2025年8月24日

【庭園アーカイヴ・プロジェクトの「動いている庭」上映会とトーク】フランスの庭師ジル・クレマンさんのドキュメンタリー映画。「できるだけあわせて、なるべく逆らわない」という考え方とは何か
(左から)原瑠璃彦さん、城一裕さん、マレス・エマニュエルさん、澤崎賢一さん
日本各地の日本庭園の姿を動的にアーカイブ化する活動「庭園アーカイヴ・プロジェクト(GAP)」の展示会に関係するイベントの第2弾。パリのアンドレ・シトロエン公園やケ・ブランリー美術館の庭を作ったことで知られるフランスの庭師ジル・クレマンさんを追ったドキュメンタリー映画「動いている庭」(2016年)を上映し、作品製作の関係者を招いたトークが続いた。映画は、総合地球環境学研究所(京都市)が主催した連続講演会のために、2015年冬に初来日したクレマンさんの姿を基軸に、彼のフランスの自宅庭園のロケ映像も交える。GAPのスタート地点とも言える「動いている庭」という概念が、講演会の言葉や作業風景を通じて、肌感覚で伝わった。

クレマンさんの言葉は、映画で見る限り一つ一つが実践的かつ哲学的。庭園というさまざまな生き物や無機物が織り成す空間への敬意がにじむ。「できるだけあわせて、なるべく逆らわない」。庭作りの基本的態度は、自分が庭の一員であることを自覚することから始まるようだ。
上映後のトークには、本作を監督した澤崎賢一さん(アーティスト/映像作家、 総合地球環境学研究所特任助教)、当時総合地球環境学研究所に在籍し、クレマンさん招聘を企画したマレス・エマニュエルさん(京都産業大学准教授)、GAPのメンバーでメディア・アートや音響学を専門領域とする城一裕さん(九州大学准教授)、原瑠璃彦さん(静岡大学准教授)が集った。

原さんは「ここには相当、GAPの元ネタがある」とし、著書「日本庭園をめぐる」(早川書房)でも触れている「庭=劇場」説を紹介した。建物の竣工がプロジェクトの終了となる建築家と、庭園が出来上がった時が仕事のスタート地点となる庭師を対比させる議論は、非常に刺激的。季節の変化や年月の経過による動植物の変化が庭を動かし、庭自体の変容を促す。「動いている庭」の考え方の核に触れたような気がした。
(は)
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■庭園アーカイヴ・プロジェクト「終らない庭のアーカイヴ Incomplete Niwa Archives 004:Fugetsu Four Seasons Version」
会場:静岡市葵区紺屋町11-1 浮月楼内「浮月花寮」
開館:午前10時~午後6時 ※入場無料
休館日:月、火曜日
会期:8月31日(日)まで

静岡新聞の論説委員が、静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。
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