2025年12月29日

【アルテュス監督「サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行」】障害があるアマチュア俳優11人に「当て書き」した脚本が驚異的

フランスの2024年年間興行収入第1位を記録した作品。1080万人動員ということで、フランス国民の7人に1人が見たという、2025年の日本に置き換えると「国宝」級のメガヒットを記録した作品である。
障害者がそのままの役柄で映し出されている。ダウン症や知的障害のある人物を演じたのは、実際にその障害があるアマチュア俳優11人。本作はオーディションで選ばれた彼らに当て書きされた脚本で作られたという、そして、それがコメディーとして成立している。彼らは優れたコメディアン、コメディエンヌが持つ「くすりとさせられる」表情や身ぶり手ぶりを、自然に表現している。
「障害」とされている何かが、その人を形作る要素の一つであり、それこそが「サムシング・エクストラ!」(何か特別なもの)なのだ。12月に観た映画では河合健監督「みんな、おしゃべり!」もそんなことを感じさせる一本だった。
内気だがサッカーボールに執着するバティスト、常に仮装するボリス、メイクやファッションがおしゃれなマヤヌといった、目につきやすいキャラクターも秀逸だが、ほとんどしゃべらないが黙々と手を動かすギャッドや、常に「置いていかれる」車椅子のソソも存在感を放っている。画面の中で「常にそこにいる」印象が残る。
宝石店に強盗に入った親子が、障害者施設のサマーバカンスのバスに間違って乗り込む、という奇想天外な展開の中で、障害者俳優11人を公平に扱っている。「機会均等」を貫いているのに物語が破綻していないのは驚異的だ。ヒューマンドラマとしての作法は王道と言っていい。豊かに枝葉を伸ばしながら、幹が太くまっすぐ伸びていく。監督・脚本・主演を務めたのは、フランスの人気コメディアンのアルテュスだが、この「誰も取り残さない」ストーリーの妙がとても素晴らしい。
野外の長テーブルを囲む食事シーンが何度か出てくる。「誰もが等しくそこにいる」を象徴する場面だと感じた。
(は)
<DATA>※県内の上映館。12月29日時点
シネプラザサントムーン(清水町、2026 年1月30日から)
静岡シネ・ギャラリー(静岡市葵区)
TOHOシネマズららぽーと磐田(磐田市)
静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。
おでかけ
エンタメ
静岡市
磐田市
静岡市葵区
清水町
あなたにおすすめの記事
【静岡県内ミニシアター 年末年始の「特出し」!(中) 静岡シネ・ギャラリー(静岡市葵区)】「サムシング・エクストラ!」は、年末年始にふさわしい、ほっこりハートフルコメディー
#静岡市#静岡市葵区
【根岸吉太郎監督「ゆきてかへらぬ」】 これまで見たことのない広瀬すずさんがここに。妖艶で蠱惑的。俳優人生の「画期」となるだろう
#おでかけ#エンタメ#静岡市#牧之原市#沼津市
【源孝志監督「木挽町のあだ討ち」】 時代劇の顔をしたミステリーを見事に映像化。物語の説得力に最も貢献した俳優は…
#おでかけ#エンタメ#浜松市#静岡市#磐田市#藤枝市#沼津市#三島市#富士宮市#清水町


【入江悠監督「室町無頼」】 長尾謙杜さんの棒術アクションが素晴らしい
#おでかけ#エンタメ#浜松市#静岡市#磐田市#藤枝市#沼津市#三島市#富士宮市#清水町#藤枝駅周辺
【是枝裕和監督『箱の中の羊』】ヒューマノイドを迎え入れた夫婦。「命なきもの」に向けるまなざしの変化
#おでかけ#エンタメ#浜松市#静岡市#磐田市#藤枝市#沼津市#富士宮市#清水町
【マット・シャクマン監督「ファンタスティック4:ファースト・ステップ」】「本物のファミリー」が地球を救うヒーロー集団として活躍。沼津市周辺の大きな構造物を見逃すな
#おでかけ#エンタメ#浜松市#静岡市#磐田市#藤枝市#沼津市#三島市#富士宮市#清水町
【新教皇が決まった日にエドワード・ベルガー監督「教皇選挙」を見た】 平日午前の上映だというのに盛況。「教皇名を口にする」のは誰か
#おでかけ#エンタメ#静岡市#磐田市#静岡市葵区#富士宮市#清水町
【ケルシー・マン監督「インサイド・ヘッド2」】 「ピクサー映画の続編」というよりも
#エンタメ#おでかけ#浜松市#静岡市#磐田市#藤枝市#沼津市#三島市#富士宮市#清水町
