2026年2月8日

【三島満願芸術祭2026】3回目を迎えた現代アート祭。三嶋大社にも初めて作品を設置
(文・写真/論説委員・橋爪充)
牛島光太郎さんの「みちのひとたち」
2023年に始まり、これが3回目となる「三島満願芸術祭」の一部作品を、三島アートプロジェクト実行委員会の山森達也さんの案内で見て回った。三島を「通過点」でなく「ゴール」にすることを目標にしたこの芸術祭は、作品をたどって町歩きを促すように設計されている。A6サイズに折りたたまれたプログラムは、かつて野外音楽フェスの会場で配布されていたタイムテーブル付きフライヤーを思わせる。広げると三島市内の地図にピンクのラインが2本。この道を行けば、水路に恵まれた三島市の都市景観を楽しみながら全9作品がコンプリートできるという趣向だ。

白滝公園の柴田まおさん「流れの皮膚 Skin of Flow」は、富士山の伏流水が水源の池に置かれたステンレス製の造形物。モチーフは三島梅花藻(ばいかも)という。きらきらした作品の像が水面に映りゆらゆらと動く。硬質な金属素材が水面で解きほぐされ、やわらかさを得たように見える。

3回目にして初めて作品設置がかなったという三嶋大社には、アーティスト公募を踏まえて選ばれた牛島光太郎さんによる「みちのひとたち」。同市内で拾い集めた「落とし物」を一時預かりする形で作品化。市内の居酒屋やカフェで牛島さんの耳が「拾い集めた」言葉とともに大社の芸能殿に併置した。一見不要なモノと何気ない言葉を起点に社会や人々の営みに導く点で、イリヤ・カバコフの「16本のロープ」に近い視点を感じ取った。

東日本大震災以降東北地方各地で、調査・記録と表現活動を行ってきたアーティストや研究者らの集団「NOOK」の「旗旗と声声」は、彼らが拠点とする東京都江東区の中学生を交えて三島市と同区をつなごうという試み。同区に第五福竜丸展示館がある縁を起点にしてプロジェクトを組み立てた。
1954年の同船被曝で亡くなった久保山愛吉さんや家族に宛てた手紙を生徒が朗読した音声が流れる中、「三島・江東・水辺の思い出」をテーマに彼らが制作した木版画を鑑賞。歴史に向き合う「個」の集積がさまざまなイメージを喚起させる。「アートの力」を感じ取った。

過去の作品の再設置も丁寧に行っている。かつての倉庫で上映される山本篤さんの「REPLACE -M.WALKERS-」は三島市内の商店街にダンサーが幸を届けて回る内容で、薄暗い空間に笑顔の花が咲く。

源兵衛川沿いに設置された、「犬のための美術館」と説明される「ウィリーウィンキー美術館」は、占部史人さん、三井淑香さんのユニット「Canis Lupus Familiaris」が手がけた。見る者に、犬の気持ちに真剣に向き合うという非日常的な思考をもたらす。ここにも、強力な「アートの力」がみなぎっていた。
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■三島満願芸術祭2026
会場: 三島市の楽寿園周辺から伊豆箱根鉄道三島田町駅周辺までの各所
総合受付は三島駅南口徒歩5分の白滝公園向かい(三島市芝本町6-6)
会期:3月1日(日)までの金・土・日曜日と祝日。午前10時から午後5時まで(最終日は午後3時まで)
静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。










