2025年9月3日

【登呂遺跡で柴田美千里さん(藤枝市出身)の作品展示「いせきもZOO」】遺跡公園にカラフルな動物オブジェが点々。弥生時代に立ち向かう21世紀アート

登呂博物館の冷気に浸ってから遺跡側に出ると、暑さが正面から押し寄せる。9月だというのに、草木の緑は夏の盛りであるかのように濃く、まぶしい。
復元水田の向こうにおなじみの竪穴式住居が見える。だが、見慣れた風景ではない。ちょっとした違和感。手前に色鮮やかな「動物たち」が縄張りを守るかのように距離を取って置かれている。
「いせきもZOO」は柴田美千里さんの手による動物をモデルにした複数の造形物が「素材」になっているが、それらは決して主役であろうとはしていない。日常にちょっとした仕掛けを施すことで、景色の見え方をちょっとだけずらす。これは遺跡公園の敷地全体を使ったインスタレーションなのだろう。

黄色と黒のストライプで彩られたトラ、赤みが強いカバ、モノトーンのシャチとシマウマ。公園には存在しない色が、周到な計算のもとで配置されている。見る側の違和感を誘っているようだ。
弥生時代の水田跡に2020年代の意匠とコンセプトを投入している点も注目したい。水田という人間がつくり出したエコシステムは2000年の時を経て、いまなお生活の中で機能している。この古くて新しい「発明」に現代美術が立ち向かう。水田跡地を「舞台」として用いる試みは、イメージを上書きできるのか。
(は)
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■静岡市立登呂博物館「いせきのZOO~出土品にみる動物たち~」
住所:静岡市駿河区登呂5-10-5
開館:午前9時~午後4時半
休館日: 毎週月曜(祝日を除く)、祝日の翌日
観覧料(当日):一般300円 、高校生・大学生200円、小・中学生50円
会期:9月15日(月・祝)まで
※「いせきもZOO」の鑑賞は無料。15日まで。

静岡新聞の論説委員が、静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。