2025年2月12日
SBSラジオ ゴゴボラケ

【ひかり県内停車増】リニア品川ー名古屋間開業後に倍増の計画。経済的なメリットは見えたけれど、着工の前にはやるべきことが…!

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「ひかり県内停車増」。先生役は静岡新聞の橋本和之論説委員長です。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2025年2月4日放送)

(橋本)JR東海の丹羽俊介社長が鈴木康友知事と面会し、リニア中央新幹線の品川名古屋間開業後、東海道新幹線静岡浜松両駅のひかり停車回数を現在のおよそ1時間1本から、2本に増やす方針を表明しました。

(山田)先日の大きな静岡トピックスですね。ひかりの停車が増えるということで、新幹線をよく使う僕からしたら、嬉しいニュースだなと思ったんですけども。

(橋本)そうですね。今は朝夕のラッシュ時を除くと、上り下りとも1時間に1本なので、少しでも早く東京へ行きたい方、それから遠方に向かう旅行者などは、停車が倍になるということで、だいぶ便利になったなと感じるかもしれません。

鈴木知事はリニア開業に伴う県内の経済的なメリットなどを具体的に示してほしいとJRに要請していたので、JR側がこれに応えたということになります。

(山田)鈴木康友知事になって、結構スピーディーに進んでいってますね。

(橋本)以前から、リニアが開通するとのぞみの利用者がそちらにシフトするので、それが新幹線のダイヤに影響してのぞみが停まらない静岡県内でもその利便性を向上させることができるということは言われていましたが、具体的な数字などをJRが示したことはありませんでした。こういう具体的な数字になって表れると、受け取る側もイメージしやすいかと。

(山田)確かにイメージしやすいです。

(橋本)リニアは一応今のところ東京から名古屋までが開通して、その後、名古屋大阪間ということになっています。名古屋まで開通した後に、ということですね。

(山田)リニア名古屋開業時にひかりの県内停車本数を増やすよということなんですね。このほかにも、お二人が会談で話し合ったことはあったんですか。

(橋本)丹羽社長はリニアが大阪まで全線開通したときに、静岡、浜松両駅のひかり停車の回数をさらに増やし、県内の全ての新幹線駅も停車回数を増やしますよというような考えを示したということです。

経済的なメリットの話題と、環境問題は別!


(山田)懸念されているリニア工事ですが、これはどう影響してきますかね。

(橋本)そこが気になると思うんですが、静岡工区の本格的な工事は、静岡県が着工を認めてないのでまだ始まっていないという状況です。そのためにJRは、当初予定していた2027年の開業は不可能だということで、開業を延期しました。それがいつかという次の目標は、まだはっきりしてません。

JRとしては一刻も早く県の許可を取って着工したいというところだと思いますが、丹羽社長も鈴木知事も今回のひかり停車回数の増加、つまり経済的な静岡県のメリットの話と、静岡工区の着工を認めるか認めないの議論の原因になっている南アルプスと大井川の環境問題というのは、別だと言っています。

(山田)別問題。でも、別問題とはいえ、これがないとリニアは通らないんじゃないのかなと思ったりするんですけども。ちょっとその辺りをわかりやすく説明してください。

(橋本)静岡県が着工を認めていない理由を思い出していただきたいんですが、大井川の最上流部の下を通過するリニアのトンネル工事に伴って、川の水資源に影響する可能性があるということですね。

具体的に言うと、毎秒2トン流量が減る可能性があるということを2013年にJRが明らかにしたことが発端でした。そこから県とJRの間で、工事の影響、環境への負荷を小さくするための対策について話し合いが行われてきたんですが、なかなか折り合わないという状況が続き、ついには国が間に入って専門家による議論も行われました。

国の専門家による議論というのは一定の結論が出て報告書がまとめられましたが、それで全て完了ということではなく、それを引き継いで県とJRの協議が現在も続いているという状況です。静岡県は昨年2月に、水資源と生物多様性、それからトンネルを掘った時に出るトンネル発生土の3分野、計28項目の対話項目というものをまとめて、JR側との協議に臨んでます。

(山田)28の対話項目。こちらにはどんなことが含まれてるんですか?

