2026年1月28日

【静岡市歴史博物館の「徳川御三卿 田安徳川家」展】田安徳川家第3代斉匡の画力に驚愕。鳥たちの息づかいが聞こえるようだ。
(文・写真/論説委員・橋爪充)

18世紀、江戸幕府第8代将軍徳川吉宗と第9代将軍家重によって成立した「御三卿」は、江戸城の城門の名に由来する一橋徳川家、清水徳川家、田安徳川家を指す。徳川宗家の身内として、家系をつなぐ役割を期待されたという。田安徳川家第7代家達(いえさと)は、第15代将軍慶喜の後を継いで徳川宗家となり、明治維新後に静岡藩主となった。
今回の企画展は、2024年に田安徳川家に伝わる資料が同館に寄託されたことを記念したもの。当主によって管理された事物は、これまでほとんど世に出ることはなかったという。
吉宗の次男宗武から始まる田安徳川家の歩みをつづる文書や、官位を与える口宣案なども興味深いが、文化芸術を重んじたという歴代当主の書や絵画に引かれる。22歳で亡くなった第2代治察(はるあき)の風がそよぐような流麗な筆致の漢詩句に心洗われ、第3代斉匡(なりまさ)が折帖にしたためた和歌33首には奔放と抑制のバランスを感じた。
何より驚いたのは斉匡の「花鳥図」である。クジャクやキジと牡丹を取り合わせた三幅対。「三玄斎」と花押が入っているが、パッと見たときにこれが武士の手によるものとは思わないだろう。赤や黄色、薄紫の花弁と鳥たちの羽根のグリーン、白の取り合わせが見事。これは描き手のセンスと緻密な経験が反映されているのだろう。これこそ「色彩感覚」だろうか。鳥たちの息づかいが聞こえるようだ。
常設展示スペースでは、昨年の夏に山梨県内で発見された「駿府御城内絵図」を、家康の刀剣「以南蛮鉄於駿州越前康継」とともに2月15日まで公開している。天守は本丸の北西にあり、周囲に四つの櫓(やぐら)があって、渡櫓でつないでいるのがはっきり分かる。三の丸にいくつかある屋敷にも名前が入っていて、想像をかき立てられる。
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■静岡市歴史博物館「徳川御三卿 田安徳川家~静岡藩主家達の生家~」
住所:静岡市葵区追手町4-16
開館:午前9時~午後6時
休館日:2月9日(月)、24日(火)、3月2日(月)
観覧料(当日、基本展示含む):一般750円、静岡市居住の70歳以上・大学生・高校生520円、小中学生180円、 静岡市居住の小中学生・未就学児無料
会期:3月8日(日)まで
静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。










