2026年1月29日

サッカージャーナリスト河治良幸
清水エスパルス、吉田体制で勝負へ。ジュビロ磐田とのダービーで見えた進化論

1、2本目で出た課題に関して、吉田孝行監督は「頭ではめちゃめちゃ全員が理解していると思います。それを体で動くように習慣づけることが大事」と語る。攻撃面など、まだまだ課題があることを認めながらも、試合を通して各ポジションで新たな発見があったことを喜んだ。特に3本目で得点を決めた千葉寛汰と右ウイングのアルフレド・ステファンス、4本目のゴールを記録したアフメド・アフメドフは目に見える形で、アピールに成功したと言える。
スコアレスに終わった1、2本目は左サイドバックの吉田豊や神戸から加入したセンターバックの本多勇喜、キャプテンマークを巻いたマテウス・ブエノなど、経験ある選手が目立っていた。やはり現時点で彼らの戦術理解とリーダーシップのアドバンテージはありそうだが、中盤でスタメンに抜擢された大卒ルーキーの大畑凜生が攻守に奮闘を見せたのは収穫だ。もちろん彼の攻撃センスを考えれば、もっとゴール前に絡むプレーが欲しかったが、チーム戦術も共有の途上にある段階としては、今後が楽しみになるプレーを見せた。

その中で2本目の途中からは宇野禅斗が、交代したマテウス・ブエノに代わりキャプテンマークを巻くなど、久しぶりの実戦で元気な姿を見せた。4-3-3のインサイドハーフで20分間ほどのプレーだったが、宇野は「その中でも、自分のプレーは出せたと思います。動きのところもある程度、戻ってきている感覚はある」と語る。吉田監督には攻守のバランスをとりながら、セカンドボールを拾ってゴールに向かう姿勢を求められたという。
清水の中盤は3枚が良い関係を作りながら、インサイドハーフがいかに積極的に、前に出ていけるかが生命線になる。その一人は北川航也や松崎快のようなアタッカー色の強い選手が担うケースが多くなりそうだが、もう一人は宇野が言うように、バランスを取る役割とセカンドボールの回収、前に出ていく動きなど、多様なタスクが期待される。このポジションは宇野の他、大畑、弓場将輝、U-23アジア杯メンバーの嶋本悠大などがおり、吉田エスパルスのホットゾーンだ。
宇野に関しては磐田戦でマテウス・ブエノが担っていたアンカーのポジションもやれそうだが、神戸でいう井手口陽介のような役割は適任だろう。もちろん前監督のもとでやってきたプレーとの変化に向き合う必要はあるが、そこもやりがいだろう。ヴィッセル神戸を率いていた吉田監督のサッカー。対戦相手として見ていた印象と、実際に指導を受けてみての違いに関して宇野は「それこそやって気づく部分も、ミーティングをしてみて気づく部分もいっぱいありますが、すごく理にかなっている」と語る。

「よく確率論という言葉を使いながら話してくれるんですけど、攻撃においても、ここに選手がいるからセカンドボールを拾えるんだよみたいなところの説明が、自分たちにスッと入ってきやすい部分があったので。神戸と対戦していて、なんか相手にボールがこぼれるなというのはすごく感じていましたけど、そこの配置や意図を持ったプレーがあったんだなと」
そうした吉田監督の戦術的なエッセンスを一人ひとりが理解することが大事だが、リーダーシップの部分では多少ばらつきが出るかもしれない。吉田豊や本多勇喜の声はチームを助けるが、神戸がそうであったように、時間が経つにつれて全体から発信されていくようになれば、90分を通じてのチームのパフォーマンスは安定してくる。そこに関して吉田監督は「最初は様子をうかがいながらではあったんですけど、トレーニングが終わった後に色々と聞いてくる選手もいる」とポジティブに語っている。その辺りも百年構想リーグを戦いながら、高めていきたいところだろう。
宇野は「神戸さんは特に、そういう勝手に言い合える選手が集まっていたと思うので。あれだけ結果を残していても、試合中にも喧嘩するぐらい言い合っているというのは、それなりの強さがあると思う。自分たちはそこを見習わないといけない」と認めながら、そういう覚悟や責任感を持ってプレーしていきたいと語る。そうした選手が一人でも多く出てきて、周りが感化されていく環境が当たり前になってくれば、清水が本当の意味でJ1の上位を争っていくベースも引き上がっていくはずだ。
(文:サッカージャーナリスト河治良幸)
タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。世界中を飛び回り、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。
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