
「地域の救命率を上げていけたら」医師たちが病院から現場に向かうドクターカーの強み 試行錯誤続ける藤枝市立総合病院=静岡

9月9日は「救急の日」です。静岡県藤枝市の病院では医師たちを乗せて現場に向かうドクターカーが活躍しています。地域の人たちの命を守る最前線を取材しました。
「60代男性、藤枝1丁目」
藤枝市立総合病院救命救急センターです。この病院では、医師と看護師が乗って現場に向かうラピッド・レスポンスカー、通称・ドクターカーを出動させています。
救急要請から出動までは約2分。この日は交通事故の現場に向かいました。医師と看護師が消防の救急隊と合流します。
ドクターカーの強みは患者が病院に到着する前から治療ができることです。
<藤枝市立総合病院 救急外来急性・重症患者看護専門看護師 増田喜昭さん>
「これはラピッドレスポンスカーにのっています。呼吸を助けてあげる機械、病院の前の診療で使えるような薬が入っています。医師の指示のもとに、医師もしくは看護師が使うことが出来る薬です」
現場の医師が患者の現状を病院にいち早く伝えられることもドクターカーのメリットです。
「60代の出動事案が、ECPR適用の可能性があるので」
この日、ドクターカーは藤枝市で胸の痛みを訴えて倒れた男性のもとに向かいました。病院では、現場の医師からの連絡をもとに病院では体制を整えます。
患者は心肺停止の状態で病院に運ばれました。
ドクターカーで出動した医師からの報告を受け、通常なら準備に時間がかかる特別な処置を余裕をもって展開し、患者は一命を取り留めました。
<藤枝市立総合病院救急科 鈴木秀聖医師>
「救急隊からの連絡を受けるときって、また聞きのまた聞きになって、話が合っているのか、合っていないのかわからないことが往々にしてある。それが自分の目で見られるので『こういう状況です』と正確に病院で待つスタッフに伝えられるというのはドクターカーの強み」
ドクターカーを導入して4年。日々、試行錯誤を続けています。現場に向かうスタッフがつけているカメラの映像を見ながら反省点を共有します。
<鈴木秀聖医師>
「この道具が乗っていれば良かった、薬があったらやれたことがある、そういう反省を繰り返して、症例ごとに話し合って、ちょっとずつでもよくなるよう目指しています」
静岡県内でドクターカーを導入しているのは6施設にとどまっています。運用が広がっていない背景には医師不足や費用の面など多くの問題があります。
<藤枝市立総合病院 救命救急センター 三木靖雄所長>
「走らせるのはいいけど、市民の人にとっては迷惑なこともある」
救急車と見た目が違う車がサイレンをならして緊急走行することに慣れていない人が多いことも課題のひとつです。
<藤枝市立総合病院 鈴木貴也救急救命士>
「地域の住民のために、早期に医師看護師を現場に送り届けるというシステムをやっているところが少ないので、モデルケースとなるように地域の救命率を上げていけたら」
<鈴木秀聖医師>
「ドクターカーに乗っていると患者さんの自宅に伺うこともあるので、その人がどういう生活をしていたのか、元気になった後家に帰っても大丈夫なのかも見れるので、命を救いたい、人生を救いたい」
1人でも多くの命を救う。強い思いを持った医師たちを乗せてドクターカーは今日も現場に向かいます。
藤枝市立総合病院では運用を始めてから4年間で約1200回ドクターカーを出動させているということです。
「あしたを“ちょっと”幸せに ヒントはきょうのニュースから」をコンセプトに、静岡県内でその日起きた出来事を詳しく、わかりやすく、そして、丁寧にお伝えするニュース番組です。月〜金18:15OA
あなたにおすすめの記事
「1人1人に届けたい」“浪曲”を広めるため試行錯誤 奮闘する男性に密着 本職は「郵便配達」一通一通手紙を配達するように=静岡
【藤津亮太さんの講座「アニメ映画を読む」「映像作品としての『機動戦士ガンダム』」】 富野由悠季監督の演出技法を解説。第1話は1970年代後半に積み重ねた試行錯誤の「集大成」
#おでかけ#エンタメ#本・書店#静岡市#静岡市葵区#藤枝市静岡県東部に小児専門外来が新たに開設へ「県立こども病院」から医師を派遣 清水町の「静岡医療センター」へ
【医師の偏在】「地域」「診療科」の2つで偏在。静岡県は「医師少数県」で特に小児科は深刻。若手医師の美容医療への流出も課題だ
#暮らし一度始めたらやめられない “根性論”で尾を引く感染対策 コロナ禍も一律に面会制限せずマスク求めず…独自の決断重ねた市立病院理事長が人類学者と5年の教訓語る