2024年10月30日

【浜松市美術館の「小杉惣市コレクション 名品でたどる東洋陶磁-小杉惣市の眼-」展】 中国・新石器時代の壺に高度なデザイン性を見た

浜松市出身で日本楽器製造(現ヤマハ)に勤め、川上喜市社長(1885~1964年)の影響で古美術を収集した小杉惣市(1915~1984)のコレクションは、浜松市美術館の収蔵品の中核の一つとされる。仏像、硯、書画など東洋美術の歴史を総覧する「小杉コレクション」から、今回は中国、朝鮮の陶磁器を中心に展示した。

1階が中国、2階が朝鮮を中心とした展示で、ほぼ年代順に並んでいる。まず最初に目に入るのが新石器時代(紀元前3300年頃~紀元前2100年頃)の「彩陶双耳壺(さいとうそうじこ)である。一部に手びねりの跡が見られるが、全体に高度なデザイン性とそれを実現させる技術がうかがえ、驚嘆する。上部はふくよかに、下部は少しソリッドに。これが当時の美意識なのだろう。

中国ゾーンは各時代をまんべんなくたどり、明代にまで行き着く。殷時代から北魏時代(6世紀)までの素焼きの土器「灰陶(かいとう)」が、貴族の身なりや生活を細かく伝えていてたいへん興味深い。

南宋時代(12世紀)の「青白磁唐子唐草文瓶(せいはくじからこからくさもんへい)」の、しっとりした薄いグリーンと優しく彫り込まれた文様表現からは、作り手の丁寧な性格が伝わってくる。(は)
<DATA>
■浜松市美術館
住所:浜松市中央区松城町100-1
開館:午前9時半~午後5時(月曜休館、祝日の場合は翌日休館)
企画展料金(当日):大人310円、高校生150円、中学生以下と70歳以上無料
会期:12月15日まで
静岡新聞の論説委員が、静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。
おでかけ
エンタメ
浜松市
あなたにおすすめの記事
【浜松市美術館の「躍動するアジア陶磁」展】 東南アジア、中国陶磁器が集合。ウサギ、象、テナガエビ…。動物デザインに託した思いとは
#おでかけ#エンタメ#浜松市#浜松市中央区【細見美術館のコレクション展と堀文子展】静岡新聞教育文化部長のイチオシ作品を紹介!モチーフから感じ取れるものとは?
#エンタメ#おでかけ#県内アートさんぽ#静岡市#三島市【静岡市美術館「西洋絵画の400年」展見どころ】涼しい美術館で西洋絵画の歴史を学ぶ!モネ、ルノワール、シャガール…。画家は何を見て、何を描いてきたか
#エンタメ#おでかけ#静岡市【静岡県立美術館の「無言館と、かつてありし信濃デッサン館―窪島誠一郎の眼」展】 夭逝の画家、戦没画学生の作品が訴えるもの。そして主題はもう一つ
#おでかけ#エンタメ#静岡市【浜松市美術館の「不思議な光沢と色感の世界」展】 美術館の「小部屋」にガラス絵が集合。小出楢重、長谷川利行の「いつもと違う」色彩
#おでかけ#エンタメ#浜松市#静岡市#静岡市駿河区#浜松市中央区