2025年4月21日

【浜松市美術館の「不思議な光沢と色感の世界」展】 美術館の「小部屋」にガラス絵が集合。小出楢重、長谷川利行の「いつもと違う」色彩

浜松市美術館の企画展に行った時はいつも、1階奥の小展示室にも足を運ぶ。たいてい、小規模なコレクション展を実施している。県立美術館の「展示室2」を一回り小さくしたぐらいの、小部屋のようなスペースだ。テーマは企画展に関連していたりいなかったりだが、学芸員のコレクションへのまなざしと編集能力がダイレクトに伝わる。
過去の展覧会で印象的なのは、2021年の「静岡県立美術館木下直之館長の超私的企画」と銘打った「浜松の人・浜松を歩く」だ。同時期に館内で行われていた県立美術館の名品展と関連させたもので、浜松市出身の木下館長が自身と浜松の関係を地元の書店「谷島屋」発行の文化情報紙などで振り返る内容だった。自作の浜松市の大地図も掲示していたと記憶している。木下館長の型破りな一面が出た、痛快な企画だった。

特別展「躍動するアジア陶磁ー町田市立博物館所蔵の名品からー」と同時開催している館蔵展「不思議な光沢と色感の世界」も興味深い作品がそろっている。

深く濃い色の人物画や静物画の印象が強い小出だが、ガラス絵の「市街風景」(1924年)「裸女」(1928年)は色彩豊かで筆致も緩やか。「日本のゴッホ」と呼ばれる長谷川利行の展示2作は毒々しさすら漂う赤色が強烈な印象を残す。芹沢銈介、野見山暁治といったガラス絵とは無縁に感じられる「巨匠」の作品も、リラックスした表情が見えるようで興味深い。
7月に始まる「大ガラス絵展ー波濤をこえ、ガラスにきらめくファンタジアー」の露払いを期待されているのだろう。だが今回の作品展それ自体も、色鮮やかな小品の数々が「小部屋」にギュッと詰め込まれていて見応えがある。
(は)
<DATA>
■浜松市美術館「不思議な光沢と色感の世界ー現代ガラス絵・小出楢重を中心にー」
住所:浜松市中央区松城町100-1
開館:午前9時半~午後5時
休館日:毎週月曜 、5月7日(水)。5月5日(月・祝)は開館
観覧料(当日):無料(同時開催の「躍動するアジア陶磁」展の入場料が必要)
会期:6月22日(日)まで
静岡新聞の論説委員が、静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。
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