2025年4月9日
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南海トラフ地震が東側単独で発生なら死者2万9000人「臨時情報」発表で意識高まり事前避難で被害激減も【わたしの防災】

全国の死者が約29万8000人に及ぶという新たな被害想定が公表された「南海トラフ巨大地震」。被害を減らす対策の一つにあげられたのが「臨時情報」の活用です。2024年8月、初めて発表された際の反省を踏まえ、7人の専門家が課題を議論しました。

南海トラフ巨大地震の想定震源域は、静岡から九州の沖にかけて広がっています。2025年3月末に国が公表した被害想定では、静岡を含む東側単独で地震が起きた場合、津波による死者は約2万9000人とされました。

仮に、西側半分で先に地震が起きて「南海トラフ地震臨時情報」が発表されたら被害をどれだけ減らすことができるのでしょうか。西側で先に地震が起きて避難意識が高まれば約2万9000人の死者は約7900人に減り、さらにすぐに津波が到達する地域で事前避難を行えば、約10人に減ると想定されました。

<国土交通省 森本輝さん>
「日向灘で地震があった時に『それ危ないかも』と静岡や高知など、まったく離れた場所の人に感じてもらわなければいけない。もしかすると『半割れ』や『一部割れ』みたいな時の情報としては被害軽減に使えるんじゃないかと」

内閣府防災で臨時情報の仕組み作りに携わった森本輝さんは、被害軽減への期待があったと語りました。

上手に活用すれば被害を減らすことができる「臨時情報」。その課題について3月、東京大学で開かれた日本災害情報学会のシンポジウムで7人の専門家が議論しました。

「南海トラフ地震臨時情報」は2024年8月、宮崎県沖の日向灘で起きた地震で初めて発表されました。巨大地震への注意が呼びかけられましたが、実際に起きる確率は平常時の0.1%に対し0.4%程度。約4倍とはいえイメージしにくい数字でした。

南海トラフ地震の評価検討会で会長を務める東京大学の平田直名誉教授は、説明の工夫が必要だと訴えます。

<東京大学 平田直名誉教授>
「0.1%が0.4%に4倍になりました。数倍になりましたといのは、どういうことかと言うと、20年に1回ぐらい起きる現象が5年に1回ぐらい起きる現象になったと言うと何となく分かりやすくなるのかも知れません」

静岡大学の岩田孝仁特任教授は、臨時情報の認知度不足に加え、世の中がどう対応するのか共有が足りなかったと指摘します。

<静岡大学防災総合センター 岩田孝仁特任教授>
「自分たちの身の回りで何が起きるのか、ほとんど伝わっていなかった。例えば、ライフライン、鉄道、スーパー。そういった状況をきちんと住民の方々に示しておかないと住民はどう判断すればよいか中々分からない。伝える努力をしておかないと、この混乱はいつまでも続く」

元気象庁で愛知工業大学の横田崇地域防災研究センター長とフリージャーナリストの飯田和樹さんは「備えの大切さ」を強調します。

<愛知工業大学 横田崇地域防災研究センター長>
「いつ起こるか分からないのが南海トラフ地震。その時に対策がちゃんと出来ていたのか。『しまった、あの時やっておけば良かった』と後悔しないようにしっかりと備えをしておきませんか、ということがメッセージとして一番大事なこと」

<フリージャーナリスト 飯田和樹さん>
「何らかの対応をする中で、何が今できていないのか、何が足りないのか、見つけるチャンス」

2011年3月11日に発生した「東日本大震災」では、2日前の3月9日に“前触れ”ともいえる地震が発生していました。岩手県陸前高田市の中村吉雄防災課長は、南海トラフ地震臨時情報と似た仕組みで2年前に運用が始まった「北海道・三陸沖後発地震注意情報」の活用に期待を込めます。

<岩手県陸前高田市 中村吉雄防災課長>
「もしもこのような情報があれば(東日本大震災の)2日前の地震を軽く見なかっただろうと。こういう情報が出た後に本当に地震が起こった時に、素早く人は行動するんじゃないか」

最後に静岡新聞の中川琳記者は、臨時情報が発表されている期間中だけ何かをすれば良いという情報ではないことを伝え続けることが必要だと話しました。

<静岡新聞 中川琳記者>
「呼びかけが終了した後も地震が発生する可能性が無くなった訳では無いことをかなりしっかり伝えなければいけないと思いますし、突発地震に備えて、もっと事前対策が進むような議論をメディアとしても促していかなければいけないのかなと」

南海トラフ地震臨時情報の理解を進め、いかに具体的な行動につなげることができるのか問われています。臨時情報を生かすには普段からの備えとともに、いざという時にどう対応するのかあらかじめ決めて、動けるようにしておくことが大切です。

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