2025年6月30日
論説委員しずおか文化談話室

​【第11回県高校軽音楽大会】 最優秀は「激昂」の清水国際軽音楽部「ある∞に。」。巧緻なアンサンブル際立つ

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は6月29日に静岡市駿河区のグランシップで行われた「第11回静岡県高校軽音楽大会」(県高校文化連盟軽音楽専門部主催)をリポートする。(文・写真=論説委員・橋爪充)

音源審査を通過した11校の23バンドが出演した。コピー曲部門に8バンド、オリジナル曲部門に15バンドがエントリー。1バンド1曲で演奏を競った。入賞バンドは次の通り。

▽最優秀賞 清水国際軽音楽部「ある∞に。」(アルハニ)
メンバーは長尾朱音さん(ボーカル)、内田青良さん(ベース&コーラス)、森下千都さん(ドラム)、鈴木琴羽さん(キーボード)、市川舞さん(ギター)で全員が3年生。昨年末の新人大会では、一歩届かなかった最優秀を獲得した。受賞した「激昂(げっこう)」はめまぐるしく曲調が変化する「3分プログレ」と言っても差し支えないような難曲だった。長尾さんの表情豊かなボーカリゼーションとステージング、巧緻なアンサンブルが際立った。8月にさいたま市で開かれる全国大会への出場権も得た。

ドラムの個人賞も獲得した森下さんと長尾さんに、受賞の喜びを語ってもらった。

-昨年12月の県新人大会は優秀賞でした。今回はさらに一つ上、最高の評価ですね。

森下:優秀賞だった新人大会の後、県大会では絶対に(最優秀を)取りたいって言っていたんです。足りなかった部分は何か、そこをどう改善していくかっていうのを、切磋琢磨しながら話し合って。

-今回の楽曲はその中で出来上がったものなんですね。

森下:本当に長い期間をかけて作り上げました。歌詞や基礎的な部分はボーカルが作ってくれたんですけど、それぞれの楽器の子たちが、歌詞に込められた思いは何なのか、それをどうやって楽器で皆さんに伝えるかを一人一人、しっかり考えてくれた。自分たちは誰かの心に響くような演奏をしたいと思っているけれど、今回それをすることができたと感じています。

-足りていなかった部分についてどんなことを話したんですか。

森下:(演奏時の)動きですね。一体感がほしいよねって。全国(新人戦の結果を受けて県代表として3月に出場した福岡での大会)に出させていただいた時に、グランプリのバンドの一体感がすごくて。バンドで大事なものって確かに基本の技術もそうなんですけど、「バンドしてますよ」っていう一体感が同じぐらい大きいんだなっていうのがはっきり分かったんです。

-「激昂」はいつ頃できあがった曲なんでしょうか。

長尾:全国に行って、何も賞が取れなかったのが悔しくて。やけくそになりながら飛行機の中で作りました。

森下:そこから足して足して完成したんです。

-長尾さんの構想をみんなで肉付けして、という過程ですね。とても複雑な楽曲でしたね。

長尾:やりたいことをそのまま詰め込んだらこうなりました。一人一人に個性があるので、それぞれが目立てるところを作りたくて。ギターが前に出られるところ、ベースがたくさん動ける部分。それを土台にして私がやりたいことを詰め込んだらこうなりました。

-3分ぐらいの短い曲ですよね。それなのにオペラ的な場面転換がある。

長尾:技術とみんなの絆を詰め込んだものが出来上がったら、それをそのままポンと出しているんです。

-全国大会への意気込みを。今回は県の一番手として出ることになります。

森下:賞を取りたいというのはありますが、そもそも賞って「音楽が好きな人」が取れるものだと思っています。だから、賞を取りたい、間違えちゃいけないといったプレッシャーを感じることなく、演奏を楽しみたいです。

▼オリジナル曲部門優秀賞 加藤学園軽音楽部「Start Line」
「サヨナラの声」は静かな冒頭部分が一気にはじける、まさに「青春パンク」と言うべき楽曲。ボーカル渡邉雅さん(3年)の舞台全体を使ったパフォーマンスとハイテンポな演奏が客席を盛り上げた。


▼オリジナル曲部門優秀賞 伊豆中央軽音楽部「nova」
ミディアムテンポの「再星(さいせい)」は、果てしなく広がる大地を感じさせるスケールの大きさが印象的。朗々と歌い上げる鈴木陽斗さん(3年)の声がホールの空間にスーッと広がっていった。


▼コピー曲部門優秀賞 静岡中央軽音楽部「あすたりすく」
KANA-BOON「ないものねだり」を、ツインギター編成で聴かせた。各楽器のバランスの良さと望月柑七さん(2年)の伸びやかなボーカルが際だった。


▼オリジナル曲部門奨励賞 富士音楽部「Atenalaz」


▼オリジナル曲部門奨励賞 清水国際軽音楽部「不協和音」


▼オリジナル曲部門奨励賞 沼津中央軽音楽部「ほわいとCampus」(ベーシストの小畑美友さんが個人賞)


▼オリジナル曲部門奨励賞 清水国際軽音楽部「INSPIRE」(ボーカリストの望月虹湖さんが個人賞)


▼コピー曲部門奨励賞 沼津中央軽音楽部「終末少女」


▼コピー曲部門奨励賞 富士見音楽部「FJM」(ギタリストの高山隆太さんが個人賞)


▼コピー曲部門奨励賞 池新田音楽部「すしもん」

 

静岡新聞の論説委員が、静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。

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