2026年1月22日

【静岡音楽館AOIの新芸術監督発表】 第3代静岡音楽館AOI芸術監督はギタリストの村治佳織さん
(文・写真/論説委員・橋爪充)
作曲家でピアニストの野平さんは2005年4月に作曲家間宮芳生さん(2024年12月死去)の後任として同館の第2代芸術監督に就任し、21年間にわたって静岡県の音楽文化の発展に力を尽くした。同館開館前の1993年から芸術監督就任までは企画会議委員。30年以上にわたり同館に関わったことになる。
会見で野平さんは、同館との関わりについて次のように述べた。
芸術監督としての約20年間を振り返ると、最初の10年間は公共の音楽ホールの在り方が、全国的に議論されていた時代だった。今の静岡音楽館の形は間宮さんの10年、私の前半10年で決まってきたように思います。私の後半10年は、館のスタッフが全て心得て、今までの路線を後押ししてくださり、非常にスムーズに進みました。歴代の音楽館館長、企画会議や市民会議の委員の皆さん、音楽館のスタッフに感謝申し上げたい。
30年以上前の、音楽ホールに関わるエピソードも披露した。
(1995年に)開館する数年前に横浜でシンポジウムがあり、そこで話題になったのは「50年後に音楽ホールは存在するだろうか」という問いでした。私は「音楽と演奏家に聴衆が直接コンタクトできる貴重な場所だから、なくならないでしょう」と発言しました。ところが僕より年齢が上のパネラー全員、「ホールで音楽を聴くことはない」という結論だった。シンポジウムを面白くしようという意図もあったかも知れませんが、私は非常にショックでした。それから30年以上たちましたが、私の立場は変わりありません。音楽ホールは演奏家や作曲家の音楽に(これは比喩ですが)手で触れることができる場です。音楽を聴くためのメディアは多様化しましたが、私は学生に「いい環境で生の音楽を聴かないと音楽の神秘、崇高さ、本当の価値は分かりませんよ」と言っています。
新芸術監督の村治さんにエールを送った。
村治佳織さんが新たな芸術監督になってくださる。私の友人である(ギタリストで同館企画会議委員の)福田進一さんが私と村治さんを結んでくれました。福田さんは昔、静岡にも住んでいたこともあるんです。そうしたご縁で新旧の芸術監督の交代が実現した。村治さんが次の世代を引き継いでくださることに、感謝しかございません。
2024年から同館企画会議委員を務める村治さんは芸術監督就任について、次のように述べた。
この建物ができる前から深い愛情を持ってホールに携わってこられた野平一郎さんに、深く敬意を表します。まさか(野平)先生の次に私がこの役目を果たすとは思ってもいませんでした。2023年の末にお話をいただいた時は本当にびっくりしました。演奏家として十分に活動を楽しんでいましたが、まさか芸術監督の話をいただけるとは、と。
私は2023年にデビュー30周年を迎えましたが、このホールもほぼ同じ時間を過ごしています。自分の人生とこのホールが混じり合って、どんなことができるのかを考えました。(結論は)演奏家として聴衆と音楽家をつなげる、橋渡しができる。迷わず引き受けました。
自身の役割と音楽館の未来についても明瞭に語った。
大切にしたいのは架け橋になることと、共に作る喜びです。私自身が音楽から受け取ってきた感動、クラシックは全ての音楽の軸になるという信念を生かして、音楽家と聴衆、世代と地域、世界と静岡をつなぐ。ここが素晴らしい音楽の磁場になるよう、全力を尽くします。
基本理念に「かわる×つなぐ」を掲げた。
野平さんが築いた土台をつないでいきます。たくさん生まれた委嘱作品やプロジェクトはしっかり受け継ぎたい。その上で、新しく就任する私は何を変えることができるのか。例えば年間スケジュールやチラシのデザインなども一新して、分かりやすいところからアピールしていきたい。
具体的な行動指針も示し、運営への意欲を見せた。
子どもから大人まで、音楽に出会う場を広げる▽若い才能と挑戦を後押しする▽静岡ならではの音楽文化を磨き、発信する▽AOIならではの響きと体験を提供する▽多くの市民が立ち寄れる、開かれた音楽館をつくる―。
自分の経験を生かして、多くの人にクラシック音楽の専用ホールが何度でも通いたくなる場所だと知っていただくようにしたい。音楽の素晴らしさ、崇高さに触れていただくと同時に、日頃の悩みを忘れてあしたも頑張ろうと思ってもらえるようになったらすてきだなと。ホールのファンをたくさん作れたらと思っています。
静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。
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