2026年2月24日
しずおか文化談話室

【静岡JAM2026 ~WONK/ソエジマトシキ~】ソエジマトシキさん(静岡市)の生演奏を聴き、県内の川を想起

静岡県のアートやカルチャーに関するコラム。今回は2月23日に静岡市駿河区で開かれた「静岡JAM2026 ~WONK/ソエジマトシキ~」を題材に。
(文・写真/論説委員・橋爪充 人物写真/写真部・宮崎隆男※1月下旬のインタビュー時に撮影) 

ソエジマトシキさんは「ネオ・ソウル・ギタリスト」を標榜する、世界中にファンがいる音楽家。2021年からマルチプレイヤーの妻Nahokimamaさんと共に、静岡市を拠点にして活動している。2018年から配信を続けるYouTubeチャンネルの登録者は、海外在住者を中心に41万人超。今年1月にはブルーノート東京でのワンマンライブを成功させた。

2013年結成の“スーパーバンド”WONKと競演した今回のツーマンライブは、両者の知名度の高さと顔合わせの妙が多くの人の関心を呼んだ。グランシップ中ホールは1階席がソールドアウト。2階席も、筆者が位置取った最後列以外はほとんど埋まっていた。

Nahokimamaさんら、気心の知れたミュージシャン4人と登場したソエジマさんのステージは、「Casio session」と題して動画で公開した「Mirage」で幕開け。2025年12月リリースの最新アルバム「Kimama Beats」のハイライトの一つである「Kyoto」につなげた。

静岡市のカフェ「hugcoffee」のために作った「Hug」や「Tokyo」といったアルバム前作「Scene」からの楽曲は、キーボードの歌野ヨシタカさんや自身のソロを、発表音源よりかなり長めに。ゆったりしたグルーブのナンバーを中心に、アンコールを含め(恐らく)11曲演奏した。

一聴して感じたのが、「音の圧」の少なさだ。モニタースピーカーから出る音を真正面から「浴びる」のではなく、ホール空間に広がる柔らかいアンサンブルに全身が包み込まれるような感覚。

神田リョウさんのドラムはほとんど生音に聞こえるし、あえてサステインを抑えた吉田雄也さんのベースも低音に押しつけがましさがない。Nahokimamaさんのトランペットも、あえて音を持ち上げることをしていない。

ボーカリストがいないため、いわゆる「張った声」に合わせて全体の音量を上げる必要がないことが大きいのだろう。音が小さめな分だけ、演奏にごまかしが利かない。技量に自信がなければできない音作りである。隙間が多いサウンドは、聴く者の想像力を受け入れる余白をあえて残しているように感じた。

ソエジマさんのギターの音は、音源と同じようにクリアなトーンで、でも1音1音がはっきり聞こえる。特にプリングオフの音が美しい。音の粒がきらきらと輝いている。春の日差しが水面に反射している様子を思い描いた。

このバンドの演奏は川の流れのようだ。ただ、激しさや水量を増しても穏やかさは失わない。水源から海にいたる過程をイメージさせはするが、決して奔流にはならない。どこまでも清明である。

「県内のどんな川がこの音に合うだろう」とずっと考えていた。天竜川や安倍川のような大河川とはちょっと違う。ただ、曲折はありつつも世界に開けた大海に向かう意志は強く感じる。

思いついたのが清水町の柿田川だった。富士山の地下で清められた水が都市空間で湧き上がり、神秘的なブルーをたたえながら、ゆっくりと狩野川に合流する。ミシマバイカモをはじめとする周辺の草花のみならず、水道水として周辺住民をも潤す命の水である。

生活空間に知らず知らずに入ってくる音楽。人間と水の密接不可分な関係性を考えたとき、ソエジマトシキというギタリストが発する音を世界中が欲している理由が、なんとなくわかる気がするのだ。

静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。

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