(橋本)ホームページなどで公開されているので、誰でも見ることができます。具体的な中身は例えば、県内でのトンネル工事で県外に流れ出す水の全量をどう戻すのかという議論がありますけれども、その対応策として田代ダム取水抑制案っていうのが出てます。その案について、実際に抑制策の運用サイクルやオペレーション操作をどういうふうにしていくかの詳細というのが最初の項目にあったり、あるいは、生物多様性については、沢の上流部の水生生物等の生息状況の調査やその結果を踏まえた重要種の確定と指標種の選定というのが入ってたりするんですね。

耳で聞いてもすぐには理解できないと思いますが、今挙げたような項目は簡単に結論が出そうなものじゃないな、ということはお分かりいただけるかと。

(山田)そうですよ。聞いただけでも。

調査や対策を練るための時間が必要で、さらにそれについて専門家の意見も聞くわけで、そうしたことにすごく時間がかかるんですね。

(山田)うーむ。

(橋本)昨年2月に示した28項目の項目のうち、これまでに「協議がもう終わりましたよ」っていうのは、4項目しかないんです。

まだ17項目については協議中。残る7項目については、協議そのものが始まってないという状況です。同時に進められる項目もありますが、この協議についてはこの点をはっきりさせないと次の段階進めないというような順番にやらないといけない項目もあります。

(山田)なるほど。


(橋本)そのため、「リニアができると静岡県県民にもこんなに経済的メリットがある」ということがわかっても、「水や生物に関する協議というのは適当に終わらせて工事を始めましょう」ということにはならないわけです。  

(山田)だから先ほどおっしゃってたように「別問題だ」ということになるわけですね。

(橋本)はい。もしも、県やJRが、「メリットがあるんだから、こっちは早く進めちゃいましょう」というようなことを言い出したら、実際に水に困る可能性がある流域の皆さんや、あるいは南アルプスの環境保全のために活動している方々が、本当に怒ってしまうと思うんですね。JRや県が信用を失うことにもなりかねないということを丹羽社長も鈴木知事も分かっているので、「経済的メリットと着工は関係ありません」ということを発言しているのです。

リニア着工を早めるためには、まず十分な協議が必要


(山田)ということは、まだまだ時間がかかる話だよというところでいいんですかね?

(橋本)先ほど説明したように、新幹線停車増加は「名古屋まで開通したら」という話だったんですが、着工がいつかというのも今のところはちょっと見通せないと言えます。ただ一方で、同じ会談の中で、鈴木知事と丹羽社長は早期着工に向け、残り24項目の協議についてスピード感を持って進めることで一致したということも説明しているので、早期に着工させたいという意思が双方にあるということは間違いありません。


(山田)確かに鈴木知事になってから、めちゃくちゃスピード感がある感じはもう我々にも伝わってきますよね。

(橋本)川勝知事のときには両者の信頼関係が上手く作れず、なかなか協議にも入れない状態もありましたもんね。一番必要なのは、やっぱり地元や流域が工事のリスクと対策について十分に納得するということだと思うんですね

ですから、今回ひかりの停車増加という経済的メリットも出てきましたが、それとは別に、協議をしっかりやって、懸念を全て払拭するという姿勢が県にもJRにも必要なんだと思います。着工を早くしたいというんだったら、それが本当の一番の近道になるということですね。

(山田)今日の話を聞いて、この協議でまだまだ時間を使ってもらっていいなと思いましたし、我々の経済的メリットと、着工を進めるかっていうところは別問題だよということがわかりました。今日の勉強はこれでおしまい!

 

SBSラジオで月〜木曜日、13:00〜16:00で生放送中。「静岡生まれ・静岡育ち・静岡在住」生粋の静岡人・山田門努があなたに“新しい午後の夜明け=ゴゴボラケ”をお届けします。“今知っておくべき静岡トピックス”を学ぶコーナー「3時のドリル」は毎回午後3時から。番組公式X(旧Twitter)もチェック!

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