
原爆の投下訓練で「模擬原爆」投下された静岡・島田市 歴史を後世に伝える若き学芸員 大切にしたのは資料に"触る"体験【戦後80年つなぐ、つながる】#戦争の記憶

「戦後80年つなぐ、つながる」。広島と長崎に原爆が投下される前、静岡県島田市に模擬原爆が落とされました。その歴史を伝える企画展を開く学芸員がいます。戦争を知らない世代が次の世代につなぐために、大切にしたのは「触る」という体験です。
静岡県島田市博物館で開かれている戦争と原爆の記憶をたどる企画展です。
<岩崎アイルトン望さん>
「よければ触ってみてください。これだけで9.4kgあるんですよ」
80年前、実際に島田市に投下された爆弾の破片です。
<岩崎さん>
「これが1.1kmの場所に飛んできたらしくて」
1945年、アメリカ軍は広島・長崎に原子爆弾を落とす前に火薬を詰めた模擬原爆「パンプキン爆弾」を日本各地に投下しました。模擬原爆は静岡県島田市にも落とされ、47人の尊い命が犠牲になりました。企画展では実際に島田市に落ちたパンプキン爆弾の破片を触ることができます。
<中学1年生>
「あんなに重たいのにあれが破片だったことに驚いて、もっと大きな重たいものが空から降ってきたと思うと、怖いな、今じゃ考えられないなと思いました」
この展示を企画した、学芸員の岩崎アイルトン望さん(28)です。岩崎さんの父親はイラン人。1980年代のイラン・イラク戦争を経験しました。
<岩崎さん>
「父親もイラン・イラク戦争に従軍していたので幼い頃から戦争に興味があった」
世界でいまも戦争が続くなか、悲惨さを伝えるためこの展示を企画しました。
<岩崎さん>
「原子爆弾の使用は広島・長崎を舞台に起こった悲劇ではあるけれど、日本人として戦争の悲惨さの代表例であると思う。それを地元島田市の歴史とつなげて知ることで、より地元の歴史を身近に感じてくれるかなと」
岩崎さんは約1年かけて、戦禍を伝える資料約80点を集めました。その中には、初めて取り寄せた広島・長崎の被爆資料もあります。
先週開かれた、夏休みの子ども向けの歴史教室。岩崎さん自身も戦争を体験していないからこそ、当時のものに触れ想像してもらう機会を大切にしています。
<LIVEしずおか 井手春希キャスター>
「戦争の展示品に触れてみてどうですか」
<小学3年生>
「死ぬ覚悟をしていた人が手紙を書いて奥さんに渡したのがすごいと思った。戦争はない方がいいと思う」
<小学6年生>
「自分が生活している島田市でも大変なことがあったんだなと。きょう学んだことやこれから学ぶことを友だちに伝えてもっといろんな人に戦争を知ってもらいたい」
<岩崎さん>
「戦争を体験した人がどんどんいなくなって、おそらく戦後90年100年は今と全く違う状況になっていると思う。今年の戦後80年ですら実際に戦地に行った方には話を聞けなかった。戦後80年ってそういうフェーズに来ていると実感があった。展示物は後世に残していって戦争を伝えるものとして保存していかなくちゃと思う」
戦争を体験していない人が次の世代に伝えるためにも、岩崎さんは当時の資料・展示物の力を信じています。企画展「戦争を忘れないー島田が歩んだ太平洋戦争」は9月21日まで島田市博物館で開かれています。
企画展「戦争を忘れないー島田が歩んだ太平洋戦争」
・9月21日(日)まで
・島田市博物館
・9時~17時(入館16時30分まで)
・休館日(月)、8月12日
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