2026年3月13日
SBSテレビ LIVEしずおか

「帰さなければ良かった」津波で園児9人失った園長の葛藤と決意 初めて地元で講演 家族の前で語った思いと“正解のない”備え

シリーズ「東日本大震災15年の物語」。震災から15年の節目となった2026年3月11日、津波で9人の園児を失った岩手県のこども園の園長を取材しました。

これまで、園のあの日の教訓をさまざまな場所で発信してきましたが、節目の3月11日、初めて地元での講演に臨みました。

家族も見守る中、子どもの命と向き合い続ける葛藤を語りました。

迫る津波、斜面をよじ登り守った

元気いっぱいに郷土芸能を披露する、岩手県大槌町にある「おおつちこども園」の園児たち。園長の八木澤弓美子さんです。

子どもたちの元気な姿を見てどうかと聞かれると、「毎日園に来るのが楽しみ。子どもたちの姿を見ると迷いがなくなる」と優しい眼差しで答えました。

海から1キロほどの場所にある「おおつちこども園」。あの日この園も、激しい揺れに襲われました。

職員たちは園児を連れ、園が一時避難場所に定めていたコンビニエンスストアへと急ぎました。

<八木澤弓美子 園長>
「水門の方を見たら、もわっと砂煙のようなものが立ち込めていた。異様だった本当に」

さらに高い場所を目指して走っていると、迫り来る津波を目撃。とっさに道路沿いの斜面をよじのぼり、命を守りました。

「一緒にいれば良かった」15年消えない後悔

一方で、避難の途中で迎えに来た保護者に引き渡した園児のうち、9人が津波の犠牲になりました。

<八木澤弓美子 園長>
Q. 15年経っても、後悔は消えない?
「全然消えない。一緒にいれば良かった。帰さなければ良かった。今だったら絶対助けられるのにと思う」

"同じ思いをしてほしくないー"

震災後、静岡県などさまざまな地域に出向き、あの日の園での出来事を教訓として発信してきましたが、地元での講演だけは避けてきました。津波で家族を失った人も多くいたからです。

孫を抱くことさえためらった日々 家族に打ち明ける思い

<八木澤弓美子園長>
「私が家族が無事だったので、おこがましいというか、子どもの命を守ると言って講演するのが申し訳ないと思っていた」

そんな葛藤がありながらも、3月11日に八木澤さんが講演のため訪れたのは近くの小学校でした。

<八木澤弓美子園長>
「おおつちこども園から来ました。凜乃・敬斗のおばあちゃんの八木澤弓美子です。よろしくお願いします」

この学校には自身の孫も通っていて、15年の節目に、家族の前で、改めて自らの胸のうちを伝えたいと考えたのです。この15年、苦しいこともたくさんありました。

<八木澤弓美子園長>
「初めて凜乃(孫)を抱っこした時に、かわいいんだけど、亡くなった子どもたちが9人もいたから、凜乃のことを抱っこするのが申し訳ないなとか、かわいいと思っちゃいけないなという気持ちになって、だっこできない時期がありました」

それでも、子どもの命を守る責任と向き合い続ける八木澤さんの姿を家族は見届けてきました。

<八木澤園長の娘 詩乃さん>
「(母と)2人で折れながら、たまに励まし合いながら、乗り越えてきてはいるけど、先頭に立ってやっている姿は、母ながらかっこいいと思う」

<八木澤園長の孫 敬斗さん>
「一緒に住んでいるけど、こんな経験があったんだなって初めて知ったから、話が印象的だった」

<八木澤園長の孫 凜乃さん>
「津波が来たら海の近くに絶対行かないことがわかった」

「正解をつくらない」幼い命を守り抜く決意

八木澤さんには、変わらぬ覚悟があります。

<八木澤弓美子 園長>
「2度とああいう思いはしたくない。とにかく目の前にいる子どもたちの命を守る。守るためにどうすればいいか先生たちと一緒に考えながら、本当にこの15年走ってきた。避難行動をとり続けることと、その都度職員と一緒に『これでいい』という正解をつくらないことに尽きると思う」

これからも、災害から幼い命を守るための方法を模索します。


子どもの命と向き合っているからこその葛藤、後悔。それでも15年という月日が少しずつ八木澤さんの矢印を前に向けている感じがありました。


今もぬぐえぬ公開は抱えています。ただ八木澤さんは笑顔なんですよね。本当に「子どものことを人生の一部」と話すくらい、大好きなんです。そんな八木澤さんの訴える「子どもの命を大人が守る大切さ」を改めて噛みしめたいと思います。

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