2026年2月7日

【「ネオ・ソウル・ギタリスト」ソエジマトシキさん(静岡市)インタビュー】エリック・クラプトン絶賛のギター奏者。新作「Kimama Beats」のこと、世界戦略のこと、いろいろ聞きました
2月23日にグランシップで開催される「静岡JAM2026」(WONKと競演)の出演が決まっているソエジマさんに、音楽への向き合い方や今後の活動について聞いた。
(聞き手=論説委員・橋爪充、写真=写真部・宮崎隆男)
1月、ブルーノート東京で初のワンマンライブ
-YouTubeのチャンネル登録者数は(インタビューした1月30日時点で)41万4千人に上ります。海外の視聴者が多いようですね。ソエジマ:2018 年の終わりぐらいからやっているんですが登録者の7、8割が海外の方。増えたきっかけは2022年の(Eugene McDanielsのカバー)「Feel Like Makin' Love」でした。
-1月4日にブルーノート東京で初のワンマンライブがありました。まだ余韻がありますか。
ソエジマ:ありますね。やっぱり超特別な場所ですから。ずっと憧れのライブハウスだったし、そもそも音楽を聴かない人でも知っている唯一のライブハウスなので。
-気心の知れたメンバー(Nahokimama〈トランペット、ギター、ピアノ〉、歌野ヨシタカ〈キーボード〉、吉田雄也〈ベース〉、神田リョウ〈ドラムス〉)でしたね。演奏の内容はいかがでしたか。
ソエジマ:僕だけでなくみんなにとっても特別な場所だったので、集中力が極限まで上がっていました。いつも集中していますが、上ぶれたなという感じでしたね。会場の熱気も伝わって、エネルギッシュなライブになったかな。
Nahokimamaさんとのコラボレーション
2025年12月リリースの最新アルバム「Kimama Beats」
-2025年はNahoさんとのデュオ名義のアルバム「Kimama Beats」「Scene」、ギタリストのTomo FujitaさんとのコラボレーションによるEP「Free Flow」の3作をリリースしています。Fujitaさんとの5曲入り作品はギター2本を中心に構成されていますが、ギターの絡みがとても美しいですね。ソエジマ:初めてお会いした時の最初のセッションの音です。FujitaさんとはSNSを通じて知り合いました。アメリカから一時帰国される時に静岡にも寄っていただけることになり、せっかくだからセッションを撮影させていただきたいということで(自身のスタジオで)準備をしていたんです。スッと座って、弾き始めた瞬間からの音です。
-12月に出たアルバム「Kimama Beats」は10曲中7曲が、Nahoさんがトラックメイクを担当しています。1月の「Scene」とは音がずいぶん変わりましたね。グルーヴがさらにゆったりで、特に(Nahoさんの)トランペットの少しくぐもったような音像が印象的です。音の深さが増しているように感じます。
ソエジマ:海外のミュージシャンやプロデューサーを交えて作ったので、より一層ワールドワイドな作品になったと思います。ギターをきれいな音で録りたい、トランペットをそのままの音で録りたいといった僕らのプレイヤー的な発想ではなく、もうちょっとカッコよくしようという考えがありました。
-なるほど。
ソエジマ:くぐもった音って、プレイヤーの人は嫌う傾向にあるんですよね。高音域を減らすと、鳴りが損われるから。でもそうすることで、ジャズじゃなくなる。音楽として広がるんですよ。ヒップホップ、ビート、チルといった 違う音楽ジャンルに越境できる感じ。そういうところを目指していました。
-ソエジマさんは「ジャズ」にカテゴライズされることが多いように感じますが。
ソエジマ:そうですね。でも「ジャズじゃないんだよな」とずっと思ってて。ジャズはアコースティックな音楽で4ビートだけど、僕らには別のコンセプトがずっとあった。新作ではそれを打ち出せたと思います。
-「ネオ・ソウル・ギタリスト」という肩書で活動していらっしゃいますが、この新作ではそれこそ「ネオ・ソウル感」がかなり増しましたよね。
ソエジマ:今までは自分でコードを作って、自分がギターでメロディーを弾く、といったプロセスをたどることが多かった。今回はNahoさんがビートを作ってくれて、他のプロデューサーがコードを作るといった作業もあり、ギター単体で出てくる発想から広がっています。
-曲を作る上で、Nahoさんとはどのように役割分担しているのですか。
ソエジマ:僕はメロディーをギターで作って楽曲に置くというのが一番得意なんです。ただ、メロディアスになり過ぎるとビート感が薄れていく。一方でNahoさんはコードや空気感を作るのが上手。そのセンスを借りて、でもやっぱりメロディーがないと聴く人の印象に残らないから、そこは僕がやるという感じですね。
-ビートを作る上で、お互いの統一基準はあるんですか?
