
導入のきっかけは東日本大震災…「万が一に備える」南海トラフ地震臨時情報の意味【わたしの防災】
76.6%。「南海トラフ地震臨時情報」について、静岡県の調査で「知っている」と答えた人の割合です。2024年8月に初めて発表されたことで認知度が高まりました。「万が一に備える」「臨時情報の意味」にあらためて迫ります。
白い砂浜が美しい和歌山県白浜町。毎年14万人以上の海水浴客が訪れています。しかし、2024年8月、このビーチから人の姿が消えました。
南海トラフ地震臨時情報。2024年8月8日、宮崎県の日向灘を震源とするマグニチュード7.0の地震の発生を受けて、初めて発表されました。
臨時情報は、南海トラフ巨大地震の想定震源域内で、マグニチュード7以上の地震が発生した場合などに、巨大地震への注意・警戒を促すものです。
<気象庁地震火山技術・調査課束田進也課長(当時)>
「新たな大規模地震が発生する可能性は平常時と比べて高まっているが、特定の期間中に大規模な地震が必ず発生するとお知らせしているものではございません」
<南海トラフ地震評価検討会平田直会長>
「これまで通り、十分に地震が起きた時への備えを確認していただきたい」
国は、日常生活を続けたうえで1週間程度、防災用品や避難経路など地震への備えの再確認を求めました。
臨時情報が作られた背景となったのは、14年前の事例でした。2011年3月9日、東北の三陸沖を震源とするマグニチュード7.3の地震が発生。宮城県で最大震度5弱を観測し、津波注意報が発表されました。
この2日後、東日本大震災が発生。激しい揺れや巨大な津波が襲い、甚大な被害となりました。
続けて発生する大規模な地震に少しでも注意を促せていたならば。震災後、検討を重ねて制度化されたのが「南海トラフ地震臨時情報」です。
国は、1904年から100年あまりの間に世界中で起きたマグニチュード7以上の地震、1437回を調べました。すると、1週間以内にさらに大きなマグニチュード8以上の地震が起きたケースが6件ありました。発生確率は、およそ0.4%。これが「臨時情報巨大地震注意」の根拠で、2019年に現在の制度になりました。
2024年8月8日に発表された臨時情報。「巨大地震注意」への対応は1週間続きましたが、具体的な対応について事前に決めていなかった地域では混乱もありました。
和歌山県白浜町は海水浴場などを閉鎖、名物の花火大会も急きょ、中止を決定し、かき入れ時の観光業にとって大きな痛手となりました。
市民のレベルでも足りない備えがありました。スーパーでは、水や非常食などが一時的に品薄に。日頃からの備えが十分であれば、慌てて買いに行く必要はありませんでした。
南海トラフ地震の発生確率は、30年以内に80%程度。今後もやや大きな地震が起きれば、臨時情報が発表されます。その時に、慌てないように、事前の備えと共に臨時情報を最大限に生かすことが必要です。
臨時情報は発表されてから備えるものではなく、事前の備えを確認するタイミングです。東日本大震災で被害を受けた東北地方などにも臨時情報と似た考え方の「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が導入され、国が防災対応を呼びかけることになっています。
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