2026年1月26日

【1/31開幕】国際的に活躍した元米報道カメラマンの眼差し。富士宮在住ビル・ライオンズ氏の写真展が静岡市・駿府博物館で開催!
ビル・ライオンズが捉えた「報道」と「伝統」の交差点
皆さんこんにちは。静岡市駿河区にある駿府博物館・副館長の杉山渉です。2026年1月31日から、一人の写真家の魂が刻まれた展覧会が開催されます。主役は、米国出身で現在は富士宮市に暮らす元報道カメラマン、ビル・ライオンズさん。本展は単なる記録の羅列ではありません。
ニューヨークの喧騒から静岡の神聖な祭事へと至る、一人の男のまなざしの変遷であり、「アナログの不完全さ」「デジタルの極限まで研ぎ澄まされた物質感」に美を見出し続ける哲学の表明です。ビルさんの展覧会の見どころを紹介します。
「Morning Fuji」©William E. Lyons
警察無線と「切り替えスイッチ」の記憶
ビルさんのキャリアの原点は、米国の大都市。大統領選の最前線を駆け抜けたAP通信時代、現場は「物理的な速度」がすべてでした。1枚の写真を電話回線で送るのに15分。限られた紙面を奪い合うため、誰よりも早く、質の高い瞬間を切り取ることに命を懸けていたのです。今でも静岡の街でサイレンを聞くと、無意識に「報道のスイッチ」が入るとビルさんは笑います。かつて警察無線を傍受し、事件の報に急ブレーキでUターンしたあの高揚感。その鋭敏な感覚こそが、彼の写真に独特の緊張感と臨場感を与えています。
「Pittsburgh Pirates」©William E. Lyons
レコードのノイズと、フィルムの粒子
一方で、ビルさんはレコードを愛するロマンチストでもあります。盤上の傷が鳴らすノイズさえも「音楽の一部」として肯定する彼は、写真においてもレコードにも通じるアナログフィルムにこだわります。さらにデジタル写真ならではの硬質でクリアな輪郭を操り、被写体を背景から鮮やかに切り出し、独特の立体感を生み出します。フィルム写真は「現像するまで結果がわからない。だからこそ、シャッターを切る前に深く考える。デジタルにはない『粒子の風合い』こそが写真に生命の鼓動を感じさせます」。データの脆さを案じ、40年以上前のネガを今も大切に保管する姿からは、形あるものへの深い愛情が伝わります。
アーミッシュ、そして静岡の空へ
ビルさんは、18世紀さながらの生活を送る「アーミッシュ」を10年撮り続けました。ある時のことです。少女は彼の撮ったアーミッシュの写真の本を見て店員に言いました。「ここには亡くなった祖父が写っている。彼を思い出す唯一の方法なの」。この言葉は、ビルさんの写真を「アート」へと昇華させました。2019年、彼は憧れの富士山が窓一面に広がる富士宮へ移住。現在は、県内の祭事を精力的に撮影しています。場所取りのために数時間前から現地入りし、隣り合った地元のカメラマンと語らう。そこには言葉の壁を超えた、写真という名の共通言語による交流があります。
暗室の赤いライトの下、白い紙にイメージが浮かぶ瞬間に今も胸を躍らせるビルさん。彼がレンズ越しに見つめる優しくも力強い世界を、ぜひ会場で体感してください。
「The elders」©William E. Lyons
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■ビル ライオンズ写真展
会場:静岡市駿河区登呂3-1-1 静岡新聞放送会館別館2階
開館時間:午前10時~午後5時
会期:2026年1月31日(土)~2月14日(土)
休館日:月曜日(祝日、振替休日の場合は開館し、翌日休館)
入館料:無料
駐車場:駿府博物館北側駐車場(障がい者用を含む5台)
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