ソエジマ:テンポやスピード感より、低音が「ブンッ」と鳴るかどうかが大事。それだけで聴ける状態をまず目指します。どんなにゆったりした曲でも「トンッ」じゃなくて、ちゃんと「ブンッ」と来るものを。
-イヤホンで聴くよりも、スピーカーから音を出した方がいいのかもしれないですね。
ソエジマ:メロディーやウワモノを聴くとリラックスした雰囲気がある曲も、実はビートを聴くとバチッとしている。このコントラストが気持ちいいんだと思います。
-音楽のコラボレーション相手であり、実生活の パートナーでもあるソエジマさんとNahoさんですが、お二人の名義で音源を出されているのは2020 年の「Kimama Session2」からです。ただ、それまでも一緒に音楽を作っていらっしゃる。この境目については、どういう扱いになっているんですか。
ソエジマ:Nahoさんが本格的に音楽活動をやりたいという意思表示をしてくれたタイミングです。それまでは僕のサポートメンバーの 一人、という感じだったんですが、聴き手の中にNahoさんのトランペットが好きという人がいっぱい現れて。Nahoさんもその気になってくれて。だったらNahoさんと自分の名前で音楽が残るような形でやっていこうと考えたんです。
「ネオ・ソウル・ギタリスト」と名乗るまで
-ソエジマさんの音楽は、聴き手を選ばない、すごく間口の広い音ですね。「ネオ・ソウル・ギタリスト」と名乗り始めたのはいつ頃ですか。ソエジマ:2018 年の末ぐらいに YouTubeを始めたんですが、実績がない中で自分は何者かを言わなきゃいけなくて。その名残りでずっと使っているんです。
-自らをカテゴライズすることで、多くの人に音楽が届くという効果はありそうですね。「ネオ・ソウル」というジャンルには特別な感情があったのでしょうか。
ソエジマ:自分にとって自然体で聴けるジャンルでした。ただ「ネオ・ソウル・ギター」と言われるものは当時まだ新しくて、SNS 上の流行りハッシュタグみたいなものでした。この名前は、ハッシュタグをつけると見られやすい、というところから始まっているんです。
-そもそもギターを始めたきっかけは。
ソエジマ:中学生の時に父親のギターを勝手に使わせてもらったのが最初です。
-お父さんは音楽好きだったんですか。
ソエジマ:(ローリング・)ストーンズ、(エリック・)クラプトン、アース・ウインド&ファイア、ドゥービー・ブラザーズといった洋楽が好きな人でした。その父親の薦めでクラプトンのCDを聴いてすぐ好きになって。「あ、これだ」みたいな。シンプルにカッコいいと感じました。
-当初はそうした方々の楽曲をギターでコピーしていたのでしょうか。
ソエジマ:そうですね。それからB'zですね。同年代の友だちも聴いていたし、ギターがカッコいいので。「Ultra Soul」ももちろんやりましたよ。
-現在のソエジマさんのギターの音はB'zとはだいぶ違っていて、クリアで伸びやかですよね。どういう経緯でこうした音になっていったんですか。
ソエジマ:タッチは昔から「優しい系」で、音楽としてはロックをやりたいからエフェクターで歪ませて。ただ、昔からロックの中でも少しおしゃれな曲が好きだったんですよね。それで、徐々に歪みの要素を削っていって今の音が出てきた。そんなイメージがありますね。今も、実は少し歪んでいるんです。ライブで盛り上がるところではしっかり歪ませてプレイしています。
-いわゆる「音響系」に引かれた時期はありますか。
ソエジマ:あんまりないかもしれない。
-じゃあジャズはどうですか。
