2023年10月17日
静岡新聞運動部

【静岡の高校サッカー戦後史Vol.17】藤枝東が全国選手権を連覇した1964年度。チームを支えたのは延長戦入り後の強さだった

【藤枝東高⑧】延長で強さ、選手権連覇

※2011年3月〜11月に「静岡の高校サッカー 戦後の球跡」のタイトルで静岡新聞に掲載した連載を再掲しています。年齢等も掲載当時のままです。

2年連続の全国選手権市中Vパレード


1963年(昭和38年)度、藤枝東の最大目標は冬の全国選手権2連覇だった。といっても、前年度のVメンバーから、主力8人がごっそり抜け、新チームは前途多難を思わせた。

ところが、主将を務めた井沢義臣(愛知県岡崎市在住)に「不安はなかった」という。「厳しい練習に打ち込んでいたから」が、その理由だった。厳しく、中身の濃い練習がチーム力の裏付けになっていた。

国体は準決勝で浦和市立に1−2

井沢以下、菊川凱夫(福岡市在住)、神戸勉(千葉県市川市在住)、石田直弘(埼玉県春日部市在住)の4人の3年生を要所に配したチームは、まず国体に挑んだ。

予選を突破して臨んだ山口での本大会。順当に勝ち進むと、準決勝で浦和市立(現・さいたま市立浦和)と対戦した。前年度、国体準決勝と選手権決勝で顔を合わせ、国体は抽選負け、選手権は1−0で競り勝った相手だ。

山口国体対決は1−2の惜敗だった。しかし、前年度、敗れながらも好敵手と対等に渡り合ったことが選手権への自信を生んだように、惜敗の中にも冬連覇への手応えはつかんでいた。

選手権連覇への険しい道

だが、選手権V2への道は平坦ではなかった。

県予選準決勝は藤枝北に先手を取られ、終盤、何とか追い付いて1−1で抽選に。ここで主将の井沢が手にしたカードに「次の試合に進む」の文字があった。気迫のプレーでならした菊川だが、「この時ばかりは怖くて読めなかった」と当時を思い起こす。

年が明けた1964年正月の本大会。2回戦は神戸の30メートルの決勝弾で中津南(大分)に逆転勝ちし、準決勝は延長後半終了寸前、利き足が右の石田が左足で放った一撃がゴールをとらえ豊田西(愛知)を振り切った。

明星(大阪)との決勝

決勝は後にメキシコ五輪に出場した湯口栄蔵擁する明星(大阪)が相手だった。0−0で突入した延長後半直後、菊川の右折り返しを神戸が「後ろにいると信じて」スルーすると、読み通りに走り込んだ清水祥右(藤枝市在住)が決めて先制。6分には菊川のヘッドシュートでとどめを刺して、連覇を達成した。

V2の決め手になったのは、延長入り後の強さだった。自由に入れ替わる先輩チーム相手に、90分ハーフの試合をこなしてきた「厳しい練習」(井沢主将)が土壇場で真価を発揮、最後までピッチを走り抜いて、再び優勝旗を持ち帰った。(敬称略)

 

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