の物差しが分かるし、(W杯の)開催エリアでやれる」と語るように、北中米W杯の開催国とアウエー、もしくはそれに近い環境でできるというのは貴重だ。

10月、11月もそれぞれ強豪国とのマッチメークが期待できるが、どちらも日本での親善試合となるので、位置付けは大きく変わってくる。この9月の2試合で、当落戦場から大きくアピールに成功する選手も出てくるはず。ただ、新シーズンが開幕した欧州で戦う”森保ジャパン”の主力メンバーや有力候補に怪我人が続出しており、できるだけベストなメンバーを組みたい森保監督にとっても痛手だ。
本来ディデンスラインの主力である冨安健洋(無所属)と元磐田の伊藤洋輝(バイエルン)は戦線復帰できておらず、今回も招集は見送られるだろう。川崎フロンターレから約10億円の移籍金でプレミアリーグの強豪に飛躍した高井幸大(トッテナム)もプレシーズンの怪我で、開幕に間に合わなかった。

それに加えて、ベルギーからドイツ1部にステップアップを果たした町田浩樹(ホッフェンハイム)も、ブンデスリーガの開幕戦で膝を負傷してしまい、長期離脱が確実となった。仮にふくらはぎに問題のある板倉滉(アヤックス)も招集回避となれば、センターバックは新天地となるオランダの名門で開幕スタメンを勝ち取った渡辺剛(フェイエノールト)が軸になりそうだ。
一方で東京ヴェルディから欧州移籍した綱島悠斗(アントワープ)をはじめ、荒木隼人(サンフレッチェ広島)や安藤智哉(アビスパ福岡)など、7月のE-1選手権で日本を優勝に導いたメンバーにもチャンスが広がったと言える。一方で、アキレス腱の怪我による長期離脱から、ようやく回復してきた谷口彰悟(シント=トロイデン)が代表復帰するのか注目される。静岡市出身の関根大輝(スタッド・ランス)も引き続き招集される期待はあるが、所属クラブがフランス2部に降格してしまったことを森保監督がどう見るか難しいところだ。ただ、今回再びチャンスを得て、圧倒的な存在感を示すことができれば問題はない。

ボランチも最終予選の主力メンバーだった田中碧(リーズ)と守田英正(スポルティング)が相次いで、所属クラブのリーグ戦で負傷交代を強いられており、軽傷でない場合は招集を見送らざるを得ない。キャプテンの遠藤航(リバプール)、6月の活動で代表復帰を果たした佐野海舟(マインツ)は健在で、ベルギーのシント=トロイデンからドイツ1部にステップアップした藤田譲瑠チマ(ザンクト・パウリ)も主力定着を狙える立場にあるが、この競争に誰が食い込んでくるのか。

静岡学園出身の旗手怜央(セルティック)はボランチとシャドーの2ポジションで、さらに価値を上げる格好の機会になりうる。本来なら、ここの競争にE-1選手権メンバーである宇野禅斗(清水エスパルス)も加わるはずだが、帰国初戦となった7月20日の横浜FC戦で負傷交代してしまい、そこからピッチに戻れていない。非常に残念だが、まずは清水での完全復活と次回以降のアピールに期待したい。
ウイングバックは堂安律(フランクフルト)と三笘薫(ブライトン)の招集は順当で、古巣復帰の伊東純也(ゲンク)も引き続き選ばれると見る。その一方で、移籍問題により公式戦の欠場が続く中村敬斗(スタッド・ランス)は招集が見送られそう。また6月シリーズで招集された、JFAアカデミー福島出身の三戸舜介(スパルタ)が、オランダリーグで膝を負傷。長期離脱となれば、今回のアメリカ遠征はもちろん、年内の招集にも危険信号が点っている。
最終予選のラストとなったインドネシア戦で得点を決めるなど、評価が急上昇中の森下龍矢(レギア・ワルシャワ)もかなり有力だが、チャンピオンシップ(イングランドの2部に相当)のブラックバーン移籍が決定的となり、すでにポーランドを離れたと伝えられる。これが代表選考にどう影響するかは不明だ。

2シャドーは比較的、順調に欧州のリーグ開幕を迎えた選手が多く、怪我人続出のセンターバックやボランチに比べると、最終予選のメンバーから、あまり大きな入れ替えは無いかもしれない。ただ、プレミアリーグ開幕前のコミュニティ・シールドで負傷した鎌田大地(クリスタル・パレス)はようやくチーム練習に復帰した段階で、森保監督も大事をとって選考から外す可能性もある。その中で、デンマークからドイツ1部に飛躍した元清水の鈴木唯人(フライブルク)は強豪国を相手に真価を示すチャンスだ。

1トップは上田綺世(フェイエノールト)、小川航基(NEC)、町野修斗(ボルシアMG)らが本大会に向けて、激しいポジション争いを繰り広げていくと見られる。大きなサプライズがあるとすれば、ベルギーでハイスケールなゴールを連発している後藤啓介(シント=トロイデン)だが、9月末から10月にかけて、チリで開幕するU-20W杯のメンバー入りも十分にありそうだ。

タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。世界中を飛び回り、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。

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