2024年3月20日
SBSテレビ LIVEしずおか

「袴田事件」元裁判官がカメラの前で語った“本音”「それまでの判決が間違っているはずがない」という意識【現場から、】

やり直し裁判=再審が佳境を迎えている「袴田事件」。3月で88歳になった袴田巖さんですが、再審が開かれるまでに実に40年以上の月日が費やされました。再審を認めるかどうか、決めるのは裁判官です。40年前に「袴田事件」の再審請求審に携わった裁判官がカメラの前で「裁判官の本音」を語りました。

「袴田さんが冤罪の犠牲者として事件から57年間、今もなお冤罪の苦しみの中にいます」

1966年、当時30歳だった袴田巖さんは、静岡県の旧清水市(現在の静岡市清水区)で一家4人を殺害したとして逮捕され、死刑囚としての長い日々を拘置所で送りました。

「再審開始です!」

無実を訴え続けた袴田さんの再審の道が開いたのは2023年。請求開始から40年以上が経っていました。

<袴田巖さん>
Q.今年はどんな1年にしたいですか?
「強い弱いの問題があるんだね、どうしても。浜松で強けりゃいいということだが、強い浜松ができた」

袴田さんは、死刑執行の恐怖のもとで長年にわたって拘置されていた影響で、釈放から約10年となる今も意思の疎通が難しい状態です。

1980年代に静岡地裁で袴田さんの再審請求審を決定が出る前まで担当した、元裁判官の熊田俊博さんです。

<元裁判官 熊田俊博弁護士>
「(袴田事件の)原記録を読んだ限りでは、これはちょっとなかなか、有罪とするには難しい事件だったなという感じがしました」

熊田さんだけでなく、多くの人が疑いの目を向けてきた「袴田事件」。「再審」の壁はなぜ、高いのでしょうか。

<元裁判官 熊田俊博弁護士>
「1つの確定判決が出来上がるためには1審、高裁、それから最高裁といくつもの裁判体が、その確定判決を出すために関わっているわけですよ。しかも、その裁判体を構成する裁判官も何十人といるわけですよ。それは基本的には間違ってないっていう、そういう意識ですよね」

熊田さんは、再審請求を担当する裁判官には「それまでの判決が間違っているはずがない」という意識が働きやすいといいます。

<元裁判官 熊田俊博弁護士>
「(袴田事件の)東京高裁の当時の高裁の判決を出した裁判長が非常に著名な刑事裁判官で、有罪を間違ってるよというのも言いにくいというかね、そういうこと(意識)もあったんじゃなかろうかという風に思います」

2014年、2度目の再審請求で静岡地裁は再審開始と袴田さんの釈放を決めました。この時の裁判長、村山浩昭さんです。

<元静岡地裁裁判長 村山浩昭弁護士>
「当時、上司に教わったこととして『(判決を)ブランドで見てはいけない』と教えられ、私もそう思った。誰がこの判決を書いたか?ということで、信用してはいけない。どのような有名な裁判官でも、間違う時は間違う」

「死刑判決」を下した裁判官の中には、袴田さんの有罪を疑っていた人もいました。1968年、袴田さんに死刑判決を下した静岡地裁の3人の裁判官のうちの一人、熊本典道さんです。

熊本さんは、過酷な取り調べの末の自白などに疑いの目を向け、無罪を主張しましたが、ほか2人が死刑を支持したため、やむを得ず死刑の判決文を書いたと約40年後に告白しました。

<元裁判官 熊本典道さん>
「最後の結論で『被告人を死刑にする』と裁判長が読み上げた後ね、彼の肩がガクンと落ちた。その後もう、僕は判決聞いてない。聞こえてない。頭の中入らなかった。あと、どうするかなと。そればっかり考えてた」

<元静岡地裁裁判長 村山浩昭弁護士>
「確かに(袴田事件には)色んな有名な方が関わっているんだけど、正直に言うと、確定審の判決は、異様な判決です」

裁判官は、憲法で「外部からの干渉を受けてはいけない」と定められています。それは「再審」でも変わりません。

<山口駿平記者>
再審をめぐっては制度上の問題点も指摘されています。再審については、審理を進める上でのルールが少なく、進め方は、その時の裁判官に委ねられているのが実情です。これは「再審格差」とも呼ばれています。3月、再審のルールの改正を目指す超党派の国会議員による議員連盟が発足し、ようやく国もこの問題を真剣に考え始めました。裁判、そして再審は誰のためにあるのか。「袴田事件」の歴史は、私たちに問いかけています。

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