2025年9月13日

【富士山静岡交響楽団の「第133 回定期演奏会」静岡公演】シューベルトの難曲で観客を魅了。「巨匠がやるプログラム」を堂々やり切った

終演後の客席に響く「ブラボー」の熱量が印象に残った。約62分という演奏時間の長さを全く感じさせない、起伏と仕掛けに富んだ「交響曲第8番ハ長調『ザ・グレイト』」。「どうだ」と言わんばかりの歯切れよく、華々しく、簡単な言葉を使えば「カッコいい」フィナーレは、多くの人に声を上げさせるだけの力がみなぎっていた。
公演前のトークでの首席指揮者高関健さんの話によると、シューベルトの交響曲はベートーベン以上に音楽家の資質を問われるそうだ。ベートーベンのような奇抜な発想が少なく、どちらかといえば簡素。その分、演奏者個々の音楽性、緻密さが問われる。第4番と第8番を並べるプログラムは「巨匠がやるプログラム」という高関さんは、公演前トークで冗談交じりに「逃げて帰りたいぐらい」と心情を吐露した。
だが、それから2時間半後、観客席の誰もがそのコメントは「謙遜」だったと知った。富士山静岡交響楽団は二つの難曲を明快に聴かせた。押し引き自在の講談師、あるいはサッカーにおける空間とスピードを完璧に制御したドリブラーに例えたくなった。難しい顔をせずに観客を魅惑するマジシャンのような演奏だった。

特に第8番は、印象的な旋律を切れ目なくつなげる手際の良さに驚かされた。ホルン2本が朗々と吹き上げた主題が、少しずつ姿を変えていく第1楽章。オーボエとクラリネットのリレーが耳にこびりつく第2楽章。地響きを連想する激しい弦楽器の音で幕が開く第3楽章。そして、いったい主題がいくつあるのかと思うほど美メロを連打する第4楽章。
花が開き、種が落ち、芽を吹き、また花が咲く。命の循環が自然の摂理の3倍速で行われている。そんな風景を連想した。
(は)
静岡新聞の論説委員が、静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。
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