ソエジマ:「できたらいいな」とずっと思っている音楽ジャンルですね。ジャズは通ってないので。ジャズを弾くボキャブラリーが自分の中にないんです。
-ジャズも引き出しにあるようなイメージですが。スティービー・ワンダーのカバーも発表されていますが、古いソウルもお好きなんでしょうか。
ソエジマ:ソウルの方が(ジャズより)身近ですね。そこからネオ・ソウルを知って。どちらも好きですね。
-ご自分なりのギターの音を出すために、どんなところに気を配っていますか。
ソエジマ:右手のピッキングがすべてなので、ライブではそれが生かせるよう機材を調整しています。かなり優しく弾いているんですが、それでも大きな音が出るように設定しなきゃいけない。優しいピッキング入力に対して大きなアウトプットを作り出すことを重視しています。
エリック・クラプトンが絶賛
-昨年、エリック・クラプトンが、テレビ番組の収録で「注目している日本人ギタリスト」としてソエジマさんの名前を出しました。その後、彼が来日した時に武道館公演の楽屋で直接会っていますね。先ほどの話にもありましたが、クラプトンというギタリストは特別な存在だったのでしょうか。ソエジマ:ギターを始めた時からの憧れですね。クラプトンを見ながら育ったので、僭越ですがどうしてもプレーが似てくる。
-こういう形で名前が出た時はどんな気持ちだったんですか。
ソエジマ:ギターを始めた頃の景色を思い出していました。当時は父親が仕事の関係で上海に赴任していて、家族の中で僕だけ祖父母と暮らしていたんですよ。ガランとした家でクラプトンとかストーンズをめっちゃ聴いていた。その光景がフラッシュバックしました。
-会いに行って、どんなやりとりがありましたか。
ソエジマ:まず感謝を伝えました。「あなたのおかげでギターを始めたばかりの時、ブルースのフィーリングを得ることができた」って。それから「自分のギタープレイをどう感じてくれたか」といった質問をしました。「ファンタスティック」と褒めていただいたり、「いろんな音楽を聴くように」といった趣旨の言葉をもらいました。
-2月23日のグランシップ「静岡JAM」は、1月のブルーノート東京でのライブと同じメンバーで演奏しますね。「Kimama Beats」からの選曲が中心になるでしょうか。
ソエジマ:ブルーノートで手応えを感じたセットリストを基にします。 4月にオーストラリアとニュージーランドのツアーがあるんですが、そこも視野に入れて。ワールドワイドなセットリストにしてみたいですね。
-今後の海外での演奏についてはどう考えていますか。
ソエジマ: 今回のオセアニアツアーは4カ所で演奏します。2023年12月からアジア、中国を回ってどの国でもかなり手応えを感じたので、僕らのプロモーターチームがちょっとエリアを広げています。次はヨーロッパ、そしてアメリカ。どんどん広げていきたいですね。
<DATA>
■静岡JAM2026 ~WONK/ソエジマトシキ~
会場:グランシップ中ホール・大地(静岡市駿河区東静岡2-3-1)
日時:2月23日(月・祝)午後4時ロビー開場、午後5時開演
入場料:全席指定一般4000円、子ども・学生1000円(28歳以下の学生)※未就学児入場不可
問い合わせ:グランシップチケットセンター(054-289-9000)
静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。
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